連詩の海をあとに−「連詩 見えない波α」跋にかえて 2018.03.14 〈おなじバスの停留所を降り、おなじ道を歩いた。 チャイムの鳴らない静かな学校や、交通量のほとんどない灰色の国道をゆく。ときおり、荷台に土やなにかをたくさん盛ったダンプカーが傍を疾りすぎて消えた。 あっけらかんと、好晴の午後。 だれもみ …
#49 2018.01.23 ミケランジェロ、天使のような 鑿使い、造化の代理人が、巨大な手で この海岸線をふたたび刻みはじめるのはいつかな わたしのともだち、みけらんは イタリア語も仏教もまったく知らずに 気に入らない景色が映る窓をぱらんぱらん破っていくんだよ 冬がい …
#48 2018.01.17 窓 息 継ぎ 息 継ぎ くぐもった イコン 頭上に一羽の鳩を飼い 瞳に金の魚を泳がせ 二匹の蛇が心臓で絡み合い 海の水を滴らせ 陸に上がった何者かの足跡が 点々と続く冬の浜辺 ―― 1+1=1 二千年来 謎は 謎のまま 1= …
#47 2018.01.10 あと すこしあるから うべなう島の羽衣を海岸列車は 視界をとざして鉄路をゆく 時間のほうが長かった 山と山の薄い時間にひたされ 海の慈声がとどいたってこれから先 だれも 気づかない木曜日 汽笛が朝の霜を消ちらすみたいに 木たちはふるえていた …
#46 2017.12.20 同一視のめがねの向こう に、あ、ほら極彩色の 気配に満ちた密林が見えてくる 生まれた陸のたぶん白いベッド より前の暗闇や脳みその奥底からやってくる たくさんの鳴き声やざわめき を覚えているわけではないわたしたち 今年もまた冬のさなかに立ち枯 …
#45 2017.12.13 「水底に溺れた月が沈んでいたよ、緑色に」 たしかにそんなことをひそひそ話しながら 長いアーケードを歩いてゆく子供たちがいる 「でもね、ほら、金魚すくいの名人のニーニャがね すらりと、百匹目の金魚として、月を空に跳ね上げたんだ それで今夜はス …