建築家長谷川逸子さんによる『石川九楊自伝図録 わが書を語る』書評掲載

書家石川九楊氏が初めてその作品と人生の歩みを語った『石川九楊自伝図録 わが書を語る』、朝日新聞読書面(2019年10月19日)に建築家・長谷川逸子さんによる書評が掲載されました。
石川氏は戦後の激しく変化する社会と関わりながら制作と評論を相互にダイナミックに進めてこられた。同世代の1人として共感できるところが多い。
「書的情緒」を排除するために、墨の滲みをなくすグレーに染めた紙に濃墨で書くといった試みには、壁や天井から既存の意味や情緒を剥ぎ取り、抽象的な一枚の面としてなりたたせたいとディテールを考え抜いた日々を思い出した。分野を超えて、どこかで通じ合う表現の模索をしていたのではないか。偶然とはいえ、氏が自らの画期と呼ぶ「エロイ・エロイ・ラマ・サバクタニ」を書いた1972年は、私が初めて小住宅を雑誌で発表した年でもある。
氏は初期、田村隆一ら荒地派詩人はじめ同時代の言葉を書くことをテーマに、書のありようを広げてこられた。(略)私が主催する「NPO建築とアートの道場」で、この春に若い建築家が行ったレクチャーのテーマが「荒地」だった。公共建築が企業の経済活動に絡め取られがちな今、繊細で優しさに溢れた彼らもまた時代に懸命に立ち向かっていて、その姿は新しい建築と社会が現れる予感を私に与えてくれる。そんなことも本書は思い起こさせるのだった。

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