『トランプ現象とアメリカ保守思想』、朝日新聞に書評が掲載されています

「朝日新聞」2016年9月11日付の書評欄に、会田弘継著『トランプ現象とアメリカ保守思想』の書評が掲載されています。評者は朝日新聞論説主幹代理の立野純二さん。
どの国にもその成り立ちや過去に由来する葛藤がある。どれほど時代が変わっても拭えない課題があり、歴史の深層を貫く伏流水のように幾度も表出する。
米国の場合、それは人種問題である。民族や宗教ではなく、自由と平等という理念を土台に出発した移民国家は、その建前と現実の間で揺れ続けてきた。
米社会を席巻するトランプ現象の不気味さは、その宿痾の悩みを呼び覚ましていることにある。
(中略)
政治家なら命取りになるはずの差別発言を、人気取りの大衆扇動に逆用する。トランプ氏は白人労働層の怒りを味方に、政治モラルの再定義を進めている。
「この大統領選を経てなお、アメリカはアメリカたり得ているだろうか」。米国を長年見つめる熟練記者の著者は深く憂えている。
社会の多元化を拒む反動思想は、どう受け継がれてきたのか。それを探るために本書は、1950年代から確立される米国近代保守の思想をたどり、トランプ氏出現の脈絡を考える。
(中略)
南北戦争期の南部に巣くった思想こそが、今の現象の源流ではないかとの仮説を示す。それは「人種秩序」を基盤とする復古的な階級社会を求める政治運動である。
トランプ氏躍進が始まった昨年は、南軍の降伏から150年。米国の論壇では「戦争は終わっていない」との論文が注目され、今も脈々と続く人種間の闘争が盛んに論じられた。
11月の選挙の行方は見通せない。ただ、結果を問わず、トランプ現象の病原がこれからも漂い続けることは間違いない。
トランプ候補をめぐる保守政治家たちの言動、さまざまな論考を追うと、いま、とても大きな動きが起こっていることが見えてきます。本書をアメリカ社会の行方を考える一助として、より多くの方に手に取っていただければと思います。