『春の先の春へ』、姜信子さんが取り上げてくださいました

「婦人之友」2013年1月号のBook Reviewコーナーで「声を聴こう」と題して、作家の姜信子さんが、古川日出男+宮澤賢治『春の先の春へ』を取り上げてくださいました。
本を読むとは、実のところ、その本に宿るひそかな声を聴くことでもある。
『春の先の春へ 震災への鎮魂歌 古川日出男、「春と修羅」を読む』は、そのことを、深く、痛切に、思い起こさせる。
そう、思い出してほしいのだ。2011年3月11日のあの時、東日本、とりわけ東北は、命も世界もまるごと激しく揺さぶられ、地上を洗い流す大洪水に襲われた。巷では、すぐさま、スローガンめいた耳によく馴染むリズミカルで美しい言葉がやたらと鳴り響きだした。(たとえば、「がんばろう日本」とか「絆」とか「日本は強い国」とか)。その言葉の断言する強さにかき消される無数の声があるということ、あるいは、その言葉の無闇に何もかも束ねる力のかげで、こぼれおちる無数の声があるということ。そのことに私たちはすっかり鈍感になっていないか?いま、この時代に、本当に聴くべき声を宿した言葉はどこにある?
(略)
さあ、じっと耳を澄ませて読んでみよう。文字の言葉には収まりきれない声たちの息遣いを感じてみよう。声たちの言葉にならぬ痛みや悲しみに想いを馳せてみよう。文字と文字の間を蠢く声たちに自分の声を重ね合わせてみよう。声たちとともに一心に祈ってみよう。春の先の先へと向かって。つまりは、それこそが、「『春と修羅』をよむ」ことをとおして古川日出男がやってみせたことなのだ。

あわせて、トーベ・ヤンソン『小さなトロールと大きな洪水』、がんも大二『パトさん』が紹介されています。