『ミュージックスとの付き合い方』の書評が掲載されました

毎日新聞2016年4月24日読書面に、科学史家の村上陽一郎さんによる、徳丸吉彦著『ミュージックスとの付き合い方』の書評が掲載されました。

タイトルを一見、おや、と思う。何故って。「ミュージック」が複数形になっているから。確か、〈music〉って「数えられない」名詞の一つじゃなかったかしら。と思ったら(もう少し勤勉な人なら、普通の英和辞典を引いて確かめるかもしれないが)、その読者は、著者の術中にすでに落ちていることになる。
(中略)
音楽というとき、日本では、西欧のクラシック音楽を、その理念型とし、そこからの距離の遠近で、音楽の下位概念を考えていく、という牢固とした習慣が成り立っている。「軽音楽」、「ポピュラー音楽」なども、そうした習慣に寄り添っているし、「日本の(伝統)音楽」などという場合も、それに近い。
著者が本気で挑戦しているのは、まさしく、そうした習慣の打破である。バッハも、ベートーヴェンも、「一つの音楽」に過ぎない。バッハやベートーヴェンが音楽なら、それと同じ平面の上に、義太夫も、ビルマの民族的な歌も、何もかも、それぞれ、「一つの音楽」として、対等に並置できる。だから、「音楽」は必然的に、「複数」扱いになる。それが、著者が本書で、手を変え品を変えて、読者に訴えようとする論点である。
(中略)
本書は、こうした基本的論点を中心に、これまで著者が国際的な場と、国内的な場の双方で、どのような働きを重ねて来たか、という足跡の自らによる確認の書でもある。歴史的にも、また比較文化的にも、極めて幅広い文献的渉猟と、実地の体験との、豊かな融合、あるいは総合が、それを彩る様々なエピソードとともに、繰り広げられる、大変刺激的な書物と言える。

ご紹介ありがとうございます。