第41回 『ザ・流行作家』、ドーバー海峡産の舌平目、『ヘタウマ文化論』、神亀の「ひこ孫」、新幹線の車内清掃 |
×月×日 40回の原稿で、校條剛氏の著書『ザ・流行作家』の書名を、一部で『ザ・編集者』と誤って記してしまった。作家論と同時に編集者論でもあるとの敬意が頭から去らなかったようだ。校條さんには、ご迷惑をお掛けしました。深くおわび申し上げます。年を重ねると、このような失態が増えていくのが、情けないことに自分でもわかる。大いに自戒しなくては。
それにしても、「週刊朝日」の「週刊図書館」の鎌田慧氏による『ザ・流行作家』の書評はピントがずれていた。やはり中間小説は、エンタメインテントの文化だから、そこを面白がらない人にとっては、何の価値も見いだせないし、理解できないことになる。 どだい『絶望工場』と共通の土俵にはならなかった、ということだろう。評者が、面白く読んでいないことがわかる書評ほど面白くないものは無い。 ×月×日 創立21年を迎えたゴブラン会の賞味会で、飯田橋のホテルエドモントへ。 相変わらずの盛況。中村勝宏会長、江上栄子副会長、名誉顧問の磯村尚徳氏らと久しぶり。 バリ島でお世話になった芸能山城組の大橋力教授も元気な姿を見せた。バリ島に同行した冬木れい、前島慶子、大沢隆・晴美夫妻らと思い出話に興じる。 ホテルエドモントの石田日出男料理長が指揮する料理は、ドーバー海峡産の舌平目の筒切りグルノーブル風、カナダ産ロニョンドヴォーのソティー ディジョンマスタード風味など。パンは、東京ビゴの藤森二郎氏、チーズはフェルミエ社の本間るみ子セレクション。 日本のビュフェ料理の最先端があった。日本料理も加わり、恐らく「世界の最先端」と言っても間違いはなかろう。 ×月×日 さる大手銀行の丸の内支店へ問い合わせたところ、そんなに時間が掛かることでもないはずなのに、担当者が不在だとかでいつまで待っても返事が無い。やむを得ず外出した。 留守番電話に伝言が残されていた。 「こちらのお電話番号は、……」 自分のところの電話番号を知らせるのに、「お電話」は無いだろう。 床屋へ行くと、サービスでマッサージをしてくれる。 「お力加減はいかがでしょうか?」 と、聞いてくる。力を入れているのは、自分なのだから、「お」は要らない。 日本語の丁寧語と謙譲語の難しいところだ。 ×月×日 山藤章二さんから贈られた、『ヘタウマ文化論』(岩波新書)を読了。 今までは、絵画、芸能などあらゆる芸術の分野で、ヘタから上手いを目指す上昇志向のベクトルだけだった。そこに、「面白い」というベクトルが加わった、と著者は主張する。 立川談志、糸井重里、タモリ、山口瞳、東海林さだおなど著者と親交の深い人たちを例にとって、上手くはないが、面白いサブカルチャーの世界を、的確に分析してみせる。 昭和12年生まれの才人の分析だから、多分に「ご隠居さん」風を装っているところがあるが、若い人にも読んでもらいたい。新しい発見があるはずだ。 ×月×日 銀座の「みを木」で、岩田一平、柴野次郎氏らと会食。埼玉県蓮田市(はすだし)の神亀(しんかめ)酒造をはじめ、銘酒の品ぞろえが素晴らしい。 神亀酒造の小川原良征社長が造る酒は、すべて純米で、吟醸であっても「お燗」を勧めている。その主張を実践している店。 「ひこ孫吟醸」をぬる燗で楽しんでから、鳥取の「諏訪泉」を常温で。良い酒を飲むと、話が弾む。 ×月×日 京都奈良方面へ修学旅行に行った埼玉県の毛呂町立川角中学校の生徒たちが、新幹線での帰路、車内で自分たちの座席の周囲のゴミをきれいに片づけて下車した。感動した清掃会社の女性社員が学校に感謝の手紙を送った。1月14日のことだった。 いい話だ。2月14日のFNN系ニュースで放送された。同じニュースが3月2日の埼玉新聞からネット配信された。いつ新聞に掲載されたかは、知らない。 こういう、心温まる素晴らしいニュースは、どしどし掲載すべきだと思う。新聞もテレビも暗いニュースが多すぎる。意識して明るいニュースを載せるよう努力すべきだとも思う。 しかし、実際の掲載日とネット配信の日時が、どういう関係にあるのかはわからないが、少し遅すぎはしないか。別に腐るニュースではないから、良しとしたのだろうけれど、2週間後の「後追い」は辛い。やはり、「後追い」というのだろうか。それもわからないけれども。(13・3・6) |