第102回 錦織選手1回戦負け、食生活ジャーナリストの会、日本維新の会の分党、春風亭一之輔、野球の早慶戦、日本ダービー、松山英樹が初優勝

×月×日 注目されたテニスの全仏オープンだったが、錦織選手はあえなく一回戦で敗退した。身体の故障は、スポーツ選手にとって避けられない「爆弾」のようなものだから、一朝一夕に快癒するとも思われない。前途多難だ。
 焦って患部を悪化させては、選手寿命に影響が出る。

×月×日 JFJ(食生活ジャーナリストの会)の勉強会で、若い人向けに「編集者の時代」と題して、話をする。
 好きな言葉、嫌いな言葉、など、言葉への関心と「審美眼」を備えて欲しい。文章上達の路は、「自己顕示欲」と「自己陶酔」、つまり「ナルシシズム」が必要だが、あまり行き過ぎると、「自己を認めない」対象を拒否するようになる。最近の「ヘイトスピーチ」もその傾向の一つ。などなど。
 大なり小なり「組織」に属する人は、一定の「社員教育」を受ける。先輩から教わることもあるが、最初からフリーの立場で働くライターや編集者は、なかなかそういう機会に恵まれない。
 日本ではフリーランスの記者や編集者の地位はどうしても低くみられる風土がある。多くの産業と同じように、出版業も期間労働者や臨時労働者に頼らざるを得ないのが、実情だ。
 出版や新聞、放送など各種メディアの垣根を取り払って、横断的にジャーナリストが集まる組織は少ない。そういう意味でJFJは貴重な存在だ。この種の会は、どこでも会員の高齢化が問題になっている。後進に道を譲らず、育てようともしないで先輩面をしている高齢者が多すぎるからだ。
 佐藤達夫代表幹事の話によると、JFJは若い会員が増えているという。立派なものだ。
 若い人に、いくばくかでもお役に立てたら、とは思いつつも、フットワークが言うことを聞かなくなってきた。

×月×日 日本維新の会の石原慎太郎共同代表と橋下徹共同代表が、とうとう袂(たもと)を分かった。石原は、もともと橋下が唱える「大阪都構想」の「都」が気に入らなかったに違いない。
 とはいっても、「都」に代わる言葉はなかなか見つからない。「藩」ではいかにも古いし、せいぜい「郷(ごう)」か「邦(ほう)」あたりか。「知事」に代えて、「奉行(ぶぎょう)」はどうだろう。これも古すぎるか。

×月×日 有楽町の「よみうりホール」で落語。「らくごDE全国ツアー 春風亭一之輔のドッサリまわるぜ2014」。
 だいたいこの名前のセンスがおかしい。来場者は、高齢者が多い。それが現実なのだ。若者に媚びるような姿勢は、私の好むところではない。
 この会場へ来ると、一之輔は、「客席の形が洋式トイレに似ている」と、いつも言う。言われて、座席表を見ると、本当に良く似ている。その2階の最後列。
 前座は、春風亭正太郎の「引越しの夢」、一之輔が「新聞記事」と「鼠穴(ねずみあな)」の二席。「新聞記事」は、別に「新作」ではない。ゲストの柳家小三治が「転宅」。
 一之輔の歩き方は、いかにも腰が悪いように見える。好漢の自重を願うばかり。

×月×日 今年も折り返し点を過ぎた。ずいぶん先の話しと思っていたサッカーのワールドカップも、開催が近づき、日本代表はアメリカでキャンプを張っている。気温と時差に馴れるためだ。
 月末には、高校野球の予選が沖縄県で始まる。そろそろ、「どうぞ良いお年を」という手垢が付いたジョークを使ってみるか。

×月×日 東京六大学野球リーグ戦は、慶應が6シーズンぶりに34回目の優勝を果たした。優勝が決まった最終戦は、テレビ中継が有ったが、一回戦は衛星放送でも、見ることが出来なかった。寂しい限りだ。スタンドにも空席が見えたから、やむを得ないのか。

×月×日 東京優駿(日本ダービー)は、3番人気のワンアンドオンリーが見事に優勝した。3着に人気薄のマイネルフロスト(12番人気)が入ったため、馬券的には波乱があった。
 武豊騎乗のトーセンスターダム(5番人気)の単勝に一万円を投じて、フェイスブックに公表した友人がいた。残念ながら、「いいね」とはならなかった。
 いい案配に直線に入ったのだが、どういうわけか、内埒(うちらち)に激突して、失速してしまった。

×月×日 ゴルフの松山英樹選手が、プレーオフの1ホール目で決着を付け、アメリカ男子ツアーで初優勝を飾った。日本人では、4人目の快挙だ。なんといっても、若さがあるところが良い。
 プレーオフで、バンカーからの第2打がギャラリーのご婦人の足に当たって、手前にバウンドしたところに松山のつきがあった。
 ご婦人の足には、くっきりとボールの跡が付いていた。さぞ痛かったろう。松山は感謝しなくてはいけない。(14・6・4)

重金敦之(しげかね・あつゆき)

1939年東京生まれ。元朝日新聞社編集委員。「週刊朝日」編集部在籍時に池波正太郎、松本清張、結城昌治、渡辺淳一など多くの作家を担当した。大学教授を経て、文芸ジャーナリスト。食の分野にも造詣が深く、料理に携わる人たちからの信頼も厚い。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、食生活ジャーナリストの会、各会員。『すし屋の常識・非常識』(朝日新書)のほか、『作家の食と酒と』『編集者の食と酒と』『愚者の説法 賢者のぼやき』(いずれも左右社)。最新刊に『食彩の文学事典』(講談社)、『ほろ酔い文学事典』(朝日新書)。