さずきもんたちの唄 最後の弟子が語る瞽女・小林ハル


  • 著者:萱森直子
  • 装幀:鈴木成一デザイン室
    装画:山本由実
  • 定価:本体1800円+税
  • 四六判並製/264ページ
  • 2021年10月10日 第一刷発行
  • 9784865280449
最後の瞽女・小林ハルの知られざる素顔 弟子がはじめて語る注目のノンフィクション
生後100日で失明、5歳で瞽女の親方に弟子入り。以来、70年あまりにわたって瞽女として商売を続け、その後も芸と心を伝え続けた小林ハル。
たまたま聴いた唄声が忘れられずに弟子入りした著者は、小林ハルの稽古場で、「瞽女とはなにか」「自分のさずきもん(人生でさずかったもの)とはなにか」を学んでいく。

「おれがもうちっと若かったらおめと旅したらよかったろうの」
「そうですねぇ、私、もう少し早く生まれるべきでしたねえ」

思いのままに、突然の入門。
瞽女唄の即興性にはじめから大混乱。
もうひとりの瞽女、杉本シズさんとの出会い。
ハルさんの忘れられない言葉、その唄と芸のこと。
そして別れーー
瞽女の芸の真髄、これまで語られてこなかった小林ハルの最晩年を、真摯な目線で切り取ったノンフィクション。

*YouTubeで視聴可能な参考音源リスト付き

声がどうとか唄や三味線がうまいとか、素敵なメロディだなとか、そのような印象ではありません。ただひたすら「ここにこんなものが残っていたんだ」という驚きでした。
発声も、音程のとり方・移り方も、三味線も、その人自身が発している存在感そのものまで、まるごとすべてがそれまで経験したことのないものだったのです。自分が知っていたあらゆる音楽芸能とかけ離れたものであるように感じられました。五線譜や文字、知識や技術でいじられていない根源的な魅力をもった世界……ほかの世界の価値観や毀誉褒貶を拒否しているかのような。神聖なものを目の前にしているような、不思議な感覚でした。(「第一話 師匠・小林ハルとの出会い」より)
目次
はじめに
一の段 旅のはじまり   「こんなばあさんから唄を習いたいなんて物好きだの」
一 師匠・小林ハルとの出会い
二 突然の入門
三 最初から道は険しい
四 寒声のトレーニング
五 自由はむずかしい
六 目に頼らない
七 時折見せる素顔

二の段 道はつづく、奥深くへ  「さずきもんさえ大事にしてりゃなんとかなるもんだ」
八 芸はそのまま「人」
九 高田瞽女・杉本シズさん
十 暮らしから唄が生まれる
十一 瞽女唄は瞽女唄でもみんな違う
十二 保育園で瞽女万歳
十三 文字はやっかいなもの
十四 耳から聴く、心で聴く
十五 「さずきもん」と「きがまえ」
十六 ハルさんからの手紙
十七 百寿を祝う会

三の段 別れ、そして旅はつづく  「おめと一緒に旅したかったもんだ」
十八 唄は人の歴史
十九 うたってはじめて気づくこと
二十 「わかるなんて言うもんはうそつきら」
二十一 「上手」にうたってはいけない
二十二 消えた「三条組の節回し」
二十三 よみがえった節回し
二十四 瞽女唄の神様
二十五 手遊び唄とハルさんのお母さん
二十六 共に生きるということ
二十七 石水亭の花
二十八 新しい旅のはじまり
二十九 新たな出会い
三十 ハルさんをモデルにした映画
三十一  てめえのさずきもん
おわりに
参考音源リスト
萱森直子(かやもり・なおこ)
1958年、新潟県新潟市生まれ。無形文化財保持者の長岡瞽女・小林ハル氏に師事。
小林ハルの伝えた三種類の節回しで祭文松坂をうたいわけることができる。高田瞽女杉本シズ氏を通して高田系瞽女唄も習得し、長岡・高田両系統の瞽女唄を直接伝授される。
NHK「新日本紀行ふたたび」(2008年)への出演、NHKオーディオドラマ「女歌夢の道行」(2009年)の制作協力、映画『瞽女GOZE』の瞽女唄指導協力など、メディア出演・協力多数。
新潟市内の保育園で園児と瞽女唄を唄う活動も行うなど、瞽女唄をめぐる環境づくりや、瞽女唄教室での後進の育成にもつとめている。「越後ごぜ唄グループ『さずきもん』」」を主宰。
小林ハル(こばやし・はる)
重要無形文化財保持者(瞽女唄)。1900年、新潟県三条市で出生。
生後百日で失明し、五歳で瞽女の親方に弟子入り、九歳で初の旅回りに出る。
1973年に福祉施設に入所するまで瞽女として商売をし、その後もその芸と信念を伝えた。1978年に記録作成等の措置を講ずべき無形文化財として認定。2001年に三条市名誉市民、2002年に吉川英治文化賞受賞。
2005年4月25日盲養護施設にて永眠。享年105才。