日本人論争 大西巨人回想![]() 先頃亡くなった戦後文学を代表する大西巨人の1996年以降のエッセイ・評論と近年のインタビューを網羅的に収載。軍隊生活を経て、作家として半世紀以上日本の変遷を見続けてきた著者は、この国の現在を、そして行く末をどう見つめていたのか。本書全編をとおして「日本人」への問いが浮き上がってくるー。
『神聖喜劇』着想の経緯、自身の軍隊経験、青年期を過ごした福岡のこと、復員後の文化活動・政治活動、夢中になった映画をめぐる思い出、自作短歌の解説から浮かぶ戦前・戦中・戦後の日本。巻頭口絵では写真、自筆はがきや自筆原稿、構想ノートなどを紹介。巻末には本書刊行に際し大幅に改定を施した年譜を付す。
「いつかこの日が来ることは分かっていた。今を生きる我々が大西巨人の意志を引き継がねばならない。」ー國分功一郎
目次 口 絵 星霜—アルバムと自筆原稿から— <第一部 要塞の日々> 『神聖喜劇』の漫画化について/徴兵検査/召集/一兵卒の日々/軍隊生活/敗戦/野砲との出会い/野砲の魅力/空への〝守り〟/横須賀行き/書くことへの想い/非暴力の追求 <第二部 文選 一九九六—二〇一二> 一九九六 感想/短篇小説『真珠』のこと/一犬、実に吠える/記憶力過信/肺腑つく「怪物」的小説/精神の実体に迫る歌/語の真義における最高の作物/〈嘘(非事実ないし非真実)〉をめぐって/中篇小説『精神の氷点』のこと/峯雪栄哀悼 一九九七 仆れるまでは/コンプレックス脱却の当為/方向音痴/碑、賞などのこと/干珠・満珠の島 一九九八 凡夫の慨嘆/『十五年間』のこと/「摘発」の劇を描け 一九九九 あるレトリック/博多東急ホテルのこと/知的な甘え所 二〇〇〇 山崎氏に反論する/「短切」という語のこと/谷崎潤一郎の『初昔』/庭石菖のこと/かへるで/邪道 二〇〇一 ある悲喜劇/禁句/「古典千冊3回読め」と菊池寛/軍隊で空想した小説第一作/成句「老いては……」の真義遂行/聖武天皇の短歌一首をめぐって/二十一世紀初頭の中心課題/「はたを露骨に刺激する類の病的潔癖」について 二〇〇二 「二律背反」を抱えて精進する/長篇小説のネット連載 二〇〇三 D・ハメット作『血の収穫』のこと/「往復書簡」のことなど/『羽音』刊行によせて/春秋の花[漢詩篇]1/春秋の花[漢詩篇]2/春秋の花[漢詩篇]3/春秋の花[漢詩篇]4/春秋の花[漢詩篇]5/春秋の花[漢詩篇]6/歳末断想 二〇〇四 「芸術犯」阿部和重/早春断想/敗戦直後における文学的・文化的な精神および行動の鬱勃たる様相 二〇〇五 春秋の花1/春秋の花2 二〇〇六 中篇小説『縮図・インコ道理教』について/春秋の花3/「責任阻却」の論理/恥を知る者は、強い/春秋の花4/春秋の花5/春秋の花6 二〇〇七 亡母と戯曲『風浪』とのこと/流れに抗して/一大重罪〈歴史の偽造〉/受賞のことば 二〇〇八 今年こそ福岡へ/作家と論争/『悪霊』 二〇〇九 若山牧水のうた/プロレタリア詩人吉田欣一氏の逝去/綿密な労作 川村杳平著『無告のうた』/卓抜な業績/再説「わたしの天皇感覚」/大西巨人『神聖喜劇』 二〇一〇 花田さんとの最初の縁/同志武井昭夫の永眠に関して 二〇一一 原子力発電に思うこと 二〇一二 吉本隆明の死に関連して/人間の本義における運命について/佐々木基一全集について <第三部 秋冬の実 大西巨人短歌自註> 一 いのちを惜しむ 二 自負と傲慢 三 昇進しない一等兵 四 民主化する軍隊 五 日本人の民族観 <第四部 夏冬の草 戦後の文学と政治を語る> 一 打ち割られた菊の御紋章 二 日本国憲法制定から六十年 <第五部 映画よもやま話> 「赤西蠣太」 「阿部一族」 「生きてゐるモレア」「明日は来らず」 「妻よ薔薇のやうに」 「マリヤのお雪」 「會議は踊る」「制服の処女」 「森の石松」 「限りなき前進」 大西巨人詳細年譜 齋藤秀昭編 あとがき 大西赤人 初出一覧 終戦当時の対馬地図 大西巨人(おおにし・きょじん) 書評・記事 |
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