郷原宏さんの書評『春の先の春へ』

 図書新聞2012年7月28日号に詩人で文芸評論家の郷原宏さんによる、『春の先の春へ 震災への鎮魂歌 古川日出男、「春と修羅」を読む』評が掲載されています。

 エロキューション、アクセント、イントネーションから間のとり方に至るまで、すべてが完璧で間然するところがない。少し疲れたような声質もいい。しかもテキストが諧調のある賢治詩だから、まさしくプロの朗読芸が楽しめる。もう少し早くこのCDに出会っていれば、私は朗読嫌いにならずにすんだかもしれない。
 この鎮魂歌は東北の死者たちの霊を鎮めるだけでなく、災厄に疲れた生者の心をも慰めてくれる。私はまた宮澤賢治が読みたくなった。

 「これはおかしな本である」と書き出された本書評では、このCDブックが、『ろうそくの炎がささやく言葉』(勁草書房)の刊行記念イベントの場から生まれたことに触れ、朗読、声について語る管啓次郎さんの本書解説を引いています。
 「声ほどあらわなものはない。声は直接に届く。大切なさまざまなものが奪われ失われたときでさえ、声が発せられ限定された場がむすばれるとき、剥き出しになった心と心もまた、指先をふれあうようにしてつながりを見出すだろう。」(管啓次郎による本書解説「日出男に声を借りる賢治に言葉を借りる日出男、ふたりの心の火、響き」より)