ふたつのまどか ―コレクション×5人の作家たち

  • 刊行:DIC川村記念美術館
    発売:株式会社左右社
  • 装幀:須山悠里
  • 定価:本体2,300円+税
  • B5変型並製/176ページ
  • 2020年4月1日 第一刷発行
  • 978-4-86528-270-2 C0071

DIC川村記念美術館 開館30周年記念展公式図録。
杉戸洋、野口里佳、さわひらきほか第一線で活躍する現代作家とサイ・トゥオンブリー、ジョゼフ・コーネルなど錚々たる芸術家たちの鮮烈な出会い。新しい響きを生み出す夢のコラボレーションが実現‼

エントランスホールの天井照明やステンドグラスをはじめ、「重なる二つの円」のデザインモチーフがちりばめられているDIC川村記念美術館。「二つの円」には初代館長・川村勝巳と建築家・海老原一郎の友情の絆、そして鑑賞者と作品が出会う場という意味が込められる。開館30周年記念展では、このモチーフにちなんでひとつの部屋に現代作家とコレクション作家の新しいインスタレーションを展開する。

*新作多数/撮り下ろし図版多数収録/バイリンガル

❖出品作家
さわひらき × サイ・トゥオンブリー
杉戸洋 × ラリー・ベル
野口里佳 × ジョアン・ミロ
福田尚代 × ジョゼフ・コーネル
渡辺信子 × エルズワース・ケリー









❖ 目次
ごあいさつ
謝辞
福田尚代 × ジョゼフ・コーネル
野口里佳 × ジョアン・ミロ
渡辺信子 × エルズワース・ケリー
杉戸洋 × ラリー・ベル
さわひらき × サイ・トゥオンブリー
作家解説
出品作品リスト

❖ 展覧会情報
2020年3月20日(金・祝) - 7月26日(日)

時間: 9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日: 月曜(ただし5月4日は開館)、5月7日(木)
主催: DIC株式会社
後援: 千葉県、千葉県教育委員会、佐倉市、佐倉市教育委員会

https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition-next/

❖ 作家紹介
福田尚代(1967–)
埼玉県浦和市(現さいたま市)生まれ。1992年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。1994年から2000年までアメリカ、ワシントン州に居住。本や文房具、郵便物など、言葉や文字との関わりをもち、しばしば自身の知覚や記憶を宿した私物に精緻で反復的な手作業をほどこした彫刻やオブジェ、コラージュを手がける。その制作手法は偶然や無意識の作用を介在させ、削る、折る、切り抜く、刺繍するといった行為がなかば衝動的に始められ、繰り返されることで、事物が変容し、異なる姿のもとに転生したものが作品として現れる。また、福田は美術の制作と並行して、始まりから読んでも終わりから読んでも同音となる、回文と呼ばれる文章を書き続けており、これまでに11冊の回文集を発表している。「世界は言葉でできている」*と考える作家にとって、美術と回文による言葉と世界をめぐるその探求は、根底において分ちがたく結びついている。
福田尚代「片糸の日々」『ひかり埃のきみ 美術と回文』平凡社、2016年、p.189

ジョゼフ・コーネル(1903–1972)
ニューヨーク州ナイアック生まれ。生涯のほとんどをニューヨークで家族とともに暮らした。寄宿学校を中退後、1921年より布地のセールスマンとしてマンハッタンに勤務。劇場、画廊、美術館等を訪れるようになり、音楽や舞台芸術、美術への関心を深めた。1930年代、マックス・エルンストらシュルレアリストに触発され、コラージュ作品を発表し始める。その後、みずから古本屋や小道具屋で蒐集した雑貨、標本、書物や雑誌の切り抜きといったお気に入りの品々を木箱におさめたアッサンブラージュ作品を手がけていく。「箱」の作品で知られるようになった作家だが、生涯にわたって制作したコラージュのほか、実験的な映画作品も残した。既存のものを組み合わせる制作手法から、その作品はロバート・ラウシェンバーグらネオ・ダダとも関連づけられる。

野口里佳(1971–)
埼玉県大宮市(現さいたま市)生まれ。1994年日本大学芸術学部写真学科卒業。1992年から写真作品制作をはじめる。1997年よりアジアン・カルチュラル・カウンシルによりニューヨークに滞在し、同地を拠点に活動(2001年まで)。1999年にライクスアカデミーに招聘されアムステルダムで制作。初期から独創的な視点による透明感のある写真を発表し、国際的な発表活動も継続的に行う。2001年、作品集『鳥を見る』を刊行、第13回写真の会賞。2002年、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2004年からベルリンを拠点に活動(2016年まで)。2009年、作品集『太陽』を刊行。2014年、第30回写真の町東川賞国内作家賞受賞。那覇市在住。

ジョアン・ミロ(1893–1983)
カタルーニャ地方のバルセロナ生まれ。父の意向に従い商業学校に入学したが、同時に美術学校にも通う。1910年には商会に帳簿係として就職するも翌年病を患い退職。療養中に画家になることを決意し、フランセスク・ガリの美術学校で学んだ。伝統的なものと現代的なものを融合させ、カタルーニャ独自の新たな文化の創造を目指す気運が高まるなか、フォヴィスムやキュビスムを消化したうえで緻密な描写で画面を構成する様式に到達する。1920年以降はパリとモンロッチを活動拠点とし、シュルレアリスム運動に参加。この頃より、現実には存在しない記号的モチーフ、または浮遊する生物のようなモチーフが中心となる特徴的な様式が確立してゆく。晩年はマヨルカ島にアトリエを構え、同地で没する。絵画や彫刻、版画、舞台装飾、陶芸など、その制作活動は多岐にわたった。

渡辺信子(1948–)
1948年東京都千代田区に生まれ、関西で育つ。7才からピアノをはじめ、8才から須田剋太の絵画教室に通い師事する。相愛女子大学(現 相愛大学)で音楽の道を選択したが、絵画制作も並行して継続し、両分野で活動を続けて現在に至る。1969年に芦屋市展に出品。具体美術協会のメンバーとともに芦屋展にかかわっていた最晩年の吉原治良から影響を受ける。1972年、初個展で白一色の樹脂による平面作品を発表。その後、板面上にロープや木片、金属を取り付け、布と組み合わせるなど試行しながら各コンクールに出品した。さらに個展を開催するうち、布を全面に使った現在の手法を1980年代後半頃からはじめる。国内では関西を中心に活動し、ドイツ、フランス、韓国で作品を発表する。デュッセルドルフと箕面市で制作。

エルズワース・ケリー(1923–2015)
ニューヨーク州ニューバーグ生まれ。ボストン美術館付属学校で学んだのち、奨学金を得て渡仏。パリ国立美術学校に籍を置く。フランスでは、ビザンチンの三連祭壇画や、アンリ・マティス、ジョルジュ・ヴァントンゲルローら先行世代の作品から大きな影響を受けた。ケリーは筆触を感じさせない色面を描いた作品でよく知られており、ミニマリズムやハード・エッジと関連づけられることが多い。そこに描かれた幾何学的形態は、現実にある事物の観察を通じて、植物や窓、建築などから着想されている。他方で、シェイプト・カンヴァスを用いたり、複数のパネルを組み合わせたりすることで、ケリーの作品はしばしば空間内にある物体としての側面を強く主張する。

杉戸洋(1970–)
愛知県名古屋市生まれ。愛知県立芸術大学日本画科卒業。1990年代から淡い色合いの抽象化された船や家、動物や木などのモチーフをリズミカルに配置した独自の絵画表現を確立する。画面の両側にしばしば配する開いたカーテンのような図柄は、その奥に広がる部屋、海、宇宙といった杉戸の絵画空間に鑑賞者の意識を飛ばし、また引き戻す効果をもたらす。やがて絵画とそれが存在する空間の関係を探求するようになり、その姿勢は2010年代以降、建築家・青木淳との活動を通して一層濃いものとなった。実際の展示空間を訪れ、入念なリサーチをし、そこから逆算するように自身の絵画作品だけでなく身近な品、ときに大きな構造物を用いて再構成をするプロセスは、インスタレーションを展開するというよりは空間を整える行為に近い。2018年、平成29年度(第68回)芸術選奨、文部科学大臣賞受賞。

ラリー・ベル(1939–)
シカゴに生まれ、ロサンゼルスで育つ。1950年代後半にシュイナード芸術学校(現カリフォルニア芸術大学)で学び、初期は抽象表現主義的な作品を制作。その後、多角形を描き出したシェイプト・カンヴァスの作品や、木、ガラス、金属を用いてそれらを立体化させた作品を制作し、1960年代はじめには、真空めっきを施したガラスの立方体のシリーズに移行する。その後は、大きなガラス板を直角に連結したインスタレーションや、紙に真空めっきを施した「蒸気ドローイング」、家具も手がける。東海岸で勃興したミニマリズムから派生し、ロサンゼルスを中心とする、西海岸において光と空間を重視したライト&スペース・アートの作家のひとりにかぞえられる。現在はニューメキシコ州のタオスを拠点に活動。

さわひらき(1977–)
石川県金沢市に生まれる。イースト・ロンドン大学卒業、ロンドン大学スレード校で彫刻の修士を取得。2002年イギリスで発表した映像作品《Dwelling》が若手作家の登竜門である East International Awardを受賞し注目を集める。初期作品では、日常の空間に寓話的イメージを織り込む幻想的な情景を映し出し、多くの鑑賞者を魅了したが、次第に音響効果を加えたマルチスクリーンによる映像投影や、空間を活用しながら立体的に設営する展示方法へ移行。鑑賞する映像から、体験するインスタレーションへと作品を展開させ、映像表現の可能性を探求している。現在、ロンドンを拠点に活動。

サイ・トゥオンブリー(1928–2011)
ヴァージニア州レキシントン生まれ。ボストン美術館付属学校、ワシントン・アンド・リー大学、アート・ステューデンツ・リーグで学ぶ。ロバート・ラウシェンバーグの誘いでブラック・マウンテン・カレッジにも参加し、ロバート・マザウェルらのもとで学んだ。その後、陸軍での兵役を経て、1957年にローマへ移住。色鮮やかな筆触の散在する絵画作品を展開した。しかし、1960年代半ばには一転、グレー・ペインティングと呼ばれる作品で注目を集める。灰一色の画面に引かれた、一見無造作ながら繊細さを備えた線は、素材の物質性を通じて描く行為を想起させる。その後、1970年代後半以降の作品には、豊かな色彩や具象的なモチーフが現れるようになってゆく。絵画作品のほか、彫刻や写真も手がけた。