「書道界」に『九楊先生の文字学入門』の書評が掲載されました

月刊誌「書道界」2014年8月号に、石川九楊『九楊先生の文字学入門』の書評が掲載されました。評者は雑誌「デザイン」編集長などを歴任した臼田捷治さん。
書と言葉の照応を秩序立てて解き明かす

持ち重りのする刺激的な著作を間断なく世に問うている書家・批評家による本書は「書の中に存在する文法構造を明らかにする」ことに眼目を置いている。(中略)著者の持論である「筆蝕」(筆画の書きぶり)を横軸、通史的な視点を縦軸にして、独特の力を持った、根源に迫る思考が続く。
冒頭の〈表現〉で「書とは言葉の書きぶりの美学である」として座標軸を提示し、第四講の〈主語〉では、「筆を持った人間が対象に働きかける」こと、言い換えると筆蝕することによって「作者(主語、主体)が生まれる」とする。その上で、従来の高名な美学者や書の大家による定説や通説に与せず、果敢に異議を唱えている。その核心は、小説家は文字を書いているのではなく小説を書いているのと同様に、書家も文字ではなく「言葉を書いている」とするところにあるといってよい。「書は人格の表現」説も斥ける。「筆蝕する主体は言葉である」からと、書の言葉の照応を秩序立てて解明していて説得力がある。
最終講〈構文〉で白川静漢字学の限界について触れている。大碩学の研究対象は古代までの原型。それ以降については別の眼差しが必要だとする指摘は傾聴に値しよう。
「入門」を謳っており、平明な語り口。だが、著者の論理展開は批判精神にあふれ、「書字学こそが文字学である」とする結語に目を開かれる。

ありがとうございました。