日本人論争 大西巨人回想

  • 著者:大西巨人 
    編集協力:大西赤人(株式会社メタポゾン)、山口直孝、石橋正孝
  • 装幀:松田行正+杉本聖士
  • 定価:本体8300円+税
  • 四六判上製/800ページ
  • 978-4-86528-102-6 C0090

先頃亡くなった戦後文学を代表する大西巨人の1996年以降のエッセイ・評論と近年のインタビューを網羅的に収載。軍隊生活を経て、作家として半世紀以上日本の変遷を見続けてきた著者は、この国の現在を、そして行く末をどう見つめていたのか。本書全編をとおして「日本人」への問いが浮き上がってくるー。

『神聖喜劇』着想の経緯、自身の軍隊経験、青年期を過ごした福岡のこと、復員後の文化活動・政治活動、夢中になった映画をめぐる思い出、自作短歌の解説から浮かぶ戦前・戦中・戦後の日本。巻頭口絵では写真、自筆はがきや自筆原稿、構想ノートなどを紹介。巻末には本書刊行に際し大幅に改定を施した年譜を付す。
「いつかこの日が来ることは分かっていた。今を生きる我々が大西巨人の意志を引き継がねばならない。」ー國分功一郎


目次
 口 絵 星霜—アルバムと自筆原稿から—

<第一部 要塞の日々>
 『神聖喜劇』の漫画化について/徴兵検査/召集/一兵卒の日々/軍隊生活/敗戦/野砲との出会い/野砲の魅力/空への〝守り〟/横須賀行き/書くことへの想い/非暴力の追求

<第二部 文選 一九九六—二〇一二>
 一九九六 感想/短篇小説『真珠』のこと/一犬、実に吠える/記憶力過信/肺腑つく「怪物」的小説/精神の実体に迫る歌/語の真義における最高の作物/〈嘘(非事実ないし非真実)〉をめぐって/中篇小説『精神の氷点』のこと/峯雪栄哀悼
 一九九七 仆れるまでは/コンプレックス脱却の当為/方向音痴/碑、賞などのこと/干珠・満珠の島
 一九九八 凡夫の慨嘆/『十五年間』のこと/「摘発」の劇を描け
 一九九九 あるレトリック/博多東急ホテルのこと/知的な甘え所
 二〇〇〇 山崎氏に反論する/「短切」という語のこと/谷崎潤一郎の『初昔』/庭石菖のこと/かへるで/邪道
 二〇〇一 ある悲喜劇/禁句/「古典千冊3回読め」と菊池寛/軍隊で空想した小説第一作/成句「老いては……」の真義遂行/聖武天皇の短歌一首をめぐって/二十一世紀初頭の中心課題/「はたを露骨に刺激する類の病的潔癖」について
 二〇〇二 「二律背反」を抱えて精進する/長篇小説のネット連載
 二〇〇三 D・ハメット作『血の収穫』のこと/「往復書簡」のことなど/『羽音』刊行によせて/春秋の花[漢詩篇]1/春秋の花[漢詩篇]2/春秋の花[漢詩篇]3/春秋の花[漢詩篇]4/春秋の花[漢詩篇]5/春秋の花[漢詩篇]6/歳末断想
 二〇〇四 「芸術犯」阿部和重/早春断想/敗戦直後における文学的・文化的な精神および行動の鬱勃たる様相 
 二〇〇五 春秋の花1/春秋の花2
 二〇〇六 中篇小説『縮図・インコ道理教』について/春秋の花3/「責任阻却」の論理/恥を知る者は、強い/春秋の花4/春秋の花5/春秋の花6
 二〇〇七 亡母と戯曲『風浪』とのこと/流れに抗して/一大重罪〈歴史の偽造〉/受賞のことば 
 二〇〇八 今年こそ福岡へ/作家と論争/『悪霊』
 二〇〇九 若山牧水のうた/プロレタリア詩人吉田欣一氏の逝去/綿密な労作 川村杳平著『無告のうた』/卓抜な業績/再説「わたしの天皇感覚」/大西巨人『神聖喜劇』
 二〇一〇 花田さんとの最初の縁/同志武井昭夫の永眠に関して
 二〇一一 原子力発電に思うこと
 二〇一二 吉本隆明の死に関連して/人間の本義における運命について/佐々木基一全集について

<第三部 秋冬の実 大西巨人短歌自註>
 一 いのちを惜しむ
 二 自負と傲慢
 三 昇進しない一等兵
 四 民主化する軍隊
 五 日本人の民族観 

<第四部 夏冬の草 戦後の文学と政治を語る>
 一 打ち割られた菊の御紋章
 二 日本国憲法制定から六十年

<第五部 映画よもやま話>
 「赤西蠣太」
 「阿部一族」
 「生きてゐるモレア」「明日は来らず」
 「妻よ薔薇のやうに」
 「マリヤのお雪」
 「會議は踊る」「制服の処女」
 「森の石松」
 「限りなき前進」


 大西巨人詳細年譜 齋藤秀昭編
 あとがき 大西赤人
 初出一覧
 終戦当時の対馬地図

大西巨人(おおにし・きょじん)
小説家、批評家。1916年福岡県で生まれる。37年、九州大学に入学するも、マルキシズム、コミュニズムに傾倒していたため、大学を追われる。大阪毎日新聞社西部支社に勤めていた42年、召集令状が届き対馬要塞重砲兵聯隊に入隊。このときの軍隊経験をもとに、約25年かけて長篇小説『神聖喜劇』を完成させた。軍隊内部の細密な描写は歴史資料的価値も高い。代表作に『神聖喜劇』『三位一体の神話』『地獄変相奏鳴曲』『春秋の花』など。2014年3月死去。


大西赤人(おおにし・あかひと)
1955年生まれ。作家、評論家、編集者。季刊誌『メタポゾン』責任編集、著作に『善人は若死にをする』など。

山口直孝(やまぐち・ただよし)
1962年生まれ。二松学舎大学文学部教授、近代日本語文芸専門。

石橋正孝(いしばし・まさたか)
1974年生まれ。現在立教大学観光学部助教。著書に『大西巨人 闘争する秘密』、訳書にフォルカー・デース『ジュール・ヴェルヌ伝』など。

書評・記事
 朝日新聞 2015年7月6日 「今こそ 大西巨人」
 図書新聞 2014年10月14日号 「今こそ大西巨人を読むとき」
 茨城新聞、神戸新聞 2014年9月8日読書面 「「歴史の偽造」への闘争」岡和田晃
 北海道新聞 2014年9月7日読書面 「晩年まで旺盛な精神活動」堀切和雅
 産経新聞 2014年9月7日読書面 「批評と聞き書き網羅の大冊」中条省平
 東京新聞 2014年8月24日読書面 「反戦作家と割り切れぬ謎」絓秀実
 毎日新聞 2014年8月19日文化面記事
 日本経済新聞 2014年8月3日読書面短評