『日本人論争』の書評が掲載されました(評者:絓秀実さん)

東京新聞(2014年8月24日)読書面に、、文芸評論家・絓秀実さんによる、大西巨人『日本人論争 大西巨人回想』の書評が掲載されました。

(略)
そもそも、本書のタイトル「日本人論争」は大西生前の指定であったというが、「あとがき」で編者でもある著者の長男・大西赤人も記すように、「そこに籠められた巨人の真意は明確ではない」。実際、著者の仕事には常に「明確ではない」ところが付随しているのであって、それが大西の魅力ともなっている。(略)
本書の白眉は、生前には明らかにされることの少なかった戦時下の大西の思考をうかがうに足る幾つかのインタヴューにある。若い日、大西が短歌を書いていたことは知られており、その幾つかは『神聖喜劇』にも引かれていた。本書では戦時下の大西の短歌の多くが発掘され、また、その主要な発表場が前川左美雄の主催する雑誌「日本歌人」であったことも明かされる。前川はプロレタリア歌人として出発したが、後にロマン主義に転じ、戦争翼賛の短歌も多い。発掘された大西の短歌に戦争翼賛はないが、それにしてもなぜ発表場として「日本歌人」が選ばれたのか。そのことをインタヴュアー(大西赤人)は執拗に問い、巨人も誠実に応接していてスリリングだが、これもまた答が出るわけではなく、「明確ではない」。ここにも「日本人論争」という謎が浸透していると言えるだろう。
本書は、大西巨人という作家が残された者に残した、巨大な謎である。

ご紹介ありがとうございました。
前段で絓秀実さんが指摘されているとおり、〈大西巨人は、シンプルに「反戦・反権力」の作家であったのかどうか〉? 小説作品、ならびに本書などのエッセイ・批評を通じて、挑まれるべき〈謎〉ではないかと思います。