言葉の人生


  • 著者:片岡義男
  • 装幀:鈴木成一デザイン室 装画:アンドーヒロミ
  • 定価:本体2200円+税
  • 四六判並製ビニールカバー/304ページ
  • 2021年8月25日 第1刷発行
  • 978-4-86528-041-8 C0095

言葉と作家の知的で愉快な関係を思う存分に味わえる、9年ぶりの語学エッセイ。

ブルースに登場する人々は、その後どんな人生を送ったのだろう。かつて高級で輝かしく特別だった「ケーキ」という単語は、「ケーキバイキング」に安住の地を得た。「青春」を本気で直訳すると「ブルー・スプリング」になるのか。そして珈琲はいまや「珈琲」のひと言では頼めない……
新しい日本語、懐かしい英語。それらをつなぐ、カタカナ語。絶え間なく生まれ、変化し続ける言葉たちに驚いたり、楽しんだり、考えこんだり、時々ちょっぴりぼやいたり。
「サンデー毎日」連載に書き下ろしを加えた全88篇を所収、著者の新鮮な驚きと発見に満ちたエッセイ集が、ノスタルジックなビニールカバーの装幀で登場。




毎日の日常のなかで、時間を作っては、僕はなにほどか創造的な世界について、文章を書いてきた。六十年は続けてきたことだろう。時間を作っては、とたったいま僕は書いた。こににひとつの鍵があるようだ。日常の時間とは区別された、もうひと種類の時間のなかで、僕が使う日本語とは、なにか。『サンデー毎日』での連載の果てに、僕は新たな主題を見つけたようだ。日常とはすべてを異にするもうひとつの現実のなかで、僕が使う日本語とは、いったいどういうものなのか。これについて書くのは厄介なことだろうか。それとも、思いのほか簡単に、およそ千字ほども使えば、ことは足りてしまうものなのかどうか。やってみないことには、なにもわからない。やるほかない。新たな主題を僕が見つけたとは、こういうことだ。(あとがきより)

[目次]

バッテンボーからビル・ライス・テレビの国へ
Zicoとジーコはおなじなのか
ミーティングでペンディングとなる
すべてが片仮名語になった国とは
千差万別という面倒くささをいっきに解決するには26
のっける気持ちはことのほか大きい
思い出は言葉をめぐって
「珈琲」のひと言ですべてが通じた時代
いまでは聞かないし見ない言葉
男性とは明確に区別された生き物がいる国
俺を中心にすべては堂々めぐり
ブンブンでロカボにノスヒロ
僕には読めなかった漢字
酒にまつわる言葉について
僕はきまり文句を使わない人なのか
僕はそこに論理を感じない
あまりにも素晴らしい出来事
そしてすべてを水に流しましょう
コカ・コーラを飲みましょう
「最低限の会話能力」とはなになのか
彼らのその後の人生は
「インイチガイチ」の衝撃を受けとめる
チャーリー・ブラウンは直球の投手だ
日本語にとって「三」とはなにか
国際都市で天麩羅定食を食べる
六十八年ぶりの日本と日本語
深い意味はない、しかし俗世間はよく見える
読んでみた。面白かった
クヨクヨ、イキイキ、オイオイ、グッタリ
お焼き加減はいかがなさいますか
甘からの汁を肴にして
男性の存在が前提にされている
まもなくの発車となります
無邪気な直訳はホラーである
男子と女子に分かれてせいの順に
わずか三画のなかに日本のすべてがある
外国人たちは日本語に接近している
豚肉の生姜焼きとポーク・ジンジャー
その日本語は原語を超えている
大人たちが教えてくれなかった言葉
ノット・オンリー・バット・オルソー
手間は出来るだけ省きましょう
街を歩けば謎にあたる
きまり文句ですべてが間に合う
日本語はけっして曖昧ではない
彼女を納得させるのは大変だからなあ
こういう言葉には頭を抱えるほかない
なんだ、そんなことも知らないのか
流れる川の水にすべてを託す
戦争の経済的負担はとてつもない額になる
日本語は滅びていくのだろうか
英語を学ぶ教材としての英字新聞
日本語にならない英語というもの
「俺」はしぶとく生きのびる
頭に「かね」のつく言葉を探してみた
よろしかったでしょうか
丁寧さと正確さ、そしてご理解のはざまで
思っていないで答えをくれ
日本語能力試験N5に合格するか
お前はネクタイがいつもゆるんでいる
空飛ぶ円盤の時代は過ぎ去ったか
歌のなかの女性たち
母親をめぐって話はつきなかった
「こころ」について学習する
進駐軍の残飯の日々
はるかに遠く子供たちが遊ぶ
受話器に飛びついたのは、いつだったか
スヌーピーが果した役は大きい
犬も歩けば棒に当たる
花道はもはやどこにもない
曇りガラスに必ずこう書いた
知らなかった言葉を知るとき
人が生きるから人生なんだよ
ライナスは眼鏡をかけている
未来への明かるい希望
サービスはまだ生きている
一拍子、二拍子、四拍子
かつてはよく使っていたはずなのに
アカンベーにレロレロバー
失敗は七回まで許される
自分にとって面白い日本語とは
喋る人ではない、考える人なのだ
省略しなければやってられない
バイリンガルはこんなふうに発展する
悲惨な現実と幸せな空想と
人の意志や態度を表す「腹」という言葉
彼女のコロッケ、彼のメンチカツ
ギョウニンベン
片岡義男(かたおか・よしお)
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年発表した「スローなブギにしてくれ」で野性時代新人賞受賞。近著に『いつも来る女の人』『彼らを書く』『窓の外を見てください』『片岡義男COMIC SHOW』(共著)など。