荒俣宏さん書評『絵はがきの別府』

 7月15日付朝日新聞に、荒俣宏さんによる『絵はがきの別府』書評が掲載されました。

 明治30年代から昭和初期に黄金時代を迎えた「写真絵はがき」は、写真による画像記録がまだ少なかった時代の風景を、奇跡的に保存した貴重な素材でもある。だが、なにせ土産物や消耗品扱いであったため、これを史料として活用する機運が生まれにくかった。
 本書は、日本一の温泉都市であった別府の威容を、観光地に最もふさわしい絵はがき画像によって再現しようとする試みだ。絵はがきをここまで徹底的に読み込んだコレクターと研究者の熱意に打たれる。

 相場師で宣伝マンでもあった油屋熊八らの活躍、国際規模の博覧会、さらに日本陸海軍の療養施設ができ高級料亭や遊廓の発展に至るといったプロセスを絵はがきで辿れば、各画像に付された丁寧な解説を助けにして、誰でも思いがけない発見ができる。
 奈良の大仏を抜く「世界一の大仏」があったこと、そして怪建築「ひょうたん型の大展望塔」を持つ温泉宿など、興味深い珍景に驚かされる。

 絵はがきで重要なのは写真の撮影時期を特定することだが、その方法も簡潔に伝授され、絵はがき収集の基礎ガイドとして使える。
 各地各都市に一冊は作成してほしい、近代史の楽しい画像研究だ。

 すばらしいご紹介ありがとうございます。
 古城コレクションの素晴らしさ、松田法子さんの絵はがきの読み込みの綿密さ、そして見えてくる別府という町の面白さ。多くの方にそれが伝わればと思います(T)