第100回 110運動、大河ドラマ「真田丸」、歌丸休演、 コペンハーゲンの超有名レストランが日本で期間限定営業

×月×日 伊藤忠商事が勧める「110運動」が注目されている。「イチイチマル運動」と呼ぶのだろう。
 運動と言うと、大袈裟だが、「酒席は1次会だけで、夜の10時には終わる」という心掛けだ。その裏には、残業を少なくして朝早くから働こうという、勤務政策がある。
 もともと伊藤忠商事では、「朝勤の勧め」を実施している。朝の8時前に出勤した場合は、割増時間外手当ての他に、パンや果実など3品までの朝食が無料で食べられる。無駄な電話もなく、仕事に集中できるそうだ。
 しかし、勤務が朝方にシフトすれば、夜10時以降が稼ぎ時のカラオケやバー、クラブ、タクシー業界には影響が出るだろう。
 私のように、「ハシゴ酒」を好まない者にとっては、まことに有難い「お勧め」で、大歓迎だ。言ってみれば、個人的「サマータイム」みたいなものだが、生活パターンは人さまざまで、介護などの個人的事情がある人もいるから、なかなか一概には決められない問題だろう。 

×月×日 2016年のNHK大河ドラマは三谷幸喜の脚本で、「真田丸」に決まった。日本人は、戦国時代の武将のドラマがよほどに好きらしい。
 現在の放映中の「黒田官兵衛」に比べれば、真田幸村の方が人口に膾炙(かいしゃ)している。講談から生まれた立川(たつかわ)文庫の「真田十勇士」や「猿飛佐助」など、登場人物にもなじみがある。もっとも、脚本がまだ出来ていない段階だから、彼らが登場するかどうかは分からないけれども。
 真田丸というのは、大坂の陣で真田幸村が、大坂城の東に設けた一種の砦(とりで)だ。もちろん、現在は民家が密集している。その真田丸という名前から、真田一族を一艘の船に見立てるらしい。

×月×日 有楽町マリオンの「朝日ホール」で朝日名人会。トリは桂歌丸で「竹の水仙」の予定だったが、帯状疱疹とかで休演。柳家花緑が、予定していた「ちりとてちん」と、「竹の水仙」の二席務めた。花緑のぼやくこと、ぼやくこと。
 それはそうだろう。中入りを挟んでの二席連続だから、本人の言うように、もう「花緑の独演会」みたいなもの。それにしては、ゲストが豪華すぎるけれども。
 柳亭小痴楽の「磯の鮑」、金原亭馬生の「安兵衛狐」にトリは五街道雲助の「髪結新三」の後編だった。

×月×日 デンマークのコペンハーゲンに「ノーマ」というレストランがある。レストラン界のアカデミー賞といわれる「世界のベストレストラン50」に4回、1位となった。シェフのレネ・レゼピ氏は、世界で最も影響力のあるシェフとして知られている。
 私の周囲でも、わざわざ「ノーマ」で食事をするためにコペンハーゲンまで出かけた友人が3人もいる。
 この「ノーマ」が日本でも営業するという噂が、かなり前から流れていた。最近、ようやく東京で営業する詳細が発表になった。
 期間は、2015年の1月9日から31日まで。場所は、「マンダリン オリエンタル 東京」の37階にあるレストラン「シグネチャー」で、お客より多いといわれる「ノーマ」のスタッフ全員が来日する。
 気になる料金だが、宿泊客優先で朝夕食込みの2人で149,000円から。消費税とサービス料(13%)は別だ。前金制で、キャンセルしたら戻ってこない。
 数席限定で、ランチとディナーが用意されているが、いずれも39,000円(税サ別)。予約は6月23日から、ウエブサイトだけで受け付けるそうだ。
 おそらくアジア、北米など海外からの富裕層を狙っているに違いない。何日でも良いから空いている日を、といって申し込むのだろう。
 シェフのレネ氏は、スペインの「エルブジ」から出たシェフだ。京都「菊乃井」の村田吉弘氏の許を訪ね、日本料理に関心を持つようになったといわれる。日本の食材をどう扱うかは、興味のあるところだが、奇を衒(てら)った料理になる恐れもあるような気もする。
 まあ、実際に食べてみなければ、何も言えないけれども。(14・5・21)

重金敦之(しげかね・あつゆき)

1939年東京生まれ。元朝日新聞社編集委員。「週刊朝日」編集部在籍時に池波正太郎、松本清張、結城昌治、渡辺淳一など多くの作家を担当した。大学教授を経て、文芸ジャーナリスト。食の分野にも造詣が深く、料理に携わる人たちからの信頼も厚い。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、食生活ジャーナリストの会、各会員。『すし屋の常識・非常識』(朝日新書)のほか、『作家の食と酒と』『編集者の食と酒と』『愚者の説法 賢者のぼやき』(いずれも左右社)。最新刊に『食彩の文学事典』(講談社)、『ほろ酔い文学事典』(朝日新書)。