私のいない部屋


  • 著者:レベッカ・ソルニット 訳者:東辻賢治郎
  • 装幀:松田行正+杉本聖士
  • 定価:本体2400円+税
  • 四六判上製/304ページ
  • 2021年10月10日 第1刷発行
  • 9784865280463
"マンスプレイニング"を世に広めた新時代のフェミニズムを代表する作家、ソルニットの歩んだストーリー
「若い女となること。それは数え切れないほどさまざまに姿を変えて出現する自分の消滅に直面することであり、その消滅から逃避し、否認することであり、時にはそのすべてだ。」
父のDVから逃れるように家を離れ、
サンフランシスコの安アパートに見つけた自分の部屋。
女に向けられる好奇や暴力、理不尽の数々を生き延び、
四半世紀暮したその部屋でやがてソルニットは作家になった。
生々しい痛みと不安とためらい、手放さない希望を描くはじめての自叙伝。【9月末刊行】



通りすがりにつばを吐きかけてきた男。元恋人に刺されて死にかけた友人。
アパートの管理人が語ってくれた、追い立てられ続けた黒人の歴史。
歩くことの自由を知ったこと、女性が自由に歩けない理不尽への怒り。
ゲイの友人たちのファッションとおしゃべりがもつケアの優しさ。
バロウズのパーティに潜り込み、美術雑誌に書いた記事。
はじめての本をまるごと葬ろうとしてきた編集者──。
自由と抑圧が交錯するアメリカ西海岸、1981年。
拾い物の家具、ガラクタ市で見つけた年代物のソファとともに始まったのは、
女をいないも同然にあしらう男たちに抗い、自分の声を持ち、なるべき私になるまでの物語だった。

私は自分の辿った道に後悔はない。しかしその始まりの頃、道がはるか遠く先に伸び、若さに許されてあらゆるものに変化することができた人生への一時代への、淡いノスタルジーを感じることはある。私が多くの選択を経て辿ってきた一本の道筋の脇には、無数の別の道があった。可能性の意味とは、かつてなったことのない数多くの存在になることができるということだ。それは時に恐しく、そうでなくとも冷静さを失わせることだ。私にそんな多くの分かれ道が訪れたのは、ミスター・ヤングのおかげであの光あふれる部屋で暮らしていた日々のことだった。(「1 鏡の中の家」より)

目次
鏡の中の家 Looking Glass House
霧笛とゴスペル Foghorn and Gospel
戦時下の生活 Life During Wartime
消失の技法 Disappearing Atcs
夜、自由に Freely at Night
エッジの効用 Some Uses of Edges
難破船へ潜る Diving into the Wreck
声と信用と重み Audibility, Credibility, Consequence
あとがき 生命線 Afterword: Lifelines
謝辞/訳者あとがき
レベッカ・ソルニット(Rebecca Solnit)
1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カリフォルニアに育ち、環境問題・人権・反戦などの政治運動に参加。1988年より文筆活動を開始する。歩くことがいかに人間の思考と文化に深く根ざしているか広大な人類史を渉猟する『ウォークス 歩くことの精神史』、「マンスプレイニング」の語を広めた『説教したがる男たち』、その続篇ともいえるフェミニズム・エッセイ『わたしたちを沈黙させるいくつかの問い』のほかに、エドワード・マイブリッジ伝River of Shadows(2004、全米批評家協会賞)、旅や移動をめぐる思索『迷うことについて』、ハリケーン・カトリーナを取材したA Paradise Built in Hell(2009、邦訳『災害ユートピア』)など、環境、土地、芸術、アメリカ史など多分野に二十を越す著作がある。美術展カタログや雑誌への寄稿も多数。

東辻賢治郎(とうつじ・けんじろう)
1978年生まれ。翻訳家、建築・都市史研究。関心領域は西欧初期近代の技術史と建築史、および地図。翻訳書にソルニット『ウォークス 歩くことの精神史』がある。