「すばる」清水良典さんの『静かな夜』評

 発売中の「すばる」2012年5月号に、清水良典さんの『静かな夜』書評が掲載されています。

 たとえ虚構であっても、赤の他人の人生を追体験するのが小説というものなのだが、他人の人生を覗き見る快楽とは別に、そこにはいつもある重さが付きまとう。(略)本書には四編収められていて、最後の二編は著者の自伝的な内容で同一人物を扱っているので、つごう三者の人生が封じ込められているのだが、いずれも重く苦しい。

 本書に描かれた四つの〈関わり〉は、いずれも外部との境界を前に立ちすくむ姿を描いている。唯一その境界を突き抜けた「静かな夜」が、最後に行き着いた救いに、私たちもまた救われる。他人の絵空事であるはずの小説が、私たちの内部のひよわな限界を照らしだし、世界の〈顔〉を覗かせるのだ。感動という以上の深い出会いが、本書にはある。

 ご紹介ありがとうございました。