貨幣・勤労・代理人 経済文明論

  • 著者:坂井素思
  • 装幀:松田行正+杉本聖士
  • 定価:本体1850円+税
  • B6判並製/240ページ
  • 978-4-86528-181-1

文明という視点に立ったとき、19世紀以来の経済の歴史はどのように見えるだろうか。人びとは生産の場を離れていっそう消費にのめり込み、各種産業では巨大な組織(会社)が日々の生活すみずみまでを左右する。そして、あらゆるものを取引するビジネスの肥大化――。産業革命から今日まで、46の名著とともに、人類史的な視野で見つめる。



近代社会はモンスターと化して、一連の仕組みの暴威と限界を晒するようになった。このような今日の経済社会に対して、内容を分析し、問題提起したのは、アメリカの経済学者R・ハイルブローナーである。彼は近代における経済社会の主要な変化を、市場の拡大に加えて、三つの要因にみている。著書『世俗の思想家たち』(1953)や『経済社会の形成』(1963)で次のようにいう。
第一に、ヨーロッパにおいて「国家」という政治単位が徐々に出現したことを、彼は重視している。農民戦争と国王による征服で打撃を受けた初期封建制、すなわち孤立した小国群というあり方は、中央集権的な君主制に取って代わられた。そして、この君主制への移行に伴い、国民国家の精神の昂揚が起こる。この過程が重要だったのだ。
経済的取引が成り立つ条件にはさまざまなものがある。遠隔地貿易などの対外取引、あるいは国内取引、局地的取引によっても条件は異なる。しかし、いずれの取引の場合にも、貨幣、度量衡、法律などの共通の諸制度がなければ、取引成立は長期的なものとなりえない。そしてこのような経済制度の整備には、集権国家の力が必要であった。したがって、経済活動に対する国家の介入は、一方において規制、統制を伴うものであったが、他方においては広範な地域を商業取引に解放することになり、実質的には経済活動を保護することになったのである。(第二章「経済文明の起源」より)
本書で触れた書籍(著者名のアイウエオ順)
アリストテレス『政治学』『経済学』
ウェーバー、M『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
オルソン、M『集合行為論』
オルテガ&ウナムーノ、M『スペインの本質』
ガーシュニー、Jら『現代のサービス経済』
クラーク、C『経済進歩の諸条件』
クルース、H&ギルバート、C『アメリカ経営史』
ケインズ、J・M『一般理論』
ゲーレン、A『人間の原型と現代の文化』
ゲゼル、S『自由貨幣論』
コーエン、S&ザイスマン、J『脱工業化社会の幻想』
コモンズ、J『集団行動の経済学』
サン=シモン『産業者の教理問答』
シュペングラー、O『西洋の没落』
シュンペーター、J『経済発展の理論』『資本主義・社会主義・民主主義』
シンクレア、U『ジャングル』
ジンメル、G『貨幣の哲学』
スミス、A『国富論』
チャンドラー・ジュニア、A『経営者の時代』
ドゥロネ、J・C&ギャドレ、J『サービス経済学説史』
ナイト、F『危険・不確実性および利潤』
ノース、D・C『文明史の経済学』
バーナード、C『経営者の役割』
バーリ、A&ミーンズ、C『近代株式会社と私有財産』
ハイルブローナー、R『世俗の思想家たち』『経済社会の形成』
ハウンシェル、D『アメリカン・システムから大量生産へ』
フランケル、S・H『貨幣の哲学』
フュックス、V・R『サービスの経済学』
バジョット、W『ロンバード街』
バチェラー、R『フォーディズム』
ベル、D『脱工業社会の到来』
ボーモル、Wら『舞台芸術 芸術と経済のジレンマ』
ポラニー、K『大転換』
マーシャル、A『経済学原理』
マクラッケン、G『文化と消費とシンボルと』
マルクス、K『資本論』
ミュルダール、G『経済理論と低開発地域』
メイヨー、E『産業文明における人間の問題』
メンガー、C『一般理論経済学』
ライベンシュタイン、H『企業の内側』
ルーマン、N『信頼』
ロストウ、W・W『経済成長の諸段階』
ロック、J『統治二論』



目次
はじめに
第一章 経済にも文明のかけらが存在するだろうか
第二章 経済文明の起源
第三章 なぜクラフトフェアは限界に達したのか
第四章 生産的とはどのような状態か
第五章 なぜ近代組織は大規模化するのか
第六章 なぜエージェンシー問題は生ずるのか
第七章 勤労精神への疑問
第八章 消費社会への転換
第九章 貨幣の信頼性はいかに保たれるか
第十章 ビジネスと産業の対立
第十一章 再び、経済文明とはなにか
本書で触れた書籍一覧
おわりに
坂井素思(さかい・もとし)
社会経済学、産業社会論、消費社会論。放送大学教授。主な著書に『経済社会論』『家庭の経済』『経済社会の考え方』『社会経済組織論』『社会的協力論』(すべて放送大学教育振興会)などがある。
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