『カメラの前で演じること』の書評が掲載されました

図書新聞2016年3月26日号に、アメリカ文学・アメリカ文化研究者の冨塚亮平さんによる、濱口竜介・野原位・高橋知由『カメラの前で演じること』の書評が掲載されました。

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さらに興味深いことに、後者の脚本にも、本編には登場しない台詞がいくつか書きこまれている。ある研究会での濱口自身の解説によれば、その中にはあらかじめ、撮影現場では読まれないことを想定した上で書かれたものもあるという。たとえば映画第三部終盤の、「謝る」ことを巡って桜子がためらう場面。本編ではシンプルに謝罪を拒否する桜子の心情の揺れが、脚本にはより詳細に書き込まれている。『ハッピーアワー』が、相田冬二が述べるように「建前を否定しない」映画であるからこそ、物語の末尾でついに建前を否定するに至る彼女の身振りのぎこちなさは、観客の胸を打つ。この決定的変化を示す重要な場面で濱口らがサブテキスト的な台詞を書き加えたのは、間違いなく彼女の演技を励ますためであろう。

あくまで「ハッピーアワー」固有の方法に過ぎない、と濱口竜介監督は述べていますが、サブテキストの執筆などを通じて目指された演技と演出の方法論は、冨塚さんの指摘するように「自らの「恥」を通じて「自己の吟味」を行うように我々を励まし触発」します。この刺激的なテキストをより多くの方に手にしていただければと思います。