第101回 中央アジア、築地市場の変貌、太宰治展、プロ野球にもアベノミクス、「まげつかみ」、なでしこ東アジアカップ優勝

×月×日 気が付けば、このネッセイもいつの間にか100回を超えていた。
 30代になってから、歳月の流れが急に早くなったが、70を過ぎると、一段と加速したようだ。同年代の友人たちも、みな同じ印象を持っている。

×月×日 平河町の「エノテカ・ドォーロ」で、9月からの海外取材の打ち合わせ。
 中国の新疆ウイグル自治区、ウルムチで起こったテロで31人死亡といったニュースを見るにつけ、一昨年ウルムチからカシュガルへ行けたことが僥倖のように思われる。今回は、さらに西のシルクロードを目指す計画だが、どうなることやら。

×月×日 小学校のクラス会が「銀座アスター 三軒茶屋賓館」で。だんだんメンバーが固定してくると、面白くなくなってくる。かといって、出席したくない人を無理矢理引っ張り出すのも、気が重い。
 欠席定連者には、それぞれ欠席する確たる理由があり、それなりの意地と反骨があるに違いないのだ。

×月×日 2年ぶりに築地市場へ出かけたら、またまた変わっていた。外人観光客の姿がさらに増えた。場内にある売店の店頭には、「中国語OK」の札がぶら下がっている。
 人気のあるすし屋の前には長い行列が続いている。以前から行列していたが、隣の店の妨げになるので、少し離れた場所でプラカードを立てて順序よく並んでいる。その行儀のよさに、カルチャーショックを受ける旅行者も多いだろう。市場労働者のための「食堂」という機能は完全に無くなり、観光客のための店になってしまった。
 Tシャツやワッペンなどのおみやげグッズを売っている「スーベニールショップ」まで出現した。成田から直行してきたのか、地下鉄大江戸線の築地市場駅のトイレ前には、大きなスーツケースを抱えた旅行者がたむろしている。中国人などのアジア系が多い。
 かつての市場では、軽子(かるこ)などの軽運搬労働者の多くが中国からの出稼ぎで、彼らの労働力に頼っていた。その姿がめっきり減って、観光客として見学に来るのだから皮肉なものだ。

×月×日 横浜の神奈川県立文学館で開催されている「太宰治展」を観に行く。太宰治は、生原稿がかなり残っている作家と言われる。確かに、原稿や書簡の類がよく整理されて保管されている。貴重な資料だ。
 港の見える丘公園のローズガーデンのバラが満開。水彩画を描いている人の姿が目につく。ほとんどが、高齢者。

×月×日 安倍晋三首相は、「躁」状態なのか、いろいろと言い出すご仁だ。
 プロ野球の球団数を現在の12チームから16チームに増やす「球団拡張案」を持ちだした。地域の活性化につながるという理由らしい。
 それは4球団増えた方が良いに決まっている。しかし、2、3年前には8球団による1リーグ制という「縮小案」も出たくらいで、事はそう簡単には運ばない。
 そんなことより、「フクシマ」をなんとかするのが、先ではないのか。

×月×日 今、浅蜊(アサリ)が食べ頃だ。近所のスーパーで見たら、熊本産と千葉産が有り、千葉産の方が、ぐっと大きい。もちろん値段も違うが、夕方に買おうと思っていたら、売り切れていた。
 知っている人は知っているのだ。

×月×日 競馬の優駿牝馬(オークス)は圧倒的人気となったハープスター(単勝1.3倍)が2着に敗れた。
 競馬の怖いところでもあるし、楽しいところでもある。

×月×日 大相撲夏場所は、結局白鵬の29回目の優勝となった。今場所は、髷(まげ)を掴む反則が2番もあった。
 わざわざ故意に掴む力士はいないはずだ。朝日新聞の抜井規泰記者が主張しているように、「故意の有無を検討すべき」だろう。
 とはいっても、14日目の日馬富士と稀勢里戦は、どうなるのか。日馬富士は、「抜けなかった」と認めている。掴まれた影響が勝負に現れた、とみるのか難しい。13日目の鶴竜と豪栄道の場合は、掴まれていなくても鶴竜の負けに影響は無かったような気がする。
 ビデオ判定をいち早く取り入れた大相撲だけに、ここは先駆者としての、的確な「軍配のさばき」を見せてもらいたい。

×月×日 日本が、女子サッカーの東アジア杯で優勝した。オーストラリアに対し、身長のハンディをよく克服して1点を取った。3位は中国。開催国のベトナム(6位)は、中国人監督が指揮を執り、レバノンの監督は、日本人の沖山雅彦氏だった。
「なでしこ」の選手の中には、アメリカやヨーロッパで活躍している選手もいるが、日本にも韓国やオーストラリアから選手が来ている。
 野球や相撲は言うにおよばず、スポーツの世界では、国境が意味をなさなくなっている。

×月×日 サッカーに比べて、地味な扱いだったが、男子バトミントン「トマス杯」で、日本がマレーシアを破り、初めての世界一となった。
 テニスのデビスカップに匹敵する権威ある大会だ。

×月×日 「大事な試合」と注目されていた35連勝を逃した後の、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手が、対ホワイトソックス戦で勝利し、アメリカでの7勝目を挙げた。
 たいした人だ。

×月×日 いよいよ今週は、東京優駿(日本ダービー)だ。東京六大学野球の優勝がかかった早慶戦もある。スポーツファンには忙しい週末となる。(14・5・28)

重金敦之(しげかね・あつゆき)

1939年東京生まれ。元朝日新聞社編集委員。「週刊朝日」編集部在籍時に池波正太郎、松本清張、結城昌治、渡辺淳一など多くの作家を担当した。大学教授を経て、文芸ジャーナリスト。食の分野にも造詣が深く、料理に携わる人たちからの信頼も厚い。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、食生活ジャーナリストの会、各会員。『すし屋の常識・非常識』(朝日新書)のほか、『作家の食と酒と』『編集者の食と酒と』『愚者の説法 賢者のぼやき』(いずれも左右社)。最新刊に『食彩の文学事典』(講談社)、『ほろ酔い文学事典』(朝日新書)。