吉田修一論 現代小説の風土と訛り

  • 著者:酒井信
  • 装幀:松田行正+杉本聖士
  • 定価:本体2300円+税
  • 四六判変型並製/336ページ
  • 2018年9月30日
  • 978-4-86528-210-8

『パレード』から『悪人』、そして『国宝』までほぼ全作品を網羅。もの哀しさと可笑しさを合わせ持つ土地「長崎」から、吉田作品が描く「悪」と「感情」を照らし出す。現代の「悪」を描き、誰もが抱える「寂しさ」に触れる吉田作品の魅力を解き明かす吉田修一ファン必携の1冊。

―僕は長崎に生まれていなかったら小説は書いていないかもしれないですね。 吉田修一

97年デビュー後、山本周五郎賞、芥川賞という全く違うタイプの文学賞を受賞。
大衆文学と純文学を自由に行き来し、代表作『悪人』、『怒り』はミリオンセラーとなる。
映像化でも興行収入は19億を超え、ジャンルを問わず文学ファンを魅了し続ける。

風土/長崎/酒屋/父性/母性の不在/ブルーカラー/ヤンキー/成熟と喪失/嘘/ヨイトマケの唄/長崎南高校/訛り/疑似家族の親密さ/男女別の秩序/原風景/故郷喪失/悪/新宿/歌舞伎町/カズオ・イシグロ/没場所性 ほか


❖目次
はじめに 吉田作品の匂い 
第1章 吉田修一の「風土」 
1‐1 長崎
1‐2 父親と酒屋
1‐3 母親と「成熟と喪失」

第2章 吉田修一の「小説の嘘」
2‐1 丸山明宏「ヨイトマケの唄」と長崎
2‐2 長崎南高校
2‐3 軍艦島の偽ガイド

第3章 吉田修一の「訛り」
3‐1 感情の訛り
3‐2 疑似家族的な親密さ
3‐3 男女別の秩序

第4章 吉田修一の「故郷喪失」
4‐1 故郷喪失
4‐2 村上龍と村上春樹との風景描写の違い
4‐3 吉田修一とカズオ・イシグロの長崎

第5章 吉田修一の「悪」
5‐1 新宿
5‐2 悪人=吉田修一の故郷
5‐3 長崎から歌舞伎座へ―『国宝』の風土

おわりに 吉田作品の「風土」
参考文献
あとがき
付録 吉田修一作品の舞台マップ

〈はじめにより〉

 吉田修一の作品の大きな魅力の一つは、その多国籍的な人物の造形と、風景の描写にある。長崎を舞台にした作品の多さや、インタビューや対談の発言内容を踏まえると、吉田の多文化混交的な作風は、生まれ育った長崎で培われたものである考えるのが自然だろう。
 作品の舞台としても、長崎を選択することの多い吉田修一にとって、生まれ育った場所はどのような意味を持ち、現代日本を代表する作家となった現在の作風にどのような影響を与えているのだろうか。
この本では吉田修一の作品の細やかな描写やインタビューの分析を基にして、作家の無意識に迫るような批評を試みたい。




酒井信(さかい・まこと)
1977年長崎市生まれ。長崎南高校、早稲田大学人間科学部卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学助教を経て、現職は文教大学情報学部准教授。専門は文芸批評、社会思想、メディア論。著書に『平成人(フラット・アダルト)』(文春新書)、『最後の国民作家 宮崎駿』(文春新書)等。文芸誌と論壇誌に執筆多数。