詩人の添田馨さんによる『「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム』書評が掲載されています

詩誌「交野が原」第83号(2017年9月発行)に、詩人の添田馨さんによる、岡本勝人著『「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム』の書評が掲載されています。

「私は、鮎川のモダニズムの詩が似合うのは、東京駅だと思っている」(「第十章 残されたもの」より)ーー鮎川信夫のモダニズムを読み解くうえで、その来るべき詩人像を著者がどのように構想したのかをこの一行はみごとに語っている。
(略)[鮎川信夫像の捉え方には主としてふたつの傾向があり]そしてもうひとつの傾向としては、鮎川の詩業を戦後に発表された作品を中心に捉える構成から、戦前に書かれたモダニズム詩までをも統合的に射程にいれた新たな構成への全体像のシフトである。本書はまさにこの流れの先端を走るものだ。
「鮎川信夫の抒情は、秩序も必然性もみえない戦後の混沌とした時空に、多様な緊張感をたたえてあらわれた。詩の行と行の間に、確かな都会の心的エネルギーの航行をはじめていた。」(「第二章 接続」)ーーこう述べる著者の観察眼は、鮎川のポエジーの純度に言い及ぼうとする点で、完全に詩人の創作的な視点に立っている。
(略)
あくまで著者は、鮎川信夫が残した詩作品の微細な襞の形姿にこだわってみせる。その志向は戦後詩的な観念のレンズからではなく、モダンなスタイルを構える抒情のレンズから、鮎川のすべての詩作品を捉えなおそうとする著者のモチベーションを貫いてもいる。必然的にそこでは詩人存在としての鮎川ではなく、詩人像としての鮎川(上村隆一)が、もっとも前面に打ち出されてくることになるのだ。

本書の視座を丁寧に論じてくださいました。ありがとうございます。