満天の花


  • 著者:佐川光晴
  • 装幀:鈴木成一デザイン室
    装画:カワタアキナ
  • 定価:本体2300円+税
  • 四六判上製/552ページ
  • 2021年5月8日 第一刷発行
  • 978-4-86528-026-5 C0093
\たちまち重版!/
おかげさまで重版いたしました。
全国書店へは7/19(月)より順次搬入いたします。

文芸評論家・末國善己氏推薦!
「女性通訳を主人公に、幕末を外交の視点で捉えた斬新な時代小説だ」

勝海舟と出会った青い目の少女の運命が、日本の歴史を大きく動かす

時は幕末、長崎。オランダ人商館員と遊女との間に生まれた少女・花。
青い目を隠して暮らしていたが、勝海舟と出会ったことで花は激動の世界史の渦の中に投げ込まれる。
西欧列強や幕府へも毅然と立ち向かう通詞・花。
時代の常識にとらわれず、才能と意思で生き抜く女性を描いた、佐川光晴の新境地!

\大絶賛コメントも続々!/
●執筆の動機のひとつに、「かつて『蝦夷地』と呼ばれ、明治になって『北海道』と改称された広大な島が一片たりとも異国に獲られなかったのは何故なのか」という疑問があったそうだ。本書を読むと、この疑問も氷解する。
 ーーー文芸評論家・細谷正充(北海道新聞・朝刊 2021.06.06号 掲載)
●誤解を恐れず言うならば、『満天の花』は幕末を舞台にした壮大な少女小説だ。
 ーーー文芸ジャーナリスト・内藤麻里子(東京新聞・朝刊 2021.07.03号 掲載)


「おまえさんに、おいらの右腕になってもらいてえ。もちろん給金も払う。オランダ語と英語が両方できるんだ。気前よく月々三両と言いたいが、幕府の懐は素寒貧でね。泣いてもらって、二両でどうだい」
あまりの高額に、花は返事ができなかった。日本では、通詞の給金はとても高いとクルチウスが言っていたのは本当だったのだ。
「月に二両じゃ、安いかい? それじゃあ、色をつけよう。異国船に乗りこんでの談判には、給金とは別に一日につき六匁だす。異国まで行くさいにも同じ六匁にしてもらえるとありがてえが、どうだい、このあたりで手を打ってくれねえか?」
勝さんは、魚河岸の仲買人のような伝法な調子で言った。もとより花は給金の高に異存はなかった。それどころか、異国船に乗ったり、異国にも行けるかもしれないと知り、うれしさで膝においた手が汗ばんだ。
「未熟者ではございますが、一生懸命につとめますので、よろしくお願いいたします。」

「第二章 長崎海軍伝習」より

◉もくじ
第一章 出島のオランダ商館
第二章 長崎海軍伝習
第三章 咸臨丸
第四章 露国軍艦アスコルド号
第五章 東シベリア総督ムラヴィヨフ
第六章 お江戸の花
第七章 大政奉還
第八章 江戸無血開城
第九章 相集う愛宕山

佐川光晴(さがわ・みつはる)
1965年、東京生まれ・茅ヶ崎育ち。北海道大学法学部出身。在学中は恵迪寮で生活し、現在は埼玉県志木市で暮らす。2000年「生活の設計」で第32回新潮新人賞。2002年『縮んだ愛』で第24回野間文芸新人賞受賞。2011年『おれのおばさん』で第26回坪田譲治文学賞受賞。

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【誤記訂正】
本文に誤りがございました。訂正して心よりお詫び申し上げます。

〈P.132 4行目〉
(誤)花もテンポよくオランダで語ったので
(正)花もテンポよくオランダ語で語ったので

〈P.150 15行目〉
(誤)玖磨のかたわについておられるからで
(正)玖磨の傍についておられるからで

〈P.331 17行目〉
(誤)世子は尾張
(正)世子は紀州

〈P.443 3行目〉
(誤)渋柿色の西洋服
(正)柿渋色の西洋服