『翻訳問答』が「永江堂書店」で紹介されています

「小説トリッパー」2014年秋号の、永江朗さんの連載「永江堂書店」で、片岡義男+鴻巣友季子『翻訳問答』が紹介されています。今回のお題は「翻訳について考える10冊」。

十年あまり前、鴻巣友季子翻訳のE・ブロンテ『嵐が丘』(新潮文庫)を読んだときの興奮が忘れられない。高校生のころ、父の蔵書の某文学全集版で読んだのとは大違いだった。翻訳者が変わると、小説の印象はこんなに変わるのかと驚いた。
『翻訳問答』はその鴻巣と作家、片岡義男の対談である。日系アメリカ人の子として幼いときから日本語と英語のあいだで育った片岡には、『日本語の外へ』(筑摩書房)や『日本語と英語』(NHK出版)などの著作もある。
たんなる対談ではなくて、同じ英文をそれぞれが日本語に翻訳し、それをめぐって話すという趣向になっている。しかもタイトルまでそれぞれがつける。たとえばジェイン・オースティンのPride and Prejudiceを、片岡は「思い上がって決めつけて」と訳し、鴻巣は「結婚狂想曲」としている。一般には『高慢と偏見』として知られる作品だ。
二人の翻訳はずいぶん違う。それぞれが、どうしてこの訳語を選んだのか、こういう日本語にしたのかを問いかつ答える。鴻巣の『嵐が丘』を読んだとき、旧訳との違いの理由について、翻訳した時代、翻訳者が生きる時代の違いによるところが大きいのだろうと漠然と考えていた。でもこの『翻訳問答』を読むと、それ以上に、翻訳者の原作に対する考え方、さらには翻訳という行為に対する考え方の違いによるところも大きいとわかる。

ほかに今回紹介されているのはつぎの9冊。秋の夜長に翻訳の世界をお楽しみください!
・村上春樹・柴田元幸『翻訳夜話』
・尾崎真理子『ひみつの王国 評伝石井桃子』
・松居直『シリーズ・松居直の世界3 翻訳絵本と海外児童文学との出会い』
・中村桃子『翻訳がつくる日本語』
・野崎歓『翻訳教育』
・ベンヤミン『ベンヤミン・コレクション2 エッセイの思想』
・ミカエル・ウスティノフ『翻訳 その歴史・理論・展望』
・船山徹『仏典はどう漢訳されたのか』
・清水康行『そうだったんだ! 日本語』