管啓次郎さんによる書評『ああ、ウイグルの大地』

図書新聞2015年7月25日号に、現代ウイグルを代表する詩人アフメットジャン・オスマンの『ああ、ウイグルの大地』の、管啓次郎さんによる書評が掲載されています。

ひとつの大地が別の大地に接続されてどこまで行ってもその連絡には終わりがないように、作者も共訳者も現代の地球大の詩学を、最前線で作り出している人々だといっていいだろう。
作者オスマンの想像力では生と死が循環し、夜と暗闇が特別な自由を保証し、その宇宙論は太陽と月をふたつの焦点として織りなされているようだ。その精神の孤独は容易にはうかがい知れないが、彼が創作において実現しようとする「自由」の射程を想像することはできるだろう。「枯れ葉が落ちる 季節は秋でない/嵐 闇 平坦な道でない/私の真昼に月と星 夜に太陽/祖国と口にすると 血が滲む/これは言葉ではない 私の血」。
政治的主題は何も出てこないが、だからといってこれらの詩が政治的でないということにはならない。そして現代ウイグル語で書かれながら、そこには複数の文学的伝統と同時代世界へのまなざしが、たしかに感じられる。「現代詩」と呼ばれる世界は小さいが、その小さな世界は逆説的にもつねに現実の大きな世界とその歴史、そして世界のすべての言語を包みこんでいる。本書は現代ウイグル語と現代日本語のあいだに新鮮な通路を開いた、記念すべき一冊となった。

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