こどもと大人のためのミュージアム思考


  • 編著:稲庭彩和子 著:伊藤達矢、河野佑美、鈴木智香子、渡邊祐子
  • 装幀:松田行正+杉本聖士
  • 定価:本体1800円+税
  • 四六判並製/296ページ
  • 2022年3月31日 第一刷発行
  • 978-4-86528-079-1 C0070
私たちはまだ美術館・博物館の楽しみ方を知らない!?
モノをよく見て思考を深める、ミュージアムならではの体験を紐解く1冊。

こどもと大人が共に文化やアートに出会い、楽しむことを応援する「Museum Start あいうえの」は、上野公園近隣に位置する9つの文化施設が合同で行うラーニングプロジェクト。本書ではプロジェクトでの活動を写真付きで紹介。さらにプロジェクト当事者の視点から、ミュージアムでモノを見て思考する体験を「ミュージアム思考」と捉え、視覚的、身体的、共在的、超越的、持続的の5つの側面からその体験を紐解いていきます。博物館・美術館の新しい時代の楽しみ方が学べる一冊です。


ラーニングプロジェクト参加者の声

「うちの子がゴッホについて感想を言うなんて」
「ミュージアムは見る場所だと思ってたけれど、考える場所だった」
「ゲームより楽しかった!」
「ゆうえんちよりおもしろかった」
「上野は“第二の我が家のよう”と娘と話しています」


今、世界が激変しています。変化が激しく、正解がないこれからの時代に求められているのは、生産性を重視したステレオタイプな成功や達成のための教育ではありません。未知なるものに出会ったときにどう対処するのか。状況をよく観察し、多様な考えや思いを持った人が、対話の場に参加でき、存在を認め合える「生きる意味を創造する学び」こそが、持続可能な未来へと私たちを導くでしょう。「この世界に生きていて幸せだ」と思える、学びやつながりをもたらす「パワースポット」としてのミュージアムを、私たちは提唱します。

(「はじめに」より)



❖本書の3つの特長


①一條彰子、山口周、落合陽一の超豪華インタビューを収録

美術館教育の第一線で活躍し続ける東京国立近代美術館の一條彰子さん、ビジネスの視点から低成長時代の新たな社会のあり方について発信している独立研究家、著作家、パブリックスピーカーの山口周さん、そして筑波大学で教鞭をとりながら、メディアアーティストとして、またSDGsや教育をメディアで論じるなどマルチに活躍する落合陽一さん。各分野で活躍し、ミュージアムと独自に関わってきた3人の有識者インタビューを収録。


②学芸員、アートコミュニケーター、教員など関係者の生の声を多数収録

「あいうえの」プロジェクトに関わった関係者の生の声を、コラム「VOICE」で紹介。アートコミュニケーター志望、美術教育を授業に取り入れたい教育関係者にも参考になる内容です。


③オールカラー写真付きでプログラムの事例を紹介!



❖目次

はじめに

理論編

1 新しい学びのプロジェクトがめざす姿
・すべての子供たちにミュージアム体験を!
・子供と大人が共につくる、学びのかたち
VOICE1 博物館の展示を「相対化」して新たな学びを生む 小川達也(国立科学博物館)
VOICE2  どんな意見も受け入れてくれる場所 藤田千織(東京国立博物館)

2 なぜ今、ミュージアムで新しい学びなの?
・社会の共通財産としてのミュージアム
・ミュージアムがつくる文化的つながり「文化縁」
VOICE3 娘と私の第二の我が家になった上野 安達治枝(プログラム参加者)
VOICE4 固定された関係性から解放される日 廻京子/草野くる美(認定NPO法人キッズドア)

3 ミュージアムで見て考える
・ミュージアムでモノを見るとは
・見て、考える力
・分かち合う力
VOICE 5 ミュージアムがもたらす成長を感じる体験 鈴木秀樹(小学校教諭)

インタビュー
一人ひとりが世界につながる「窓」としてのミュージアム
一條彰子(東京国立近代美術館主任研究員・教育普及室長)

記号化できない世界を把握し、問いかける
山口周(独立研究者、著作家、パブリックスピーカー)
ミュージアムで育む批評的なモノの見方
落合陽一(メディアアーティスト)

実践編

  • 5つのミュージアム思考
1 視覚的思考─モノを見ながら思考を深める
事例① キュッパ部
事例② Hi!Zai (やあ! 材料)
事例③ うえの! ふしぎ発見 コレクター部
考察 「見る」から始まるミュージアムの学び

2 身体的思考─身体感覚を総動員して考える
事例① うえの! ふしぎ発見 けんちく部
事例② やさしい日本語プログラム 美術館でポーズ!
事例③ キュッパ・チャンネル ムービー部
考察 展示室だけではなく、敷地もぜんぶミュージアム

3 共在的思考─他者の感情や経験を理解する
事例① のびのびゆったりワークショップ
事例② ミュージアム・トリップ
事例③ 放課後のミュージアム
考察 「ともにある」ことの意味

4 超越的思考­­─時空を超えて深層に触れる
事例① スペシャル・マンデー
事例② うえのウェルカム
事例③ ティーンズ学芸員
考察 自己を超えた社会や世界とのつながりを見出す

5 持続的思考─答えを急がず問いを持ち続ける
事例① ぼうけん部 哲学対話
事例② うえの! ふしぎ発見  アート&アニマル部
事例③ うえの! ふしぎ発見  ゴッホ部
考察 わからないことを考え続けるということ

おわりに

Museum Start あいうえの プログラム一覧
Museum Start あいうえの 担当者一覧
受賞歴
稲庭彩和子(いなにわ・さわこ)
2022年3月まで東京都美術館 学芸員 アート・コミュニケーション係長
2022年4月より独立行政法人 国立美術館 主任研究員


青山学院大学文学研究科(修士)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ ミュージアム・スタディーズ(修士)。神奈川県立近代美術館を経て、2011年より東京都美術館のアート・コミュニケーション事業の立ち上げを担当し「MuseumStartあいうえの」を企画・運営。展覧会として「キュッパのびじゅつかんーみつめて、あつめて、しらべて、ならべて」(2015)等。共著に『100人で語る美術館の未来』(慶應義塾大学出版会、2011)、『美術館と大学と市民が作るソーシャルデザインプロジェクト』(青幻舎、2018)、『コウペンちゃんとまなぶ名画の世界』(KADOKAWA、2021)等。

伊藤達矢(いとう・たつや)
東京藝術大学社会連携センター特任准教授

東京藝術大学大学院修了(博士)。専門は美術教育。アートプロジェクトのディレクションなど多様な文化プログラムの企画立案に携わる。2011年より東京都美術館と連携した「とびらプロジェクト」や「Museum Start あいうえの」に従事。八戸市美術館運営協議会委員として美術館のリニューアルに関わる。共著に、『美術館と大学と市民がつくるソーシャルデザインプロジェクト』(青幻舎、2018)、『ミュージアムが社会を変える~文化による新しいコミュニティ創り』(現代企画室、2015)分担執筆等。

河野佑美(こうの・ゆみ)
東京都美術館 学芸員 アート・コミュニケーション係

武蔵野美術大学大学院造形学コース(現・造形文化研究科美術専攻造形理論・美術史コース)修了(修士)。専門は造形学・プロダクトデザイン史。2008年東京都美術館着任。展覧会として「Arts&Life:生きるための家」展(2012)等。2011~12年京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)VTSナビゲイター養成講座修了。2013年よりアート・コミュニケーション事業に従事し、2019年より「Museum Start あいうえの」担当。

鈴木智香子(すずき・ちかこ)
2022年3月まで東京藝術大学美術学部特任助手
2022年4月より独立行政法人 国立美術館 特任研究員

武蔵野美術大学造形学部版画専攻卒業、東京造形大学大学院美術研究領域版画コース修了(修士)。2011年~2014年神奈川県立近代美術館に普及課学芸員として勤務。担当した展覧会に「国立民族学博物館コレクション ビーズ イン アフリカ」展(2012)、「いろ・うごき・かたち アートをめぐる夏の冒険」展(2014)など。2015年から2021年まで「Museum Start あいうえの」プログラム・オフィサーを務める。

渡邊祐子(わたなべ・ゆうこ)
大学非常勤講師

東北大学大学院教育学研究科修了(博士)。専門は社会教育、生涯学習、博物館教育の実践。2016~21年に東京都美術館より専門家委託として「Museum Start あいうえの」プログラム・オフィサーに従事。2017年から現在は、東京藝術大学、国際基督教大学、国立音楽大学、法政大学等非常勤講師。共著に『対人支援職者の専門性と学びの空間 看護・福祉・教育職の実践コミュニティ』(創風社、2015)。