第77回 4代目三語楼 酒場の流儀 都知事の金銭感覚 稀勢の里への期待 楽天イーグルスは「球臣蔵」 新聞の死亡記事

×月×日 朝日名人会。鈴々舎風車(れいれいしゃふうしゃ)の「もぐら泥」、桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)の「万病円」、五街道雲助(ごかいどうくもすけ)の「鰍沢(かじかざわ)」、三遊亭歌武蔵の「ふぐ鍋」、三遊亭圓楽の「浜野矩随(のりゆき)」。
 鈴々舎風車は、来年3月に真打昇進と同時に4代目、柳家三語楼を襲名する。三語楼は由緒ある名跡で、現6代目柳家小さん(人間国宝だった5代目小さんの長男)が真打に昇進したときに3代目を名乗った。
 白酒は雲助(師匠は先代の金原亭馬生)の弟子だから、「親子会」みたいな雰囲気。

×月×日 雑誌「東京人」14年新年号に依頼された「午後4時から飲める店−−作家たちの酒場の流儀」を書き終えて、送信する。池波正太郎、吉田健一、風間完、常盤新平、江國香織など。
 酒の流儀は、各人各様。100人集まれば、それぞれの「飲み方」がある。だから、面白いのだ。

×月×日 猪瀬東京都知事が徳洲会から5千万円を借りていた。議員会館の徳田議員の部屋で、直接現金で手渡されたという。まことに奇怪千万な話。
 東京オリンピックにも影響が出そうだ。黒幕は、前知事の石原慎太郎だということぐらいは誰でもわかる。

×月×日 納めの大相撲九州場所。空席が目立った。この空席を見ると、アベノミクスなるものが、まやかしに見えてくる。
 稀勢の里が、両横綱を破り、「準優勝に準ずる成績」となった。
 初場所に13勝以上で優勝すれば、横綱に推挙されることになった。緊張しなければ、いいのだが。
 稀勢の里の2敗は、安美錦(前頭筆頭6勝9敗)と豪栄道(関脇8勝7敗)。こういう「取りこぼし」を無くさなくてはいけない。
 それにしても、立ち合いに変化した日馬富士(10日目対碧山)やすでに土俵を割っているのに駄目押しの一突きを入れた白鵬(11日目対栃煌山)は、横綱の品格を問われても致し方ない。
 特に白鵬の「駄目押し」は解説の関ノ戸親方(元岩木山)が、「いかがなものか」と苦言を呈しているのに、船岡とかいうアナウンサーが、「流れ……」と、懸命にフォローしていた。これでは立場が逆だ。いくら「慈善大相撲」で、協力を得るからといっても、ひどすぎる。
 14日目、稀勢の里が白鵬に勝った時に場内から沸き起こった、「バンザイ」の嵐は、どういう意味だったのか。もちろん、日本人横綱を期待する意味ではあるが、両横綱に対する「批判」と受け取るべきだ。

×月×日 仙台で、東北楽天ゴールデン・イーグルスの祝勝パレード。
 優勝を決めた第7戦の名勝負を「球臣蔵」と揶揄したのは、山藤章二だ。「週刊朝日」の名物「ブラックアングル」ひさびさのヒット。
 もちろん、悪役の吉良方は巨人で、名門、金持ち、尊大。一方の楽天は大天災に襲われた復興中の海辺の城下町。同情は全国から寄せられた。「富める名門」と「疲弊した寒村」の対決には、日本人の「判官(ほうがん)びいき」を好む気質にぴったりだった、と説く。
 マークンこと田中奨大の去就は、しばらくは決まらないだろう。アメリカへ渡って活躍してもらいたい期待と、日本で雄姿を見続けたい気持ちが交錯する。悩むところだ。

×月×日 最近、新聞の死亡記事が低調だ。先日の朝日新聞では、社会面に一人も亡くなっていなかった。かろうじて経済面に、一人だけ「元社長」の訃報があった。
 それでいて、二か月もたってから、お悔やみの長い記事が有るのが、不思議でならない。
 高齢化社会になって、世代間の差が著しく離れてしまった。曾祖父の年代に当たるような「著名人」と言われても、若い記者諸君にしてみれば、初めて聞くような名前の人も多いのだろう。
 そうかと思うと、有る作家の一周忌のパーティーのニュースがあり、扇子か何かを形見分けに貰った女性作家のうれしそうな話が載っている。だいたい自分の一周忌の会を生前に用意するような人は、東京生まれにはいない。
 毎日新聞だけが、死亡欄でなんとか特色を出そうとしている姿勢がうかがえる。(13・11・27)

重金敦之(しげかね・あつゆき)

1939年東京生まれ。元朝日新聞社編集委員。「週刊朝日」編集部在籍時に池波正太郎、松本清張、結城昌治、渡辺淳一など多くの作家を担当した。大学教授を経て、文芸ジャーナリスト。食の分野にも造詣が深く、料理に携わる人たちからの信頼も厚い。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、食生活ジャーナリストの会、各会員。『すし屋の常識・非常識』(朝日新書)のほか、『作家の食と酒と』『編集者の食と酒と』『愚者の説法 賢者のぼやき』(いずれも左右社)。最新刊に『食彩の文学事典』(講談社)、『ほろ酔い文学事典』(朝日新書)。