第85回 銀座古書の市、高齢者の運転免許、亀戸天神、三遊亭兼好、稀勢里

食彩の文学事典×月×日 拙著『食彩の文学事典』刊行を記念して、八重洲ブックセンターの8階ギャラリーで「トークショーとサイン会」を開いてくれることになった。2月14日(金)6時半から。定員は50人で、先着順(入場無料)。
 テーマは、「日本文学の中の“和食”~作家は和食をこう書いてきた」。聞き手は、月刊「料理通信」編集長の君島佐和子さん。
 お客さんが来てくれるか、心配だ。

×月×日 銀座の松屋で、「第30回 銀座 古書の市」。古書といっても、古いアルバム、マッチ、ポスター、絵葉書、色紙なども並んでいる。これだけの店を神田神保町で探して入っていったら、大変な時間と根気がいる。
 旧知の日月堂の店主、佐藤真砂さんと立ち話。古書店は、ますます難しい経営を強いられるが、決して滅びることは無い。

×月×日 月刊誌「家庭画報」から、江戸料理の仕事の取材を受ける。パリに「パリ料理」無いのと同じように、江戸にも「江戸料理」は存在しなかった。
 寿司、蕎麦、鰻、天ぷらは、言ってみれば全国各地から出稼ぎに来た「労働者料理」だ。

×月×日 後期高齢者となるので、自動車免許証更新のための検査と講習を、二子多摩川のK教習所で受ける。
 記憶力や時計などの簡単な認知症の検査に「実技」もある。大型二種の免許を持っているのに、3年間運転していない、という人がいた。
 この検査と講習は、道交法で義務付けられているので、希望する人が多い。運転はしなくても、免許証を手放したくないのだ。
 受け入れる教習所が少ないのか、予約が混雑して取りにくい。警察は、出来るだけ免許を返上してもらいたいのだ。それは、そうだろう。高齢者が起こす交通事故は、増える一方だからだ。反射神経や夜間の視力が若者より劣っていくのは、自明の理だ。
 教習所の人の話では、この教習所で受けた最高齢者は98歳で、地方へ行くと100歳を超えても運転している人がザラにいるそうだ。
 まさに「高齢化社会」だ。怖い話でもある。検査・講習料は6000円也。

×月×日 亀戸天神の神事、鷽(うそ)替え。並ぶこと、1時間30分。店で物品を売るわけではないが、もう少しなんとか合理的に改善できるだろうに。数年前までは、こんな混雑は無かった。有難い「鷽」を頂くわけだから、やむを得ないか。

×月×日 冷凍食品のアグリフーズ群馬工場の農薬混入事件はようやく解決したようだ。企業の対応の遅れが問題視されているが、契約社員制度という雇用形態も問題にすべきだろう。決して容疑者に同情しているわけではないけれども。

×月×日 有楽町の「よみうりホール」で、「よってたかって新春らくご14 21世紀スペシャル寄席 ONEDAY」という、なにがなんだかよくわからないタイトルの落語会。
 柳家市馬の「雛鍔(ひなつば)」、三遊亭兼好(けんこう)の「権助芝居」、中入りの後は、春風亭一之輔の「普段の袴」、柳家三三の「橋場の雪」。
 兼好は好楽の二番弟子。魅力となっている天性の明るさは、師匠とあまり結びつかない。入門した時には、すでに妻子がいたので、4回目の面接で、ようやく入門を許されたという。歌舞伎にも詳しい。

×月×日 横綱を期待された稀勢里は、結局終わって見れば、負け越し。カド番に立たされた。また一からやり直しだ。
 千秋楽にNHK実況の解説者、北の富士勝昭氏(元横綱)が、同じ解説者の舞の海(秀平氏)に話しかけたなかに、「コーチ」という言葉があった。角界では、あまり使われていない用語だ。
 稀勢里には、有能なコーチが居ないのではないか。協会がどうしても日本人横綱が欲しいのなら、角界が一致協力して、稀勢里をすべきではないか。もしかしたら、遠藤に期待したほうが早いのかもしれない。そんなことは無いか。
 それにしても、取組みでは勝っていたのに、反則負けで技能賞と勝ち越しを逸した里山は気の毒だった。(14・1・29)

重金敦之(しげかね・あつゆき)

1939年東京生まれ。元朝日新聞社編集委員。「週刊朝日」編集部在籍時に池波正太郎、松本清張、結城昌治、渡辺淳一など多くの作家を担当した。大学教授を経て、文芸ジャーナリスト。食の分野にも造詣が深く、料理に携わる人たちからの信頼も厚い。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、食生活ジャーナリストの会、各会員。『すし屋の常識・非常識』(朝日新書)のほか、『作家の食と酒と』『編集者の食と酒と』『愚者の説法 賢者のぼやき』(いずれも左右社)。最新刊に『食彩の文学事典』(講談社)、『ほろ酔い文学事典』(朝日新書)。