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50代、単身、フリーランス、お金なし。
さらにコロナ禍でバイトをクビに―。
最低賃金ライターと国会議員・小川淳也さんが
繰り広げた“政治問答365日”
 

50代、単身、フリーランス、お金なし。
さらにコロナ禍でバイトをクビに―。
最低賃金ライターと国会議員・小川淳也さんが
繰り広げた“政治問答365日”
 


息が詰まるほど不安で苦しい生活が続くのは、私のせいなのだろうか?

まったく分からない“不安”の正体を知るべく降り立ったのは、永田町・衆議院第二議員会館。

この「分からない」を解決するために、国会議員の小川さんに直接聞いてみることにした―。


映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で話題の国会議員・小川淳也に、相撲・音楽ライターとして活動する和田靜香が、生きづらさの原因を直接ぶつけた汗と涙の激論の数々!

お金、住まい、税金、働き方、ジェンダーなど、人それぞれが抱える悩みを政治の力を使って解決へ導く一冊。


著者:和田靜香(わだ・しずか)

相撲・音楽ライター。千葉県生まれ。著書に『世界のおすもうさん』、『コロナ禍の東京を駆ける――緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(共に共著、岩波書店)、『東京ロック・バー物語』(シンコーミュージック)などがある。猫とカステラときつねうどんが好き。


取材協力:小川淳也(おがわ・じゅんや)

国会議員。1971年・香川県生まれ。東京大学法学部卒。1994年自治省に入省し、2003年に民主党より衆議院議員選挙に初挑戦するも惜敗。2005年に初当選。現・立憲民主党所属の衆議院議員(5期/2021年7月現在)。レンチンした「おあげさん」が好き。

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対談― 01 ―女性と政治

「道がないから、自分らでブルドーザーでガーッといかなあかんのです」

そう答えるのは、立憲民主党副代表の辻󠄀元清美さん。独身ひとり暮らしの不安から総選挙の争点まで。辻󠄀元さんと著者の和田靜香さんが、「女性と政治」を語り尽くします。

ピースボートで学んだ「夢の叶え方」

和田 わたし、音楽評論家の湯川れい子の弟子だったんです。辻󠄀元さんがピースボートをやってらしたころ、よく四谷にあった湯川の事務所にいらして、お会いしてました。

辻󠄀元 あ、そうなんだ。湯川さんはわたしのお姉さんですよ。何度かピースボートにも乗っていただきました。

和田 小川淳也さんにも「お姉さん」と呼ばれてるし、勝手に親しみを感じてたんですけど、一度もお会いしたことがなくて、実は辻󠄀元さんのことあんまりよく知らなかったなと思いました。ピースボートを大学在学中に立ち上げられたとか……。

辻󠄀元 わたしもようあんなことしたなって思います(笑)。早稲田の教育学部にいて、将来は学校の先生になりたいなってなんとなく昔から思ってたんだけど、ちょうど1982年に教科書問題というのが起きたんですよ。当時、文部省が教科書の記述について、「侵略」を「進出」に書き換えさせようとして国際問題になって、連日、新聞に載ってたんだけど、わたしはどっちが正しいか自分ではわからなかったわけ。社会科の先生になりたいのに歴史のこと知らんやんか、わたしはアホやんかと気づいたわけですね。それで大学の友達4人で「アジアに行ってみよう」っていう話になったのが始まりです。

和田 1億円の船をチャーターされたんですよね。

辻󠄀元 当時、世界を航海できる外航客船って日本に2隻あったんですよ。うち1隻がにっぽん丸で、商船三井客船が所有してるから、借りようと思って会社に行ったんです。最初は全然相手にされなかったんだけど、しぶとく何度も行ってたら、朝日新聞に取材されたんですね。今度はその記事を持って行って、「若者が平和のために立ち上げた企画を御社が蹴ったみたいに見えたらまずいんじゃないですか?」とか、「アジアの国々を平和の船で回るのはイメージアップにもなるのでは?」とか、「誰も使わない台風シーズンに貸してください。動かしたほうが得ですよね?」とかなんとか、いろいろ言って交渉したんです。

和田 台風シーズン(笑)。9月2日出航ですものね。交渉に使う言葉がうますぎます。

辻󠄀元 新聞に載っちゃったのが痛かったみたいで、「料金を払えるんだったら貸してあげる」と。一日600万円。20日間で計画してたから、1億2000万円です。そこでわたしは「できない」とは思わなくて、ひとり20万円の旅費なら、600人集めたら1億2000万になると。こういう呼びかけに答える「変人」は600人くらいいるんじゃないかと思ったんです。

和田 めちゃくちゃ楽観的な見通しですね(笑)。

辻󠄀元 そこから値切り交渉が始まるんですよ。「600万は定価ですか?」と聞いたら「そうだ」って言うわけ。「年中600万円ですか?」と聞いたら「そうだ」と。「それはおかしいですよ。旅行もお盆とかお正月は高いけどオフシーズンは安いでしょ。誰も借りない台風の季節なのに、なんで夏休みやクリスマスと値段が一緒なんですか?」と(笑)。そうしてちょっとずつ値下げしてもらって、最終的には期間を半分の10日に減らして、3500万円まで下げてもらったんです。

和田 3分の1以下! すごい!

辻󠄀元 「値切りの清美」とか言われましたけど、わたしの根本は商売人の娘なんです。実家は洋服屋もやってたし、クリーニングの取次もやってたし、美容院もやってたし、最後はうどん屋も。大阪では値切るのは当たり前だったんです。で、3500万にしてもらって、人集めを始めたんだけど、165人ぐらいしか集まらなかったんですよ(笑)。借金しまくったけど全然足りなくて、出港の1週間ぐらい前に「もうちょっとなんとか」とお願いしに行ったんです。そしたら「会議に諮るから、下の喫茶店で待っててくれ」と。そのときわたしが言ったのは「わたしたちには何もありません。売れるものは将来だけです。賭けてください、わたしたちに」って。

和田 すばらしい(拍手)!

辻󠄀元 下の喫茶店で2時間ぐらい待ってたら降りて来はって、「なんぼ払えんねん」って聞かれて「2000万」って答えたら、結局2300万にしてくれたんですよ。

和田 えー!

辻󠄀元 それで横浜の大桟橋から出航して、グアムとかテニアンとかサイパンとか硫黄島とか、太平洋の島々に行きました。これには余談があるんですけど、後に衆議院議員になったじゃないですか。国土交通副大臣になって、商船三井客船の元社長さんとお会いしたときに、わたしの顔を見た瞬間に「2300万円でしたね」って(笑)。それほど強烈な印象やったらしいです。

和田 学生時代から勇気があって交渉に長けていたんですね。今のお話で、今日用意してきたすべての質問の答えが出てしまった感じです。

辻󠄀元 どこかの組織の紐つきになって口を出されるのは絶対にイヤだったんですよ。わたしは個人の意志や自立を大事にしたいし、その集まりで世の中を変えたいから。当時の平和運動は組織動員が主流だったけど、それが嫌いだった。そういう運動はダサい、暗い、難しい。自分も楽しみながらいろんな人と手を組んで世の中を変えていけるような、新しいムーブメントを作りたかったわけです。

和田 なるほど。苦しくても独立独歩ということですね。

辻󠄀元 2回目は中国に行くことになったんです。当時はまだ冷戦真っ只中で、今みたいにすぐ行かれへんから、なんとかツテをたどって中国に交渉しに行ったら、ちょうど『鉄腕アトム』が流行ってて、ニセモノのグッズをいっぱい売ってたんですよ。それを見て「手塚治虫さんを連れてくる」って言ったら受け入れてくれるんじゃないかと思いついたの。

和田 発想がすごい。

辻󠄀元 石坂啓ちゃんっていう友達が手塚さんのところでインターンをやってたっていうから、彼女に紹介してもらってマネージャーに会いに行ったんです。もちろん断られたんだけど、しつこく通ってたら、たまたま手塚さんが外出されるときに出くわしたわけ。そこにバーッと駆けつけて「一緒に中国に行ってください。中国と日本の若者で不戦の誓いをしたいんです。向こうでは鉄腕アトムが流行ってて……」ってまくし立てたら、「今から出かけるから、車の中で聞こう」って言って車に乗せてくれたの。わたしと啓ちゃんと。それでまた話し始めたら、5分も経たないうちに「僕、行きます」って。

和田 えーっ! 信じられない!

辻󠄀元 「僕の父は職業軍人で、僕も子供のとき中国にいました。日本は中国を侵略して、たくさんの犠牲者を出した。いつか中国に何かしなきゃいけないと思っていました。自分が役に立つのなら行きます」と。「あの、手塚さん、実はわたしたちは貧乏で……」とかゴニョゴニョ言い始めたら、「あ、旅費は自分で払いますから」って。

和田 さすが大物ですね。言ってみたい。

辻󠄀元 かっこいいでしょ? 〆切をいっぱい抱えていらっしゃったので乗船は叶わなかったんですけど、飛行機で上海に来られて、日中不戦の誓い漫画大会というのをやって、孫悟空の大家と呼ばれた漫画家さんと、孫悟空とアトムの絵を共作されたんです。それ以降みんな目の色が変わりました。前はどこにビラ持って行っても怪しまれてたのに。

和田 そこからピースボートは順調に?

辻󠄀元 そうでもないんだけど(笑)、やりながら気づいたことがあるんです。夢って簡単には実現しないけど、わたしはやって失敗したならともかく、やらないで後からクヨクヨするのがとにかくイヤなんですよ。だから夢はまず言葉にする。言葉にするとそれはやがて意志になり、意志は行動を生む。行動からは必ず連帯が生まれます。手塚さんが力を貸してくださったようにね。夢の実現にはそういうプロセスがあるんじゃないかと思って。

土井たか子氏に誘われて国会議員に

和田 政治家に転身されたのは土井たか子さんから誘われたことがきっかけですか?

辻󠄀元 それからもピースボートの活動をずっとやってたんですよ。1995年に阪神・淡路大震災があったときはボランティアをしたりね。土井たか子さんのことはその前から存じ上げてたんですけど、震災の前に旧社会党が分裂したんです。それでみんな民主党に行っちゃったもんだから、1996年の10月1日に、社民党の党首に復帰されたばっかりの土井さんから、わたしと、今は世田谷区長をやってる保坂展人さんと、こないだまで宝塚市長だった中川智子さんの3人に声がかかったんです。8日から選挙だったから翌日までに返事しろって言われて(笑)、ピースボートにご家族で乗船された経験のある筑紫哲也さんに相談したりして「やります」って言って、比例近畿ブロックで出て20日に初当選しました。

和田 (拍手)。さっき「個人の意志」を大事にしてるとおっしゃいましたけど、そのときからそういう理念で?

辻󠄀元 そうですね。平和運動とか政治をタブー視する文化が日本にはあるじゃないですか。それを打ち破りたかったんですよ。選挙も「政治的自立意志」っていって、自分の意志で選挙ボランティアをやってみよう、政治をやってみようという人は手伝ってください、って呼びかけたんです。

和田 市民ボランティアが辻󠄀元さんを国会に送り込んだんですね。

辻󠄀元 続々と集まってくれましたよ。その少し前に村山富市さんが自社さ政権で総理大臣になってたから、めちゃくちゃ批判されて、わたしも「裏切り者!」とか言われるわけですよ。それで、演説するときに白い模造紙を貼ったボードを持って行って「社民党の嫌いなところ書いてください」と。それを選挙事務所に貼って「これを全部変えてみせます! だから当選させてください!」って、学生のときの「わたしの可能性に賭けてください」と同じことをしたんです(笑)。

和田 批判されることを逆に利点にするアイディア力がすばらしいです。発想の転換ですね。でも、女性であることでイヤな目に遭うみたいなことはありませんでしたか?

辻󠄀元 当選してからいろんな会合に顔を出して「社民党の辻󠄀元と申します」って言っても「秘書はあっち、あっち」みたいな感じでした。政治家といえば男性がやるもので、若い女性は秘書っていうイメージだったんですね。有権者からも、自分が男性だったらあり得ないような罵声を浴びせられたり、セクハラっぽいことを言われたり。そういうことはよくありますね。逆に、いろんな役職とかプロジェクトに「女ひとり入れとかな、またブーブー言われるから、辻󠄀元でも入れとけ」みたいな(笑)。これも腹立つやん。わたしの能力が評価されたんならいいけど……。

和田 数合わせですもんね。

辻󠄀元 誰でもいいわけですよ。ものすごく違和感がありましたね。

和田 相談できる人はいなかったんですか?

辻󠄀元 土井さんとは話してました。「社会党時代も苦労したのよ」っていつも言ってましたね(笑)。「誰も残らないじゃない、女の人は。それを変えたかったから、党の反発はあったけど、わたしは清美さんたちを入れたのよ」って。

和田 辻󠄀元さんを入れることにも反発があったんですか。

辻󠄀元 そらありますよ。わけのわからない市民活動家をいきなり候補者にするわけでしょ。選挙に出たい男性たちは他にもいたわけだから。最初に比例区で当選した後も、社民党の大阪府本部には入れてもらえなかったんですよ。「僕たちは認めてませんから」って。だったら次の選挙で比例じゃなく選挙区から出て、自分の力で勝ってやる、そうすれば認めてくれるだろうと。それで必死でやって、731票差でトップ当選したんですよ。それからみんな黙りました(笑)。

女性閣僚が半分になる日をめざして

和田 辻󠄀元さんの活躍が目立ち始めると、今度は世間やメディアの風当たりが強くなりますよね。小泉総理大臣(当時)に「総理! 総理!」と連呼されたときとか。質疑の内容なんて全然伝わらないから、わたしみたいに政治に関心のなかった人間は「ワーワーうるさい人」みたいなイメージだけ植えつけられてました。そういうことについて違和感はありましたか?

辻󠄀元 常にありますよ。主にテレビの報道は一瞬の場面を切り取って面白おかしく取り上げるので、質疑の内容、全体像はわかってもらえない。それは今も不本意に思ってます。「いつも反対してる」とか「怒ってる」みたいなレッテルを貼られてね。でも、初当選してすぐ自民党の人たちと一緒にNPO法を作ったり、議員立法で被災者生活再建支援法を作ったりと、超党派とか官僚との協働でたくさん政策を立案してきたんですよ。追及よりも交渉や調整のほうが向いてると思います。

和田 全然そんなの伝わってきてないですよ。

辻󠄀元 DV防止法とか児童虐待防止法、あと児童買春・児童ポルノ禁止法なんかは谷垣禎一さん、野田聖子さんと一緒に作りました。野田さんたちとはこないだから政治分野における男女共同参画推進法も一緒に作ってます。女性議員を増やすための法律ですね。よいことには党を超えて賛成、おかしなことには立ち向かう。これがわたしのモットーですし、ずっとそうしてきました。でも報道は立ち向かってるとこばっかりで、そのイメージがなかなか払拭できないのがわたしの悩みですね。

和田 それはメディアの責任ですよね。そこが変わらないと女性が議員になりたいってなかなか思ってくれない気がします。

辻󠄀元 ですよね。だから『国対委員長』(集英社新書)という本を書いたんですよ。与野党問わず第1党で女性の国対委員長はわたしが初めてで、最初は「女に務まるのか?」って言われましたよ。自民党の国対委員長室に行くとね、委員長、副委員長、党職員、ズラーッといるわけですよ。ぜーんぶ男。どこに行っても女はわたしひとりです。

和田 今、辻󠄀元さんは予算委員会の筆頭理事ですよね。それも女性初めて?

辻󠄀元 そうです。参議院は森ゆうこさんで、衆参ともに女性ですね。お飾りじゃなく、国体とか予算とか、委員会を実質的に動かしていくポジションに女性がつくようになって、少しずつ政治の文化も変わってきてるなと思います。

和田 辻󠄀元さんや、自民党でいえば野田聖子さんとか、女性議員たちが働きかけたから実現できたことなんですか?

辻󠄀元 粘り強く生き残ってきたからでしょうね。野田さんと高市早苗さんとわたしは同学年なんですよ。わたしは初当選から25年で、彼女たちは28年かな。与党でいちばん古いのがその二人で、野党ではわたし。3人わりと仲よしで、ちゃんづけで呼び合うんですよ。考え方は違うけど、男ばっかりの世界で何十年もの間、第一線で存在感を保ちながらやってきて、なんとなく連帯感があるというか。

和田 みなさんが道を切り開いてこられたんですものね。

辻󠄀元 道がないから、自分らでブルドーザーでガーッといかなあかんのです。「どすこい、どすこい」じゃないけど、徳俵でなんとか持ちこたえてね(笑)。今も枝野(幸男)さんには「“枝野政権ができたら閣僚を男女同数にする”って早く言え」って毎日のように言ってます。

和田 それを言ったら票が抜群に伸びると思うんですけどね。

辻󠄀元 それぐらいはやらなきゃねぇ。また今日も言います(笑)。

和田 閣僚が半分女性になるって聞いたら、女性はもっと投票に行きますよ。

辻󠄀元 わたしの地元に三島郡島本町っていう京都との府境の町があるんですけど、4月に自治体選挙があって、男女同数の議会を達成したんですよ。やっぱり政治家は口で言ってるだけじゃなくて、自分の足元から実現させていかないと説得力がないからね。

和田 すごい。そこに住みたいです。

辻󠄀元 少子高齢化が最大の政治課題になってるけど、これはほとんど女性の問題なんですよ。子育てと仕事の両立が難しいとか、非正規の7割が女性で、平均収入も男性の約7割しかないとか、介護を担うのも女性が大部分じゃないですか。平均寿命が長いから高齢の独居女性も増えてるしね。女性の生涯につきまとう問題をひとつずつ解決していけば、男性も含めてすべての人が暮らしやすい社会に必ずなるんですよ。政治の意思決定の機関に女性が3割以上いる国は経済成長率も高くて、財政赤字も少ないって言われてるし。

和田 いいことしかないのに、なんでそうしないんだろう……。

辻󠄀元 選択的夫婦別姓も、別に誰も不幸にならなくて、幸せになる人が増えるだけだもんね。最近わたしは同性婚の実現も訴えてますけど、すべての愛し合う人が平等に結婚できるようにしたいんですよ。そういう政策を実現させていくことが、ひいては社会の閉塞感を打ち破って活気を生み、経済も成長させていくんです。商売人の娘やから、何でも「儲かるかどうか」で考えちゃうんだけど(笑)。

総選挙の争点と、辻󠄀元さんの幸福論

和田 辻󠄀元さんは今回の選挙の最大の争点は何だと思われますか?

辻󠄀元 ひとつは格差の解消。富が一極に集中してて、今はすっごい不公平な社会になっちゃってるから。小さな国家よりもお金持ちのスーパーリッチと言われるような人や組織がある一方で、食べていけない人がどんどん増えてる。国内も同じで、コロナがその状況に追い打ちをかけてるんですよね。だからアメリカのバイデン大統領が言ってるように、富裕層には「もうちょっと税金払ってください」ってお願いして、庶民は減税。税による社会連帯です。富める人がしんどい人を助けて一緒に生きていく。本来あるべき公平公正な社会に近づけていくためには、多様な生き方も認められるべきだから、選択的夫婦別姓とか同性婚とか、外国人との共生とかも必要になってくる。それをしっかり訴えていきたいと思ってます。

和田 頼もしいです。わたしとしては今回、立憲民主党が住宅政策を大きく掲げてくれたのがありがたいです。ひとり暮らしだし高齢だしフリーランスだし。

辻󠄀元 わたしと一緒やん(笑)。老後、不安でしょ。

和田 老後どころか今が不安で……特に東京では家を借りられないぐらいですから。

辻󠄀元 20年ぐらい前にイギリスで低賃金の若者向けの公営住宅政策を見たことがあって、国土交通副大臣のとき、東京に100万戸の若者向け低家賃の公営住宅を作ろうっていう政策を作ったんですよ。実現はしなかったけど、住む所があって初めて、自分の人生や生活を築くことができるし、心の安定も得られるわけじゃない。なんでそこにこだわるかっていったら、自分がそうだったから。6畳ひと間に親子4人で住んでたし、学生時代も家賃1万9000円の風呂なしトイレ共用の4畳半に住んで、外にあった水まきホースで髪を洗ったりしてたしね(笑)。わたしも独身でひとり暮らしだから、不安ですよ。4年に一回選挙があるし、選挙になったらお金もかかるしね。

和田 「国会議員、選挙に落ちたらただの人」って言いますもんね。

辻󠄀元 菅(義偉)前総理が「自助・共助・公助」って言ってたけど、順番がおかしいんですよ。必要なのは、すべての人が「自助」で生きていけるための最低限の「公助」です。例えば労働法制も、放っておいたら弱肉強食になる。そこの規制をどんどん緩和していった結果、非正規で苦しい人がたくさんいるのが現状でしょ。雇用側に一定の規制をかけて「こういう条件で働かせなさい」とすることは、政治にしかできないんです。

和田 辻󠄀元さんと一緒に頑張ってくれる女性議員にもっともっと出てきてほしいです。

辻󠄀元 出てきてますよ。子育てしながらやってる人たちもいます。わたしの世代は何もかも振り捨てて私生活もなげうって頑張らないとできへんかったみたいなところがあるけど、下の世代の人たちはもっと自然体。いいことだなと思います。

和田 今日はありがとうございました。最後に本の中で小川淳也さんにしたのと同じ質問をさせてください。辻󠄀元さんにとって幸福って何ですか?

辻󠄀元 あー……(しばらく考える)。個人では心の平穏ですね。仮に食べていけなくなっても、「あの人、しんどそう」と思われても、自分の心がcalmでいられるってことかな。政治家としては、自分が子供のときにつらい思いもしたので、空腹とか虐待とかで泣く子供がいなくなってほしいですね。

構成:高岡洋詞 写真:野村玲央

辻󠄀元清美(つじもと・きよみ)

政治家。1960年、奈良県生まれ。衆議院議員(高槻市・島本町の大阪10区)。早稲田大学在学中に国際NGO設立。1996年、衆議院選挙にて初当選。2000年ダボス会議「明日の世界のリーダー100人」に選出。連立政権で国土交通副大臣、災害ボランティア担当内閣総理大臣補佐官就任。2017年10月、立憲民主党の結党時より同党の国対委員長を2年間務めた。立憲民主党副代表、衆議院予算委員会野党筆頭理事、NPO議員連盟共同代表。

推薦コメント

小泉今日子(俳優)

政治本なのに、すごく可愛いし、勉強になります。

星野智幸(小説家)

この本は、自分の不安を解決するために政治に関わってみようとする過程の記録です。わからないことをわからないと言える和田さんと、何の面識も知識もない和田さんを見下しも拒みもせずに対話できる小川さんだからこそ、一から積み上げることができた、歩みの記録です。あまたある政治本とは似て非なる、生きるドキュメンタリーです。

中島京子(作家)

これは、主権者がその代表である国会議員と「対話」する本だ。たとえそこに意見の違いや対立があっても、「対話」はなにかを生むのだと、希望を感じさせてくれる。最終的に、この「対話」こそが民主主義だと、著者は気づくのだが、その過程で読者も、お上にお任せ的な政治ではない、一国の主権者としてのふるまいとはどういうものか考えさせられる。

鮫島浩(政治ジャーナリスト)

国会中継がこれほど迫力あるものなら、NHKだけでなく民放もこぞって放送するに違いない。

川内有緒(ノンフィクション作家)

和田靜香さんは、毎日ただ必死に働き、日々の生活のちょっとしたことに幸せを見出す多くの市民の声を代表して、その生活の大変さや不安な気持ちを国会議員まで届けた。ずっと最低賃金のバイトをしながらギリギリの綱渡りで食い繋いできた和田さんだからこそ、自分のためだけではなく、大勢の誰かのために必死に食い下がり、私たちのことをちゃんと見てください、本当にキツいんです、考えてください、と言い続けられた。
しかし、この本はそれだけでは終わらない。小川さんの考えから学ぶことも大きい本だった。小川さんは常に解決策を考えている人である。労働の問題。税金のこと。辺野古とのこと。エネルギーや環境。そうか、そういうことなのか!
その小川さんは、こう言う。「特定の誰かと戦うんじゃなくて、弱さとか無知とか、構造的な背景と戦うんです」(小川さん)
そうなんだ、「これって私のせいですか」というタイトルが全てを物語る。いま生活が厳しいのは、私のせいでもあなたのせいでもない。社会構造のせいなんだ。時に私たちは、悲しみや無気力、怒りに支配されそうになるけど、その感情をぶつける先は個人や会社じゃなくて、社会の構造やシステム、政策であるべきなのだ。
責めるべき対象は、特定の誰かではなく、ましてや、自分自身ではない。そして、小川さんもまた和田さんから学んでいく。本当の市民の生活はいかなるものか。何が問題なのか。幸せとはなんなのか。
本を読む私たちが、二人が語る先に見るものは希望だ。まだ政治に期待してもいいのかもしれない。それを信じてもいいのかもしれないって。 この本にベストセラーになって欲しい。ただ、きっとこのまま行けばなるだろう。(予言)

松田奈緒子(漫画家)

うおお…一気に読んだ。そして泣いた。政治をわかろうと本を読んでも、カタカナが多くて、「ステイクホルダーって何?」とかいちいち調べてわかったような結局わかってない…を繰り返していた私。しかしこの本は、足を地につけて生活する人の言葉で書かれていて、私でもわかる。
そして、選挙の投票に行けば責務を果たしている、と思っていた自分を猛省した。この国をどうしたいか、一から考える本になった。
何より素晴らしいのは、著者の和田さんがどんどん成長していく姿、受け止める小川さんが素敵で、これ漫画化できるじゃん!松田洋子さん希望。ドラマにもできると思う。
ドキュメンタリーでありつつ、政治エンタメでもあると言う稀有な本で、感激しております。どうか多くの方に読んでもらえますようにと今もちょっと泣きながら思ってます。

木村友祐(小説家)

切望していた「政治」のかたち

和田靜香著、小川淳也協力『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた』(左右社)。頭の上に乗っかって動かない不安の塊の原因は何か、和田さんが自身の生存をかけて小川さんに聞いていく。小川さんは和田さんを「国民代表」ととらえ、全身全霊で答えていく。はじめは何も知らなかった和田さんが、次第に政治を自分の手に引き寄せていく様が圧巻だった。


政治とは政治家だけがやるものではない。生活者である自分たちが、自分や他の人々が今より幸福になるために自ら関わって考えていくものだということを、本書はまざまざと教えてくれた。例え前途が困難でも、解決の道筋が見えればそれだけで不安は消え、前向きに生きていけるのだと。


どうにも泣けて仕方なかったページがある。小川さんが和田さんの問いに泣きだして答える場面だ。和田さんは問いかける。時給850円でも、高齢で交通誘導員をしていても、どんな仕事だって達成感や喜びはあるだろう。「とはいえ、生活は苦しい。明日は見えない。そのときに政治家には寄り添った言葉をかけてほしいんです。今、おっしゃってくれたような。本当にみんなが欲しいのは、もちろんお金も欲しいけど、隣に座って背中をさするように慈しみの言葉を言ってほしい。今の政治には、それがない。その視線を、政治を司る人が持てたら、世の中はずいぶんと変わると思います。」「この方たちが選挙に行ってくれたら、世の中はだいぶ変わると思うんです。」


すると小川さんは、和田さんの言葉に自身の両親の姿を重ね、あふれる涙をハンカチでぬぐいながら答えるんだ。「自分なんか、振り向かれてないと思ってるよね。関係ないと思ってる。でも、この方たちから根が生えてきたような政治、その政治から人々が受け取るメッセージ、それを創っていくことができたら、本当に世の中が変わるかもしれませんね…。」


市井の一生活者と、国政にたずさわる政治家との対話がここまでできるんだと、和田さんと小川さんが見せてくれた。和田さんじゃなきゃ、小川さんじゃなきゃできないことだった。これは学生運動が終わって以降、暮らしからも芸術からも政治は無関係とされた長い空白を打ち破る、記念碑的な本かもしれない。ぜひ読んでほしい。


コロナに翻弄されるよりはるか前からぼくらが抱いていた不安感や閉塞感は、気候が明らかに変化しているのに、原発建屋が爆発して放射性物質が撒き散らされたのに、食べ物が小さくなっているのに、日々まじめに仕事しても将来設計が立たないのに、政治家が何も答えてくれないことに起因していたのかもしれないと本書を読み終えて気づかされる。ホラ、今だって総裁選のことばかりでしょ? 


複雑怪奇な腹芸とか、パワーゲームにいかに勝つかとか、端的にいえば「生活者をいかにだますか」しか考えない、そんなの「政治」なんかじゃなかったんだ。和田さんと小川さんが示して見せた、生活者と政治家が〝ともに考える〟関係こそ、本来の──、あるいは、これまでずっとぼくらが切望していた「政治」のかたちだったんだ。

陣野俊史(文芸評論家、フランス文学者)

和田さんの憤りを含んだ疑問は、私たちのモヤモヤそのままでもある。

辻山良雄(書店「Title」店主)

がっぷり四つに組んだ、誠実な言葉のやり取りだけで、なぜか泣けてくるだろう。
泣けてくるのは、あなたが知らずのうちにこの社会、政治から損なわれているから。
読んだあとも熱い残響がひびく、進行形のドキュメント。

ポルベニールブックストア

和田さんの体当たりエネルギーが凝縮されたこの本は、有権者の「課題図書」だと思います。

本屋ルヌガンガ

(本書で)明らかになるのは、なかなかに厳しいこの国の現状。今すぐにでも昭和モデルから転換しないとどうしようもないのに、色々なしがらみで変われないこの国のけっこう絶望的な姿。それでも、論点と課題が明らかになるという事は、どこか爽快な体験だ。視界が開けて、なんだか元気になってくるし、モリモリ勉強したくなる。

メディア掲載情報

刊行記念イベントレポート
「私は政治がわからない」

2021年9月1日に本屋B&Bにてオンラインで開催された刊行記念イベント「私は政治がわからない」。登壇したのは、本書で白熱した問答を繰り広げたライター・和田靜香さんと国会議員・小川淳也さんに加え、執筆中の和田さんの相談役を担っていた作家の星野智幸さん。

政治のプロと、不安を抱えるいち生活者との政治問答(小川さんいわく、デスマッチ)を生々しく記録したこれまでに類を見ないこの本は、どのようにして出来上がっていったのか。制作過程や裏話、読みどころなど、約2時間にわたって熱いトークが繰り広げられました。

和田さんが本を作り始めた当初のことを思い出して爆笑したり、小川さんがハンカチ片手に涙したり。文字通り笑いあり涙ありのイベントの様子をお伝えします。

何が分からないかも分からない!

小川:私の活動を追ったドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を和田さんがご覧になって、その感想やインタビュー記事を書いてくださったのが出会いです。その数ヶ月後、突然和田さんから一緒に本を作りたいと手紙がきて、まず初回の面談をすることになったんです。かなり熱意のこもった手紙を頂いていたので、よっぽど立派なプランとかアイデアがあるんだろうと思って待ち構えていたら、なんと、なんにもなかったんです(笑)。

和田:私、ほんとになんにも分かってなくて。たぶん、自分がなんにも分かってないっていうこと自体を分かってなかったんですよ。もうとにかく生活が不安で苦しくて「どこかになにかをぶつけないともうだめ!」っていうような衝動だけでいきなり行った(笑)。

星野:小川さんにならば、この不安をぶつけたらどうにかなるかもしれないという手応えだけはあったということですよね。

和田:そうですね。映画の件でインタビューに行った後、小川さんのYouTubeの動画をずっと見ていて、何かがもらえるような気がしたんですよね。じゃあ自分が何が欲しいのかっていうと全然分からないんですけど。それでただもうガーッと突き押しって感じ(笑)。そこから先どうなるかはあんまり想像してなくて。

小川:ほんとに手ぶらで、まったくノープランなんで、さすがに私もあの時はちょっと驚きました。こうしたいんです、ああしたいんですっていうのがくるんだろうと思っていたら「何もないんです、何も分からないんです」って、じーっと座ってるんですよ(笑)。これはどうしたもんかなと、苦し紛れに本を2、3冊紹介して「とりあえずこれだけ読んで」と。「読んで疑問に思ったり、もっと聞いてみたいことが出てきたらそれを書き出してください」とお願いするところから始まりました。

星野:そんなノープランの和田さんを見て、小川さんは正直なところどう思ったんですか。

小川:一緒に本を作りたいっていう思いだけはひしひしと感じました。それに、映画について書いてくださった時に、私にはない言葉の世界、感性の世界をお持ちだなということは分かっていたので。今はビジョンもプランも何もなくても、和田さんが真剣に取り組んでくださるんであれば私もそれに応えて、もしかしたら新しい世界観を生める可能性があるなと思いました。まぁ本当に大変な「デスマッチ」が一年近く続いたんですが、出来上がりを見てやっぱりさすがだなと。どれだけ私が努力しても届かないところに和田さんの言葉だったら届くかもしれないという期待と希望を今感じています。

先生と生徒じゃない、これはデスマッチだ

和田:まず小川さんが紹介してくださった本を読んで、それを理解するために他の本もたくさん読んで。それで質問を用意して行くっていうのが2回目以降の面談だったんですが、最初私はただ聞いているだけで、小川さんがお話ししてくださるみたいな感じでした。

小川:僕もけっこう忙しいので、まず一通り私が考えていることを駆け足で伝えなきゃと。質問の数もすごかったので、最初は機械的な作業でしたね。

星野:僕が印象に残っているのは、統計不正の件に関して和田さんがものすごい調べて資料を作って、それを送ったら小川さんが褒めてくれたというところ。小川さんの反応がそのあたりからちょっと変わってきたというようなことを和田さんは言っていました。

小川:あれは正直すごいと思ったんですよ。統計ってすごく専門的な話なのに、あの問題をこれだけ追いかけてすごい勢いで整理して、逆にぶつけてくるっていうのは、この努力は偽物じゃないな、本物だなと。本気度が伝わってきた。それに、その前後ですかね、ある思いにたどり着いたんですよ。つまり和田さんのようになんの知識もない、本気で考えたこともない、でも不安でしょうがなくて悩んだり迷ったりしてる、それは多くの方がそうじゃないかと。そんな人と対話できるとしたら、私は本望だと。それがまさに自分のやりたいことだと。だからそこから先は、和田さんは国民の代表だと思うようになって。いずれ私は多くの国民とそういう対話をしなきゃいけない。そしたらまず和田さんに稽古つけてもらおうっていう心持ちになっていきました。

星野:それは和田さんも感じていたんですよね。

和田:そうですね。だんだんその場が盛り上がってきたというか、熱くなってきたというか。それをすごく感じて、自分も余計がんばらなきゃいけないって思うんですけど、どうやったらいいか分からない。どこを掘ればいいのかも、そこに何があるのかも。例えば財政の話をしようと思っても、財政っていう言葉をググることから始まるんですよ。どこをどう掘ったら自分の疑問とか、自分の感じてる不安と繋がるのかがよくわからない。かといって小川さんにいきなり「財政ってなんですか」って聞くわけにもいかない。

小川:でもそれに近かったよ、最初は。

星野:いやぁ、よく付き合いましたね(笑)。

小川:ほんとにね(笑)。でも途中から私もすごく意味を感じてましたから。和田さんはものすごい馬力で追いついてくるし。ある時「ここは正解を教える先生と教えてもらう生徒の場じゃないよね」って私の方から言ったんです。そもそも正解はない。でも考える材料だけはあるんですよ。私はそういう意味ではプロとして、30年考え続けて、調べ続けているわけです。和田さんは和田さんで、悩んだり壁にぶつかったり切ない思いをしたりしながら人生を重ねてきている。そこがまともにぶつかった時に、どういう化学変化が起きるんだろうと。この社会で生きている人は例外なくみんな同じ構造問題を抱えてるので、ここはそれを一緒に考える道場であり、デスマッチであり、もう死闘、格闘の場だと。だから先生と生徒じゃなくて、一緒に考えるっていうのが正しいスタンスだということを言ったんです。

和田:それを聞いた時めっちゃうれしくて。私もまさにそれがやりたいことだよなと思いました。

たよりない「私たち」への言葉がほしかった

星野:たしかに最初は和田さんが教えを乞うという感じですが、住宅問題の話に入るあたりから変わってきますよね。和田さんの方が、まさに渦中にいる者としての言葉を小川さんの政策の言葉に対してぶつけていく。政策が正しいか間違っているかじゃなくて、和田さんは現場の人たちがどんな絶望的な感触でいるか、それを一生懸命政治の現場に伝えようとします。

小川:あのストレートな問いかけと熱意、その背景にある本物の不安とか不信を受け止めた時、これだけ専門家を自負してきた私もある意味白旗を上げざるを得なかった。私の発想が至っていなかった、現実の政策を私がむしろ正しく理解しきれていなかったと言って、和田さんに謝りました。

星野:あそこは前半のクライマックスですね! 和田さんは自分の思いが政治の現場の人に通じたっていうなにがしかの手応えを感じたと思うんですが。

和田:正直あんまり手応えとかわからないんですよ。ほんとにただ素直に、わかってくれてうれしいなって、それのみ。

星野:この本、特にそのあたりを読んでいて、まさに有権者と政治家が政治を作っている瞬間を目の当たりにしたと思ったんですよね。その過程を単にドキュメントしたというよりも、もっと生々しくここに「ある」と感じられるところ、そこにこの本が作られたことの意義と、類書がないと感じる理由があるんです。読むとみんなそう感じるんじゃないかなと思います。それが、誰でも政治って参加できるんだということに繋がる。この後、非正規で働く女性に関しての思いを和田さんが小川さんに伝える場面もありましたよね。そこが後半のクライマックスに当たると思うんですが。

和田:これはほんとに悩みました。非正規雇用の話をした時に、小川さんがそれを解決するための政策はこうだって話してくれたんですけど、ほんとはその場で、自分も含め非正規でずっと働いてる人たちに対しての言葉がなにか聞きたかったんですよね。でも、なぜかその時は聞けなくて。たぶん、小川さんに「そんなのわかんないよ」って言われるのが怖かったんでしょうね。そこはまだ小川さんを信じきれていなかったということだと思うんだけど。でもやっぱり帰ってきてからもずっともやもやしてたので、星野さんにメールで相談して。そしたら星野さんが絶対聞いた方がいいよって、政治家が私たち市民に寄り添って言葉をかけてくれることが一番政治に近づくことで、それはすごく大切なことだって言ってくれたんです。小川さんの秘書の八代田さんにも相談して、小川さんに手紙を書きました。

小川:たしかにそれまでは、どうしても政策の話ばかりになっていましたね。限られた時間だし、質問もめちゃくちゃ多いし。でも、あのお手紙を頂いて、そうか、そういうことかと。和田さんはそこに対して全幅の信頼には至らない心境の中で、いろいろやりとりをされてたんだなということがよく分かりました。でも、だとすると、和田さんはなんの不安も抱かなくていい。和田さんの言葉を借りれば「たよりない人生」、それは私にとって他人事ではないんです。それはパーマ屋の店先に70過ぎて立っている私の母であり、戦争から帰って自転車の荷台に下着を積んで行商して4人の子供を育て上げた私の祖父であり、小さい頃は魚肉ソーセージを1本まるかじりすることが夢だったって言う私の父であり、私自身のことなんです。そういうことなんですよ。そういうことの積み重ねで、世の中は、できてるわけでしょ。そういう、ほんとにこう…… ささやかな人生という言い方をしていいのかどうかわかりませんけども、みんなそうで、その尊さとか、その愛しさとか、そのなんていうか切なさっていうんですかね、それが政治のテーマじゃないはずないんですよ。それが政治なんですよね。(ハンカチで涙を拭う)

民主主義はすごく楽しい

星野:この本を通して僕は、和田さん流の民主主義っていうのをすごく感じました。この本を作る過程で、先ほど名前の出た八代田さんにはそれこそおんぶに抱っこですよね。それに本に出てくる僕とか、ライターの金井真紀さんだとか、「つくろい東京ファンド」の小林美穂子さんだとか、あと『なぜ君は総理大臣になれないのか』の大島新監督、プロデューサーの前田亜紀さん。そういう人たちに和田さんはずっとこの本の話をいっぱいしてるわけですよね。

和田:そうです。辛くなったら弱音を吐きまくって、メールしまくり(笑)。

星野:だから実はこの本には、小川さんと和田さんだけじゃなくて、その外側で和田さんと一緒に考えてきた人たちも関わっているんですよね。そういう小さなコミュニティの民主主義っていうのが、和田さんによってできている。

和田:そうかもしれない。

星野:その和田さん流の民主主義のあり方は、考える主体がベースじゃなくて、共感がベースになってるんですよ。だから、和田さんがそういう話をする時に、テーマを議論するんじゃなくて、何が苦しいだとかこういうことで希望が見えたとか、そういう話をするんです。これまでのように、意見の違う人どうしが議論しながら作っていくのが民主主義って言った場合には、考えることの主体だけが重視されて、共感やそういった苦しみの現場っていうのがどこかで抜け落ちちゃう、置き去りにされちゃうと思うんです。それを、和田さんは今回こうやって小川さんにぶつけて、周りの人も巻き込んで、民主主義を作ったんじゃないかと。これは本当にこれからの民主主義にとってすごく必要なことで、それがこの本の価値じゃないかなと僕は思いました。

和田:それで言えば、民主主義はすごく楽しかったですねぇ。小川さんと話すその場ももちろん楽しいんですけど、それをまた帰ってきて「今日小川さんこんなこと言ってたんだよ」って話をみんなに振るわけですよ。するとみんなが、私が小川さんから受け取った1っていうことを3くらいに膨らませてくれたりするんですよね。

小川:この巻き込む力はすごいし、最終的には和田さんの人徳なんでしょうね。さっき星野さんが「和田さんに巻き込まれてる時の僕は、洗濯機で回されてる洗濯物みたいなものです」とおっしゃってたんですよ(笑)。

和田:じゃあ、私が洗濯機なの?

小川:いや、和田さんは洗濯機じゃないでしょ。回ってるいちばんでっかい洗濯物ですよ(笑)。巻き込まれてるハンカチとか靴下とかがまわりにいっぱいいて。

星野:結局小川さんも巻き込まれた方ですよ。これはどうしたものかって最初のうちは思われてたのがここまできたんだから。そういうふうにしていけば、和田さんみたいに政治について考えたり対話したりすることは誰でもできると思うんですよね。いや、もちろん和田さんになるのはなかなか難しいですけど、要するに専門性がなきゃ政治や民主主義に関われない、語れないというわけじゃないってことですよね。

小川:そこですよね、そこです。

どうか諦めずに一緒に歩いてください

小川:もう一つ僕が印象に残ってるのは、ある頃から、これって和田靜香の成長物語だなって思い始めたんですよね。そしたら、僕の東京後援会でお世話になってる若手の方から「いや、これ小川さんも成長させてもらってますよ」って言われて、ちょっとハッとしました。だからやっぱり、稽古つけてもらったってことですよね。でも私の立場から言えば、それでは済まないんですよ。つまり、この本を作る過程は思考実験の場なんです。でも、これからはそれを行動実践に移さないといけない。その時和田さんと向き合って悩んだように、今度は多くの国民のみなさんと話し合って、対話に対話を重ねて、一緒に悩みながら、しかし一つの結論を生み出して方向性をとっていく、決断していくと。果たしてやれるか、それは僕の問題であると同時に、やっぱり日本国の問題であり、日本国民の問題であり、国民自身で次の時代を選びとっていかないといけない。

和田:私から小川さんにお願いしたいことが一つだけあるとしたら、本を作り始めた最初の頃に小川さんが言っていた「どうか諦めずに一緒に歩いてください」ということ。私にもそうしてくれたように、ずっとこれをやってほしいなと思います。新しいリーダーって、「俺についてこい!」じゃなくて、一緒にみんなで手を繋いで歩いていく人だと思うんですよね。

小川:並走、伴走ですよね。

星野:うんうん。そのかわり有権者も一緒に外に出て歩きましょうよって、その覚悟や努力が必要ですよね。それもこの本できっと感じてもらえると思います。

小川:そう、それが最大のエネルギーなんですよ。この本にはそこに着火、点火する可能性があるよね。

星野:先陣を切って突破するのは和田さんみたいに飛び抜けたエネルギーのある人だけど、この本を読んだ人はもうちょっと簡単にそこにたどり着けると思います。

文・新原なりか

和田靜香(わだ・しずか)

相撲・音楽ライター。1965年千葉県生まれ。著書に『世界のおすもうさん』、『コロナ禍の東京を駆ける――緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(共に共著、岩波書店)、『東京ロック・バー物語』(シンコーミュージック)などがある。


小川淳也(おがわ・じゅんや)

国会議員。1971年香川県生まれ。東京大学法学部卒。1994年自治省に入省し、2003年に民主党より衆議院議員選挙に初挑戦するも惜敗。2005年に初当選。現・立憲民主党所属の衆議院議員(5期/2021年7月現在)。


星野智幸(ほしの・ともゆき)

作家。1965年アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。2年半の新聞社勤務後、メキシコに留学。1997年『最後の吐息』で文藝賞を受賞しデビュー。2011年『俺俺』で大江健三郎賞、2015年『夜は終わらない』で読売文学賞、2018年『焔』で谷崎潤一郎賞。近著に『呪文』『だまされ屋さん』『植物忌』などがある。

100冊プレゼントキャンペーン
『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』

このたびのプレゼント企画は、100冊に達したため終了いたしました。
たくさんのご応募、まことにありがとうございました!

このたび、本書の刊行を記念して、プレゼントキャンペーンを実施いたします。以下の「申し込みページ」よりご応募いただいた先着100名様に、書籍代・送料無料で本書を一冊お送りいたします。

本キャンペーンは「この本を、最低賃金の方は買うことが出来るだろうか?」という小川議員のひとことがきっかけで実現しました。金銭的な理由で本書の購入をためらわれる方はもちろん、普段なかなか本を読む機会がない方や、左右社の本を手にとったことがない方にも、ぜひお届けできればと思います。

キャンペーン申し込みページ

本書のタイトルの通り、著者の和田靜香さんは、ライター業のかたわら最低賃金でアルバイトを続けてこられましたが、コロナ禍で飲食店のアルバイトを解雇されてしまいました。

誰にとっても、先の見えない不安な日々が続いています。

このキャンペーンを通して本書を手にとってくださった方々が、たとえその不安から完全に自由になることはできなくても、モヤモヤの原因を以前よりはっきりと認識できるようになったり、不満を声に出せるようになったり、「仲間がいる」と心強くなれたりしたら、弊社一同大変うれしく思います。

ご応募お待ちしております。


※お一人様一冊となります。100冊に達し次第応募を締め切らせていただきます。何卒ご容赦くださいませ。
※本のご感想や和田靜香さんへのメッセージなどございましたら、書籍に同封されているはがきにご記入をお願いいたします。

感想コメント

私も日本に住む者として政治にしっかりと向き合っていきたいと思う。本書の政治問答ブックリストも教養を深めるために読んでみようと思いました。

Sさん
(2021年10月3日)

失礼ながら、政治家の書かれた本を買おうとは思ったことがなかったのですが、この本なら読みたい!と思いました。和田さんのすなおな気持ちに終始共感しながら、応援する気持ち、いっしょにがんばらなきゃと思いながら、読みました。

Kさん
(2021年9月28日)

和田さんのユーモアに笑い。小川議員の言葉に涙をポロポロこぼしたりしながら71歳の老人にもまだ出来る事があると教わった様に思いました。若者から年寄りまで一人でもたくさんの方に今、読んでもらいたい本でした。

Mさん
(2021年9月27日)

政治家のお仕事は本で初めて分かることが多かったです。和田さんの力強さにも魅せられました。

Fさん
(2021年9月22日)

2日間くらいで一気読みしました。すごく胸がジーンときたし、一方で何が問題なのか、小川さんの具体的な解説、問題提起で、私自身もっと学ばねば、と思いました。環境と人工問題が大きく相関していること、ちゃんとわかっていなかったのでガンと頭が殴られたような気になりました。

Iさん
(2021年9月17日)

医療従事者で勤め先がコロナ専門病院になってしまい、職場でも人との接触を避けるようになり、休みでも友達にも会えず、本当に殺伐としています。この先に希望が持てなくて、そんな中メディアから流される報道にはなんでこんなひどい事が罷り通るのか?とガッカリするやら腹が立つやら。なんなのコレ?と思っていた中でこの本をいただけたこと、本当にありがたく思います。何が起きているのか、良いことも悪いこともキチンと説明してもらえることで、問題は変わらなくても自分の問題に向き合う姿勢が変わる。色々な意見があって、その中で折り合いをつけてやっていく。民主主義って大事だと思いました。

Aさん
(2021年9月18日)

『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』
著者:和田靜香 取材協力:小川淳也

イラスト:伊野孝行 
装幀:松田行正+杉本聖士
四六判並製/280ページ 
2021年9月5日 第一刷発行
定価:本体1700円+税 
978-4-86528-045-6 C0031

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