千葉雅也さんが『ラインズ 線の文化史』を書評!

文化人類学にとどまらない反響をいただいているティム・インゴルドの初めての邦訳、『ラインズ 線の文化史』を、『動きすぎてはいけない』の著者、表象文化論の千葉雅也さんが書評してくださいました。掲載は2014年7月13日の「日本経済新聞」読書面。

近現代の文明は、プロセスを目的に従属させる。成果を出せという命令。成果を、しかも数字で出せという命令だ。数量的な「エビデンス」なくしては何事も筋を通せないという世の中の趨勢は、ますます激化している。とはいえ、もちろん、目的が一足飛びに実現することはありえない。生活の現実とは、昔も今も、プロセスを経ていくその途中である。
(中略)
駅からオフィスへ歩いて行くライン、誰かに向けた発話のライン、挨拶のために挙げられる腕のライン……本書はこのようないろいろなライン「ズ」の歴史を語るものだ。
(中略)
本書は、概して言えば、途中=ラインの連続的な変容への賛歌であり、不連続な点から点への「連結」のシステム=近代性が、生活の豊かな細部を抹消していると考えているようだ。
こうした近代批判はいかにも典型的であるから、評者は半分は同意しつつ、違和感を覚えもする。(中略)評者としては、近現代の雑種化した文明のただなかで、半端に連続し中断される線に、もっと積極的な言葉を与えられないか考えるのである。

ありがとうございました!