変化する地球環境 異常気象を理解する

  • 著者:木村龍治
  • 装幀:松田行正+杉本聖士
  • 定価:本体1700円+税
  • B6判並製/208ページ
  • 2014年3月10日 第一刷発行
  • ISBN978-4-903500-74-4 C0344

なぜ雨が降り、風が吹くの? 豪雨や台風、豪雪はどうして起きるの? マクロな視野で地球全体の環境を捉え、気象の基本から異常気象まで正しく理解するための基本の1冊。【木村先生に最近の気象・天候について聞きました!】



気象学の第一人者・木村龍治先生に、近年の異常な?気象について聞きました!

1)痛ましい犠牲を出した広島の豪雨災害。それでなくてもゲリラ豪雨はあちこちで増えています。いま天候にはどんな変化が起きているのでしょうか?
木村龍治先生:近年、天候に従来にない異変が生じて、その結果、ゲリラ豪雨が起きているとは考えにくいことです。マスコミが「ゲリラ豪雨」という言葉を使い始めたはるか昔から、このような集中豪雨は発生しています。例年、梅雨末期に発生するので「梅雨末期の集中豪雨」という言葉があります。8月19日未明の豪雨は、台風11号の影響が大きいのですが、今年は、北太平高気圧の張り出しが弱く、現象としては梅雨末期の集中豪雨ときわめて似ています。
このような集中豪雨は毎年起こるのですが、きわめてピンポイントで雨を降らせるので、被害が発生場所は毎年異なります。すなわち、被害は、毎年、「過去に経験したことのない豪雨」でもたらされることになるのです。【雨の降る仕組みは→第7章「地球浴場」。降水量と降水の強さの関係も解説しています】
2)デング熱やセアカゴケグモなどに見られるように、温暖化で生物の分布も変わってきていると言われます。温暖化というこの変化はいつまで続くのですか?
回答:いつまでも続きます。なぜなら、人為的な影響がなくとも、気候は、常に変化しているからです。温暖化しているか、寒冷化しているか、どちらかなのです。地球全体が温暖化したり寒冷化するのは、かなり長い年月が必要ですが、地域的な気候の変化は、地域ごとに、常に、起こっていることです。例えば、北陸地方の降雪量を見ると、約10年の周期で変動しています。【地球全体の温暖化と地域的な変化については→第6章「天気予報」。温暖化でよく話題になる海水位の変化については第2章「水平な世界」もご覧ください】
3)竜巻被害が近年報道されていますが、日本では以前は聞いたことがありませんでした。なぜ竜巻が増えているのですか?
回答:竜巻の発生は近年増えているわけではありません。過去には、竜巻の被害がでても、竜巻かどうか分からなかっただけです。近年、気象レーダーや動画撮影の技術が進んで、竜巻が可視化されるようになりました。「近年、竜巻が見えるようになった」というべきでしょう。【災害のリスクについては→第11章「まれに起こる現象」】
4)ことしの春、今夏はエルニーニョ現象で冷夏になるという予報がありました。ところが8月には、秋になっても発生しない可能性が高いと予報されています。エルニーニョ現象の予報は難しいのですか?
回答:エルニーニョの予報は、大気循環と海洋循環を結合させた数値モデルで行いますが、満足すべき精度の予測ができるレベルではありません。エルニーニョの発生原因さえ、まだ、解明されているという段階にはほど遠いのです。【ズバリ第10章「エルニーニョ」に現象を発見した経緯、そのメカニズムなど解説しています】
5)異常気象やら災害への備えやらがいわれない日はありません。先生は(気候・社会の)どんな現象に着目していますか?
回答:異常気象は自然の営みで、人間の力で発生を防ぐ方法はありません。「自然は私たち人類に優しくない。まれにきわめて冷酷になる」という認識が必要です。将来、起こりうる気象災害は、現在でも、ある程度予想できます。その想定を前提として、防災計画を立てることが必要です。ハザードマップの利用がきわめて重要です。【こちらも第11章「まれに起こる現象」で地震や津波なども含めて論じています】
木村先生、ありがとうございました!
宇宙に浮かぶ地球のなかで、大変化も小変化も、そのひとつひとつが日々の暮らしに大きな影響を与える気象現象。それぞれの出来事のメカニズムと捉え方の基本をわかりやすく説いた本書があなたの素朴な疑問にお応えします!



ハリケーン・カトリーナがアメリカ南部を襲い、COP19ではフィリピン代表が涙ながらに巨大台風の惨状を訴える。そして日本では、数十年ぶりという大雪で死者が出、交通が麻痺する……。
報道されない日はないといっても過言ではない異常気象。どのような仕組みでそれは発生するのだろうか。どの程度恐れ、それにどの程度、備えるべきなのだろうか。
地球環境、すなわちを大気と海洋とがつくり出す気象という現象を正しく理解して、異常気象も冷静に捉えるための基本の1冊。海水の循環が天候にもたらす影響、地球に降りそそぐ太陽光線がはたす3つの役割、地球全体の気温がおよそ15度で保たれているわけ、雲の発生と降雨の仕組みなど、気象学の基礎的なことから、天気を予測することの難しさや異常気象や巨大地震のような災害にどう向き合うべきかまで、第一人者がわかりやすく説く。

[目次]
まえがき
第一章 深海探究
第二章 地球の形
第三章 明るい世界
第四章 宇宙から見た地球環境
第五章 温帯の気象
第六章 天気予報
第七章 地球浴場
第八章 熱帯の気象
第九章 季節変化と海洋
第十章 エルニーニョ
第十一章 まれに起こる現象
付録 自転の効果
きむら・りゅうじ
東京大学名誉教授。気象学、海洋物理学、地球流体力学。
主な著書に『地球流体力学入門』(東京堂出版)、『改訂版 ながれの科学』(東海大学出版会)、『日本の気候』(共著、岩波書店)など多数。
書評・記事
日本気象学会「天気」 2014年6月号 吉﨑正憲
日本経済新聞 2014年3月26日夕刊 目利きが選ぶ今週の3冊 竹内薫