ミセス8月号に『真夜中のセロリの茎』の書評

雑誌ミセス8月号「今月の本」にて、『真夜中のセロリの茎』をご紹介いただきました。

舞台は日本、ほとんが東京、世田谷あたりのお屋敷町に住む人々、女性はおおむね美人、男性は作家のような人物が多い。そして旺盛な食欲の持ち主たちで、よく食べ物を口にする。「かき氷で酔ってみろ」の主人公は、昭和を感じさせるマーケットの片隅で綺麗な若い女の同僚とかき氷を食べる。食べながら「かき氷を食っているとき、ふとその気になってプロポーズをしたら、大根を切るみたいに断られてさ」と若き日を語る。それだけの話なのに妙に色っぽい。中年男が食堂でかき氷を食べていて、侘しくなく、色気が漂うなんて、神業だ。他の作家がやったら失敗するだろう。だって、「真夜中のセロリの茎」ですよ。「塩らっきょうの右隣」ですよ。ここでそれを食べるのか!と感嘆させる、いぶし銀のディティールが、確実に読者を酔わせてくれます。

評者は作家の中島京子さん。ありがとうございました。
確かに、淡々と繰り広げられる登場人物たちの会話から、何とも言えない洒落っ気や色気を感じます。
夏の日差しを浴びているような短篇集です。どうぞお手にとってみて下さい。