第31回 アンデス妄想日記5 KAMIKAZE TAXI

 原田真人監督が95年に作った「KAMIKAZE TAXI」は、「夢」のような映画だ。
 分節的で、象徴的。脈絡がときに消え、脱線が間延びし、不ぞろい。部分が全体を構成するのをいやがり、反発するように突き出たり、引っ込んだりして、反調和的なのだが、全体としておそろしいほどリアルな手触りが残る。フィルムに焼き付いた、ある種の毒気がじわっと浸透してくる。
 3時間近い上映時間。
 要約すれば、出稼ぎ日系ペルー人のタクシー運転手と、組の親分に刃向かって逃げるチンピラ2人のロードムービーなのだが、時折、日本に来ている出稼ぎペルー人労働者のインタビューがまぎれ込むほか、カルト教団の癒し光景やら温泉での不思議な宴会やらが、本筋を忘れさせるように、長々と展開され、ヤクザと政治家のつながりが、笑っちゃうほど劇画的に描かれる。
 ただ、破綻というか、まとまりのなさが、逆に不思議な魅力を放つ。
 B級アクションの範疇に入るはずだが、戦後50年を決算した数少ない映画だ、との賞賛もあった。
 どちらかというと海外で評価が高まり、「評価」が逆輸入されたような経緯があったと記憶する。
 音楽は、原田作品で「タフ」なども担当していた川崎真弘。
 主メロディーは、ケーナ(縦笛)から始まり、チャランゴー、サンボーニャ、ボンボと入ってくる、南米フォルクローレの定番(ほんとはこういう定番は数少ないことを今回、知った)。カルメンマキ&オズのキーボード奏者だった川崎は、映画やテレビCMなどでも活躍したが、56歳で肝臓癌で死んだ。
 うーーん、書いているうちにまた見たくなった。
 Vシネマでは「復讐の天使」という2巻セットで出ているのだが、原田フリークがいるのか、たいてい15000円くらいの値がついているのだ。と思って、ネットでいま探してみたら、某オークションで3000円で出品されていた。
 そこでさっそく入札。あと2日で新たな入札者がいるかどうか……。
 ああ、いったいリマで何やっているんだ。そうだ、妄想やってるんだ。

三沢順(みさわ・じゅん)