永江朗さんの書評『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』が掲載されました

産經新聞2013年5月19日の読書面に、永江朗さんによる石橋正孝著『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』の書評が掲載されました。
本は著者が書いたもの、と私たちは思っている。しかし実際には何らかのかたちで編集者が関わっている。ある意味、書物とは著者と編集者による共同制作物といえなくもない。
では、そのような著者と編集者の関わりかたは、いつごろ、どのようにして始まったのか? その答えのひとつが本書である。
(中略)
ヴェルヌの創作方法も現代の作家とよく似ている。まずは草稿をつくり、専門家が筆耕と清書をし、それにエッツェルがコメントを加え、印刷所でゲラをやりとりするなかで作品を完成させていく。作家だって編集者の要求を唯々諾々と受けいれるわけではない。丁々発止のやりとりがある。メールもファクシミリもなかった時代、主な通信手段は郵便だ。
いま日本では出版社への著作隣接権付与や電子出版権の創設などが議論されている。これまで紙の本の出版プロセスでは陰に隠れていた編集者の存在が、デジタル化の時代にあらためて問い直されているのだ。近代出版産業の原点を振り返ることは、書物の未来を考える上でも重要だ。
まさしく、本書によって描き出されるヴェルヌとエッツェルのやりとりは、出版が産業として成立してゆく過程で〈著者〉の周辺に起こった無数のドラマの一幕であり、グーテンベルク以来の、といわれる曲がり角に立っている現在の出版が、いかなる経緯で成立したのかを裏面から語っているともいえます。
ご紹介ありがとうございました!