#03 葡萄と魚 2019.01.28 円卓会議の故郷、スレムスキ・カルロヴツィへ 七月の朝、八時三十分。小さな旅に出た。車がノビサドに向かう自動車道に入る。パンノニア平原が広がっていく。ハイウエイを右に折れる。スレム地方はドナウ河流域の肥沃な大地、イリグ村に入ると、ひまわり畑 …
#02 ノビサド、寒い日々 2018.10.10 ノビサドは、ドナウ河の水源より一二五二キロメートルから一二六二キロメートルの地点に位置し、人口は三八万人ほど。ボイボディナ自治州の州都で、セルビアでは第二の都市である。ベオグラードからパンノニア平原を北へ約七〇キロ、ノビサド行のバスは、一 …
#01 移動の詩人ベンツロビッチ、ラーチャ川からドナウへ 2018.06.21 人生の道は数多い ラーチャ川は、ドリナ川の小さな支流である。ドリナ川はサバ河に流れこみ、サバ河はドナウへ注ぐ。ベオグラードから車で四時間ほど西南へ走ると、ドリナ川の左岸にバイナ・バシタ市が現れ、そこから六キロ、ラーチャ川にそって山道を上る …
#00 はじめに 物語は流れはじめる 2018.06.19 ドナウにそそぐ水たち セルビアの小さな旅 水のある情景が好きだ。セルビア(旧ユーゴスラビア)の首都、ベオグラードに棲みはじめて三十七年ほどが過ぎた。セルビアは海のない国。海が恋しくなると、私はサバ川の岸辺へ向かう。我が家から十分ほど歩く …