石川健治先生による、佐藤幸治『立憲主義について』の書評が掲載されました

朝日新聞2015年5月3日読書面「ニュースの本棚」に、憲法記念日にあわせた東京大学教授・石川健治先生による、佐藤幸治著『立憲主義について 成立過程と現代』の書評が掲載されました。
とり上げられているのは、憲法を広い視野で考えるための3冊。

なし崩しに膨張するのは権力の常。これに歯止めをかける人類の智恵が立憲主義である。20世紀に入りソ連がそして独伊が立憲主義を否定し、日本もこれに続いたが、結果は悲惨なものだった。反省を踏まえて、立憲主義は再び地球規模に拡がり、今世紀に至る。
そうした世界史的歩みのなかで、最重要のマイルストーンとなったのが、極東の地で立憲主義を定着させた日本国憲法だ。憲法記念日の今日こそ、改憲論議によって立憲主義そのものを押し流してしまわぬよう、広い視野で憲法を捉え直してみたい。そのためには佐藤幸治『立憲主義について』を。
著者は、かつて圧倒的な支持を受けた基本書『憲法』(青林書院・品切れ)で知られ、橋本行革の省庁改革や、裁判員制度等を実現した司法改革を、政権内部でリードした憲法学の泰斗。官僚支配に抗して個人の人格的自律を尊重する「この国のかたち」を追求した。その一方で、左右のイデオロギー対立のいずれにも与せず、現実主義的な憲法9条解釈を説いた。1996年からの放送大学の講義(『国家と人間』)では、改憲・加憲の可能性を否定せず、むしろ北岡伸一説に近い国際政治感が示された。
そうした著者が、当時の印刷教材を根本的に再編してまで、立憲主義の歴史的理解の必要性を訴えている。本書の端々から伝わる著者の強い危機感は、現政権が立憲主義の軌道から外れつつあることの傍証である。

戦後70年、いまこそ手に取るべき1冊です。