書評サイトHONZにて『新宿歌舞伎町滅亡記』が紹介されました

書評サイト「HONZ」にて、『新宿歌舞伎町滅亡記』をご紹介頂きました。評者は鰐部祥平さん。以下に一部を抜粋いたします。


夜の帳が下りるころ、この街には欲望が渦巻く。新宿歌舞伎町のコマ劇場。その前にあるコマ広場を定点観測地として著者は取材を始める。取材は1999年からスタートする。1999年といえば、私はまだ不良の世界に片足を突っ込んでいた時期だ。場所は違えども、ここに登場する若者たちが無軌道に漂流する姿は決して他人事で済まされる話ではないのである。
(中略)
行き場のない者たちの一部はそのまま若年層ホームレスへと転落していく。本書の中心は次第にこの若いホームレスたちに移っていく。著者の観察ではホームレスは大まかに3段階に分けることができるという。
① 定職はあるが、住む家がない人
② 無職だが、捨て本拾いなどで日々の生活をしのぐことができる。異臭などはなく一般人でも付き合うことができる人。
③ 職を探す気もなく、もはや異臭も気にしない。一般人がつきあうのは難しい人。

(中略)
本書の著者、梅﨑良は写真家である。歌舞伎町の世相を写真で発表するつもりが、取材対象者に犯罪を行っているものが多いため、顔を発表することができなくなってしまった。そこで、文章で表現することにしたという。ゆえに文章もプロの作家のようにこなれてはいない。またノンフィクション作家のように対象者の人生や思考に深く切り込む記述もない。ただ、若者たちと会話をし、食事を共に食べ、写真をとる。そしてその経験を淡々と綴った作品だ。感動をさそうような記述もない。そこにあるのは、「はみ出し者」達のへの素直な驚きと、ごく普通の大人のリアクションだ。だがそれ故に、行間から微かに聞こえてくるのだ。若者たちの苦痛と滅亡へと続く自虐的な叫び声が。そしてその中に、かつての私自身の姿を見るのだ。

2013年の現在、コマ劇場はもう存在しない。コマ広場も閉鎖されている。しかし、この街に集い、狂乱を演じる「はみだし者」は今も後を絶たない。人の海に漂う孤独な魂は、今日も一時の快楽を求め街を漂流し続けているのであろう。そしてその姿は日本全国の繁華街で見ることのできる世界でもある。関わるのには覚悟がいる。お勧めはできない。だが、横目でその姿を眺めてみる必要はあるかもしれない。同時代を生きる大人として。

大人たちの冷ややかな視線とも、同情の眼差しとも違う、著者の等身大でリアルな視線から浮き上がってくるものとは。そんなことを、鰐部さんご自身の経験から感じ取られています。書評の全文は「HONZ」でお読み頂けます。http://honz.jp/25847