山田航さんの『翻訳問答』書評が掲載されました

歌人で「回り出ずる悩み」連載中の山田航さんの、片岡義男+鴻巣友季子『翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり』評が、「週刊金曜日」2014年9月5日号に掲載されています。題して「著者二人による翻訳観のボクシング」。

翻訳とは単に外国語を自国語に直すことではない。両国語のあいだに横たわる文化の違いそのものを天秤にかけ、そのぶれ具合を観察することなのだ。改めてそう感じさせてくれた本書は、実用的・技術的な翻訳理論書としても読めるが、まず何よりも、比較文化論の絶好のテキストである。
(中略)
鴻巣がある種スタンダードな翻訳観を提示しているのに対し、自らも作家である片岡は、たとえ言語が違っても読者の心理状況をどれだけ近いものにできるかを考え抜いている。トルーマン・カポーティ『冷血』に登場する地名Holcombを、正確な現地発音に近いホルカムではなく、「より不吉な印象を与えるから」という理由でハルコームと表記したのはその一例だろう。
二人の翻訳観のボクシングは、そもそもが西洋文化の翻訳から始まった日本の近代文明の成り立ちを思い起こさせる。きっと明治時代にもこの二人のようなエキサイティングな論争があったのだろう。

本書では作家と翻訳家という立場の違いから興味深いポイントが見えてくる部分がたくさんあります。ご紹介ありがとうございました!