第62回 高校野球の監督はベンチのどこに居る? 「ヴォーロ・コズイ」、鯒(コ チ)と太刀魚(タチウオ)、フォアグラと53年のヴーブレ・ル・モン・ モワルー、「面(つら)の皮千枚張り」のご両人 |
×月×日 全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)の出場高校が出そろった。神奈川県大会の予選をテレビで観ていて気づいたのだが、記録員がベンチの最前列のホーム側に立ってスコアブックに記入しているチームがあった。
普通、記録員はベンチの奥でペンを握っている。はて面妖(めんよう)な、と不審に思ったら、その影に監督が居て、サインを出していた。監督のサインが相手のベンチに見えないよう、記録員が「目隠し」の役を果たしているのだ。なるほど、考えたものだ。 しかし、ちょっとこすっからいと言うか、せこい(明治時代の芸人が使った言葉)と言うか、いじましい感じがする。あまり、正々堂々という気はしない。 今は、予選から相手校の試合をOBなどが偵察に出向いているし、地方局のテレビ放送もすべて録画して情報分析をしている。 だから、サインが相手側に見破られることもあるのだ。なんか野球がせせこましくなってきた。その一方で、二塁走者がキャッチャーの構えを打者に知らせることは禁止されている。昔は、「二塁走者が左手を上げると、外角球」というように、打者へ捕手のミットの位置を知らせたものだ。捕手もその裏をかいて、意識的に外角寄りへ構えて、内角に投げさせるという「高等戦術」もあった。 送りバントがフライになった時に、わざとワンバウンドで捕って、併殺を狙うプレーは許されている。しょせん、野球は騙し合いのスポーツかもしれない。 ×月×日 文京区白山の本格北イタリア料理の店、西口大輔シェフの「ヴォーロ・コズィ」。相変わらず、精緻な念の入った仕事をする。ラルド(塩漬けの豚の脂。ラード)を焼きたてのフォカッチャに乗せた一品は、ほんの少量だが、北イタリアの風と香りが感じられる。 北イタリアの郷土料理、ポレンタ(トウモロコシの粉から作る)が入ったラビオリも良かった。 ランチだが、小さな皿まで数えたら、30品はあっただろう。メインは和牛のタリアータ。 ×月×日 料理の原稿を雑誌に書いて、テレビにも出ている某氏のFBを見ていたら、どうも鯒(コチ)と太刀魚(タチウオ)を混同している。名古屋の料理屋で鯒の刺身が良かったと書いているのに、写真は太刀魚の瀬越し。 「皮を頭の方から剥いて、銀色に光る」とある。コチが銀色に光るわけがない。この人は、「ブルゴーニュ産のオマール」と書いて、すぐに指摘され、「ブルターニュ」と訂正した。これはご愛嬌としても、鯒と太刀魚の区別がつかないとは、お粗末。 私も、気をつけないといけない。自戒の念をこめて。 ×月×日 グルメ弁護士、グルベンのT先生が8月に還暦を迎えるので、前祝いに羽立昌史シェフの「魚籃」へ。フォアグラ名人が精を込めたフォアグラテリーヌに、ユエのヴーヴレ・ル・モン・モワルーの53年を合わせる。 60年経過しているとは思えないほど、しっかりした味わい。シュナンブランの実力をいかんなく発揮している。 イワガキとアワビのサラダ仕立て。ベビートマトかと思ったら、サクランボだった。コルトンブラン・グランクリュ ドメーヌ・パラン 05年。 スッポンのスープ。イタリアから取り寄せたタマゴ茸と。オーストラリア産の冬トリュフが表面に蓋をするようにたっぷり盛られている。店内にトリュフの香りがただよう。 メインは北海道から送られてきた夏鹿。大きなフレッシュなポルチーニ茸。恐らくポーランド産だろう。世界のポルチーニ茸の8割はポーランド産といわれる。 ×月×日 「辞めろ、辞めろ」の大合唱のなかで、全日本柔道連盟の上村春樹会長と日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー(日本野球機構会長)の加藤良三氏は、頑(かたく)なに辞めようとしない。 単に野次馬が騒いでいるわけではない。当事者の「選手会」や所轄官庁も指摘しているのだ。所轄官庁が、容喙(ようかい)するのは、必ずしも良いことではない。その「差し出口」を利かせないためにも、自浄力を発揮しなくてはいけないのに。 お二方とも、よほどすごい精神力をお持ちなのだろう。普通の神経ではない。自分が正しいと思っても、これだけ世論から叩かれてなお信念を曲げないのは、尋常ではない。少し異常ではないか。 鈍感、鉄面皮(てつめんぴ)、厚顔、を通り越して、無神経なのかもしれない。「面(つら)の皮千枚張り」、「蛙の面に水」、「眼中人無し」という言葉もある。 加藤コミッショナーの場合は、「失策」が公認ボールの件だけではなく、WBC参加問題、原辰徳巨人軍監督の「黒い交際」など、連続エラーが続き、なんの功績もない、という実に困ったお方だ。 コミッショナーの適任後継者が見当たらず、いままで読売巨人軍の意向で選ばれ続けてきたプロ野球界の体質、そのものに問題があるようだ。(13・7・31) |