〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険 ジュール・ヴェルヌとピエール=ジュール・エッツェル

  • 著者:石橋正孝
  • 装幀:清岡秀哉
  • 定価:本体4200円+税
  • 四六判/上製/500ページ
  • 2013年3月30日 第一刷発行
  • ISBN978-4-903500-90-4 C0098

作家と編集者、この役割分担〈システム〉を創始したのは、ヴェルヌとエッツェルだった。
ふたりの間をゲラが往復するたびに、作品は加筆され、修正されてゆく。綿密な草稿研究によって、野心とビジネスを内に秘めたふたりの〈冒険〉を19世紀出版事情とともに描き出す!



〈目次〉

第一部
第1章 ピエール=ジュール・エッツェルとロマン主義時代の出版界 —デビューから『教育と娯楽誌』の創刊まで
1 編集者とはなにか —「文学的存在性」または近代文学の両義性
2 挿絵はいかにして編集者を編集者たらしめたか
3 エッツェルのデビュー
4 〈人間喜劇〉の編集者エッツェル
5 政治の季節
6 『教育と娯楽誌』の創刊(一八六四年)

第2章 ヴェルヌとエッツェルの共同作業のメカニズム
1 ヴェルヌとエッツェルの共同作業における「分冊」の役割の変化 —ある編集システムの成立
2 「システム」の成立
2−1 〈驚異の旅〉の刊行開始まで
2−2 「システム」の成立(その二)—挿絵は誰のものか
2−3 「システム」の成立(その三)—困難な離陸
2−4 「システム」の成立(その四)—テクストとイメージの統一性を求めて

第3章 〈驚異の旅〉の舞台裏
1 執筆方法と介入様態の変化(一)—普仏戦争以前
2 執筆方法と介入様態の変化(二)—普仏戦争以後
3 往復書簡—共同作業のための距離

インタルード 〈驚異の旅〉という運動

第二部
第4章 物語と過剰
1 カニバリズム—『チャンセラー号』における現在形の描写と書くことの現場
2 カニバリズムと恋愛—『グラント船長の子供たち』
3 恋愛と政治—『ミシェル・ストロゴフ』
4 恋愛と読者—『燃える多島海』または「組み合わせ小説」とはなにか
5 未来文明への不安—『黒いインド』
6 否定されたオリジナリティとしての未来都市—『ベガンの五億フラン』

第5章 進歩に対する不安と日常の除外
1 科学の不安—『チャンセラー号』
2 知の世俗化
2−1 知の世俗化(一)—アクチュアリティと禁断の知(『地球の中心への旅』)
2−2 知の世俗化(二)—『地球の中心への旅』
3 日常の除外
3−1 日常の除外(一)—時空的近接の危険性、あるいは全員と意見を一致させること(『マチアス・サンドルフ』)
3−2 日常の除外(二)—『ミシェル・ストロゴフ』とロシアの政治的圧力
3−3 日常の除外(三)—誰でもない人の国籍

第6章 全体化と局所性 —〈驚異の旅〉における超越性と偶然
1 十九世紀西欧文学におけるイデオロギー装置としての気球
2 失効する局所性と摂理の方法的世俗化—『グラント船長の子供たち』
3 小説の主人公としての編集者—『マチアス・サンドルフ』とそれ自体局所的な地域の局所的要素

エピローグ

あとがき
年譜/書誌/註/人名索引
石橋正孝(いしばし・まさたか)
1974年生。東京大学教養学科卒。同大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学、パリ第8大学博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て、現在立教大学観光学部助教。日本ジュール・ヴェルヌ研究会会長、フランス・ジュール・ヴェルヌ協会会報編集委員。著書に『大西巨人 闘争する秘密』(左右社、2010年)、『ジュール・ヴェルヌが描いた横浜』(共著、慶應義塾大学出版会、2010年)、『Michel Butor : à la frontière ou l’art des passages』(共著、ディジョン大学出版局、2011年)、訳書に『ジュール・ヴェルヌの世紀』(共訳、東洋書林、2009年)、『罵倒文学史』(東洋書林、2011年)、『レジスタンス女性の手記』(東洋書林、2012年)、フォルカー・デース『ジュール・ヴェルヌ伝』(水声社、2014年)など。
書評・記事
週刊読書人 2013年12月20日号 2013年回顧総特集号
週刊読書人 2013年9月13日号 「ヴェルヌ研究のひとつの到達点」 小野耕世
週刊読書人 2013年7月26日号 アンケート2013年上半期の収穫 長山靖生
朝日新聞 2013年6月9日 「ヴェルヌ対版元 タフな闘争」荒俣宏
SFマガジン 2013年7月号 長山靖生
週刊文春 2013年5月30日号 私の読書日記 鹿島茂
産経新聞 2013年5月19日 「システム化された本づくり」永江朗