砂漠論 ヨーロッパ文明の彼方へ![]() 砂を「黄金の粉」と表現するフロベール。死者の神オシリスに変身するピエール・ロティ。高貴な女性のミイラの足に仄かな欲情をおぼえるオリエント研究者ーー。ナポレオンのエジプト遠征以来、暴力と美とか混在する砂漠。その彼方の地からヨーロッパ文明に接近する。『ランジェ公爵夫人』の夫人とモンリヴォーの恋愛ゲームを、閨房、コケットリーなどの言葉から読み解く「貴婦人が砂漠に憧れるとき」を所収。ほかに、プルースト、ナボミフ、ゾラなどの古典論を収録した。 「無限大のヨーロッパ。その微粒子の密かな囁きに、ヨーロッバが耳をかたむけるようになったのは、いつ頃のことなのか。……」(本文より) 目次 まえがき 1 形象をめぐって 砂漠論 作家の肖像を読む 心と身体のディコトミー 2 おりおりの古典 それぞれのプルースト 共和国の視点/唯物論の美–『パリの胃袋』『ボヌール・デ・ダム百貨店』を読む マリアとマリアンヌ–宗教社会学としての『ルルド』 『ロリータ』の〈フロベール的イントネーション〉について 3 書物への友愛 小説という夢幻の島–松浦寿輝『半島』 濃密な言葉に浸されて美の残像が輝く–石井洋二郎『美の思索 生きられた時空への旅』 文学と美術の親密な語らいを夢見て–三浦篤『近代芸術家の表象 マネ、ファンタン=ラトゥールと1860年代のフランス絵画』 作家の耳と手–吉田城『小説の深層をめぐる旅 プルーストと芥川龍之介』 〈言葉〉と連れだって広大な地球を漂流しよう–管啓次郎『オムニフォン ”世界の響き”の詩学』サイードという名の苛立ち–エドワード・W・サイード『オリエンタリズム』『遠い場所の記憶 自伝』 ピエール・ノラと〈現在時〉の歴史学–ピエール・ノラ『記憶の場 フランス国民意識の文化=社会史』 〈危機〉を語らぬために–二宮宏之『マルク・ブロックを読む』、マルセル・プルースト『失われた時を求めて』鈴木道彦訳 〈人種論〉と西欧世界–マルク・ブロック『奇妙な敗北 1940年の証言』、レオン・ポリアコフ『反ユダヤ主義の歴史』 世界史の開かれた展望のもとに–羽田正『イスラーム世界の創造』 4 翻訳の余白に 貴婦人が砂漠に憧れるとき–バルザック『ランジェ公爵夫人』論 紺碧の地中海にて 灼熱の砂漠と文明のヨーロッパ 「バルザックは正統王朝派、カトリック、貴族主義者です」 コケットリー 雅なるものと闇の力 罪の告解 素足の誘惑 聖女テレサ エピローグーー手紙 後記 人名索引 工藤庸子(くどう・ようこ) 書評・記事 |
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