国際交流基金の情報誌「JAPANESE BOOK NEWS」に『絵はがきの別府』。

国際交流基金が発行している海外向けの情報誌「JAPANESE BOOK NEWS」に、『絵はがきの別府』が取り上げられています。評者は吉見俊哉さん。

本書の監修者、古城俊秀氏は大分県のものだけでも10,000枚を数えるたいへんな規模の写真絵はがきのコレクションを誇る人物である。別府に焦点をあてた本書に収められた600枚を超える絵はがきも、彼のコレクションのほんの一部でしかない。しかしそれだけでも、別府の最盛期の輝きは十分に伝わってくる。

別府は、関西に基盤をもつ商船会社、大阪商船によって温泉地として発展が促された土地である。大阪商船は、瀬戸内海の風光明媚なみちすじを、豪華な定期客船に乗せてひとびとを別府へと運んだのである。本書の絵はがきをみていると、別府はまさに日本で最初のテーマパークであったことがわかる。

浜辺と商店街を写真やイラストで描いた絵はがきをみていると、別府には近代的な洋風の町並が広がっていたことがわかる。浴場は、鄙びた温泉宿にばかりあったのではなく、現代様式の、なにかのパヴィリオンのようなビルディングにもあつらえられていた。実際、別府が主催した「国際温泉博覧会」をきっかけに、遊園地や別荘が建てられていったのである。博覧会は大成功だった。本書には全国からの浴客が、浴槽にすし詰めになって湯につかっている絵はがきも収められている。

浴客たちは、写真絵はがきを買い求め、友人や家族に便りを出した。膨大な量にのぼったであろうこうした絵はがきは、今日の旅行雑誌やテレビ番組に匹敵する、たいへん宣伝効果をもっていた。本書に収められた絵はがきコレクションは、リゾート地としての別府の黄金時代のようすと、当時のひとびとの関心のありかを示してくれている。(翻訳文責:左右社)

もちろん海外にも観光地を写した写真絵はがきはあるわけですが、別府ほど多様に〈絵はがき化〉され尽くした町はあるのでしょうか。より多くの方が興味を持っていただければ、とてもうれしいです。