岡田温司さんによる『漂うモダニズム』書評が掲載されました

2013年6月2日読売新聞に、西洋美術史家・岡田温司さんによる、槇文彦『漂うモダニズム』の書評が掲載されました。
京都の平安神宮の赤い大鳥居のすぐそばに、モダンで斬新、しかも繊細な気品をたたえた近代美術館がお目見えしたときの感動は今も忘れられない。見慣れた周りの景色にもよく溶け合っていた。当時イタリア美術を学び始めてまだ間もない学生だった私は何度も足しげく通ったものだ。モダニズム建築の「巨匠」、槇文彦の1986年の作品である。
(中略)
思うに著者の建築には常に、時代の流行から一定の距離をとろうとする強靭な意志が感じられる。それはこの建築家がいつも相反する二極の間で思考してきたからだろう。グローバルな普遍性とローカルな固有性、異郷と故郷、ユートピアとヘテロトピア(混在郷)、進歩と伝統、理性と感性、合理性と超合理性、禁欲と快楽などがそれである。力動感と繊細さとをあわせもつその独特の建築は、それら両極のせめぎあいの中から生み出されてくる。(中略)混迷を極めるモダニズム建築の「大海原」でいかに舵をとるか、本書は新たに二つのコンセプトを提唱する。「共感」と「集い」に根差した空間の創出がそれだ。この「新しいヒューマニズム」が今後さらにどんな形で実現を見るか、興味と期待は尽きない。
まさに、冒頭にふれられた京都国立近代美術館(http://www.momak.go.jp/)ほかのさまざまな作品から、その「強靭な意志」が感じ取れると思います。ご紹介ありがとうございました。