「現代詩手帖」の本年の代表詩選に管啓次郎詩集より作品4篇が選ばれています

『現代詩手帖』2012年12月号「現代詩年鑑2013」に、ことしの代表詩のひとつとして、管啓次郎さんの作品が4篇収録されています。
収められた作品は、『海に降る雨 Agend’Ars3』より、L〜LIIIまでの4篇。

LI

歩くことそれ自体に祈りとしての価値があるのだと
その部族では子供のころから徹底して教えられるのだ
実際かれらはそれでよく歩く
毎日決まったいくつかのポイントを踏みながら
巡回する、かれらの領土なき土地を
草花の名を唱え
樹木に手でふれながら
視界の片隅をそっとかすめる
鳥の飛行や虫の動きにもよく気づく
ポイントごとに祈る対象が決まっているのだ
ここでは地、生命を物質として成立させる根拠
ここでは水、流動と循環により動きを演出する
ここでは火、世界に体温を与えすべてをいきいきと乾かすもの
ここでは風、無にもっともよく似た存在の究極の秘密
こうして土地がかれらの祭壇となった
祈りの一形式としてのかれらの歩行