日本で最初の外交官、堀口九萬一の評伝、『敗れし國の秋のはて 評伝 堀口九萬一』が進行中です。著者は、元NHK解説主幹で放送大学教授の柏倉康夫先生です。
九萬一は詩人堀口大學の父、くまいちと呼びます。九萬一の父が亡くなった戊辰戦争から、九萬一が外交官として赴任した、清国(中国)、メキシコ、ブラジル、スペイン、ベルギーと舞台は移り続け、その筆致は、近代の世界史を人生とともに駆け抜ける感があります。九萬一は奇しくも、1945年秋に亡くなっています。
矢作俊彦が『悲劇週間』で若き日の堀口大學に乗り移ったかのような小説を書いていましたが、その中心の舞台はメキシコでした。九萬一はメキシコに赴任中、息子をメキシコに呼び寄せ、フランス語を習わせます。そして、メキシコ革命に遭遇します。そうした舞台をはじめ、『敗れし國の秋のはて』は史料にもとづき、世界史のエポックを描きつづけます。
たとえば、日露戦争。アルゼンチンからロシアに先駆けて軍艦二隻を買い付けたのが九萬一です。その二隻が活躍して、日本海海戦で勝利を治めるのです。九萬一は、当時、めずらしかった国際結婚もしています。
歴史読み物として一気に読め、かつ、読了後に静寂が訪れるような内容です。
写真は、『思い出の堀口大學』かまくら春秋社、よりです。左下が九萬一、右上が大學です。