第37回 坊主頭でお詫び 鯊の天ぷら 雀焼き 談志とたけし・太田光 WBC 体罰 いじめ

×月×日 AKB48の峰岸みなみという女性と男性ダンサーの交際が、「週刊文春」に書かれた。髪の毛を坊主にして、お詫びする動画ニュースをNHKも朝日新聞も取り上げている。
 まさに平和そのもの。峰岸なる人は、グループにとどまりたいらしい。そこで、けじめを付け、反省、恭順の意を込めて坊主になったと言われている。古臭い。異常だ。まるで、ヤクザの世界と同じではないか。
 20を超した大人が、好きな男の家に行って泊まっただけで、「迷惑を掛けた」というのは理解に苦しむ。修道院ではあるまいし、不快なニュースだ。

×月×日 用賀と等々力の中間、世田谷区中町4丁目交差点の近くにある天ぷらの「天佑」へ。この季節でも、まだ鯊(はぜ)があるそうだ。残念ながら、本日は品切れ。鱚(きす)と穴子(あなご)がいつも通りに良かった。

×月×日 友人の川口善行さんが、左右社から『NPOの経営は工夫次第—事務局長の満足と心残り』を発刊。40代の後半に、突如一流損保会社を退職して、アメリカへ留学。NPOの活動を始めた時は、驚いた。
 さわやか福祉財団の堀田力氏から、「47歳でNPOに飛び込んだ企業人の、悪戦苦闘の経営物語。NPOについて、こんなに面白く実態を学べる本はほかにない」という推薦文がすべてを語っている。

×月×日 築地市場は相変わらず「門前雀羅(もんぜんじゃくら)の賑い」だが、最近は雀も少なくなった。今や、飲食業界を支えているのは、年金受給者と言われる。彼らは昼間も暇だから、飲み始める時間が早くなった。4時ごろから飲み始め、省エネ問題にも気を配って、さっさと家に帰って、早く寝てしまうのだとか。
 雀と言えば、雀焼きが有名な伏見稲荷の参道の茶店も、雀の入荷が少なく困っているらしい。中国からの輸入に頼っていたのだが、鳥インフルエンザ騒動以来、パタリと入荷がなくなった。20年ほど前までは築地の場外市場でも、よくその姿を見たものだが。

×月×日 『立川談志最後の大独演会』(新潮社)を読む。立川談志にお客がビートたけしと太田光。2010年6月に行われた座談の記録だ。一部は、同年の「新潮45」の8月号、9月号に発表された。
 落語家もお笑い芸人の範疇に入れれば、すさまじい「楽屋話し」だ。常人には、なかなか理解できない特別な世界の住人たちだということがよくわかる。

×月×日 プロ野球のチームが各地でキャンプインした。話題はWBCだが、どうにも盛り上がらない。やはりイチローがいかに偉大な存在だったかを思い知らされる。
 監督やコーチにもファンを引き付ける力はなさそうだ。

×月×日 桜宮高校の体罰による自殺があってから、スポーツ界の体罰が問題になっている。女子柔道の選手15名がJOCに告発した問題は、過去に聞いたことが無い。
 日本のスポーツ界の悪しき体質が露呈した。日本の旧軍隊と伝統格闘技の発展は表裏一体となって、発展してきたのだ。これからも、明るみに出るスポーツが、まだあるに違いない。根性、しごき……。いずれも厭な言葉だ。
 2020年のオリンピックの東京招致に大きな障害となることだろう。

×月×日 いじめの問題も後を絶たない。私立中学の入学試験が始まった。学校見学、学校紹介が昨年の秋から始まっているが、その席で、「いじめは無くす方向に努力はしているが、あるのも事実です」と公言する学校があるそうだ。正直な学校なのだろう。
 昔もいじめはあった。しかし、現在のような陰惨ないじめではなかったような気がする。
 集団学童疎開の体験談(例えば、紀田順一郎さんの『横浜少年物語』)を読むと、旧軍隊の影響を受けているとしか考えられない例がある。
 最近のいじめは、テレビの「お笑い番組」の影響があるように思えてならない。罰ゲームとか、限度を超す運動競技、我慢比べ、大食い競争など人が苦しみ、失敗するのを笑いにする残虐性は、サディズムにつながる。
 あまり最近は見なくなったが、プロ野球の「珍プレー」番組も同根だ。人の失敗を笑うのは、笑いの質として低レベル過ぎる。(13・2・6)
重金敦之(しげかね・あつゆき)

1939年東京生まれ。元朝日新聞社編集委員。「週刊朝日」編集部在籍時に池波正太郎、松本清張、結城昌治、渡辺淳一など多くの作家を担当した。大学教授を経て、文芸ジャーナリスト。食の分野にも造詣が深く、料理に携わる人たちからの信頼も厚い。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、食生活ジャーナリストの会、各会員。『すし屋の常識・非常識』(朝日新書)のほか、『作家の食と酒と』『編集者の食と酒と』『愚者の説法 賢者のぼやき』(いずれも左右社)。最新刊に『食彩の文学事典』(講談社)、『ほろ酔い文学事典』(朝日新書)。