響映する日本文学史![]()
『古今和歌集』から夏目漱石まで、つながりを知れば文学はもっと楽しい!
古典から近代に至るまで、ひとつの文学作品はまた別の作家を産み、作家たちはまた新たな作品を作り続けてきた。 たとえば、『源氏物語』に引用される古歌は在原行平が須磨を訪れたときに詠んだ和歌を踏まえているのは有名な話だが、さらに、謡曲を愛した夏目漱石は「涼しさの闇を来るなり須磨の浦」という俳句を残している。 またその夏目漱石が執筆した『草枕』は、刊行から六十年近い歳月が経ってから翻訳され、カナダのピアニスト、グレン・グールドの座右の書となったという。その後、日本では、グールドと『草枕』の研究が進展している。 それぞれの関連性を軸に、「響映」=「響き合い、映じ合う」という視点から史実をひもとくことで、新たな日本文学の姿を明らかにする。 まるで物語のように読み進められる、ドラマティックな文学史入門。 私は、これまで自分の著作の中で、しばしば「響映」という言葉を用いて、日本文学を研究してきた。「響映」という熟語は、ある時、ふと、心に浮かんだ言葉だった。意味は、読んで字の如く、「響き合い、映じ合う」ことである。今のところ辞書などにも出ていないようで、見馴れない熟語かもしれないが、本書を執筆しながら、この「響映」という言葉を書名に出して、響き合い、映じ合う文学史の姿を明らかにしたいと思った。本書の各章それぞれが、日本文学の新たな読み方への扉となれば、幸いである。(「はじめに」より) ❖目次 はじめに 第一章 『古今和歌集』の影響力 第二章 『源氏物語』と日本文化 第三章 『和泉式部日記』と『更級日記』の近代性 第四章 批評文学の源流、『枕草子』と『徒然草』 第五章 謡曲というスタイル 第六章 松尾芭蕉の旅と人生 第七章 本居宣長の学問 第八章 和漢洋の体現者・森鷗外 第九章 夏目漱石と、近代文学のゆくえ 島内裕子(しまうち・ゆうこ) |
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