【新連載】第1回 どんな道もいい道なのだ。

昨年秋、妻が農家になるべく第一歩を踏み出しました。唐突な決断だったような気もしますし、なるべくしてこうなった、至って自然な転身のような気もします。
有機農業を目指すこの道はどこへつづいているのやら。夢見ていること、悩んでいること、まわりの人びと、農政のこと。日々の見聞をお伝えします。(T)
「だれも選んではいない。みんな歩き出している。どんな道もいい道なのだ。思うに、処世術とはなににもましてまず、自分とけんかしないことである。自分が下した決心や今自分のやっている仕事において。」アラン「幸福論」
埼玉県は比企郡小川町に越して7ヶ月経った。専業主婦になり、就農準備校に半年通い、普通自動車免許を取り、3月から畑、4月から農業研修をはじめた。すごく大きな変化があったような気もするし、そうでないような気もする。

この話をすると、どうして小川町なの?とチョイチョイ聞かれる。

たしか、育休後、仕事がうまくいかなくなって、じぶんは農業したかったということを思い出したのが昨年夏。そのとき、いくつか読んだ就農本の末尾にあった研修受け入れ先一覧で、夫が通勤可能な場所を探したら小川町の霜里農場があったんだった。
私はもうそれで引越しして研修する気になってたけど、下見はしたいと夫に言われ、家族3人で来たら、野菜直売所で就農3年目の人と話すことができて、まあ小川町でいいじゃないか、となった。だから比較検討はしていない。じぶんのこれまでを振り返っても、大きな選択ってそういうものじゃなかろうか。迷って選びはじめたら決まらない。

調べたら小川町はカリスマ金子さん(*1)を中心に有機農業のメッカであった。東武東上線一本で都内に出られるからか、都会ではないけど田舎でもないほどほどな感じと、都市からの新規就農者も多いらしいのが良いと思った。
でもすぐに研修をはじめたわけじゃない。霜里農場のホームページに「まだ『どうしよう』『自給自足程度に……??』『まわりの反対があり迷っている』など、迷っている方は、研修ではなく「就農準備校」の小川町有機農業コースをお勧めします」とあり、確かに迷ってた私は準備校にした。振り返ればこの半年は保育園待機したり自動車免許取ったりで、研修する余裕なかったから、この判断は正解だった。

就農準備校のことはまた書くことにしよう。4月には子どもを保育園に入れることができ、いまは準備校で伺った4軒の農家のひとつ「風の丘ファーム」で週3日9時~17時の研修をし、週2日は準備校の縁で借りた2アールの畑に行き、残る週末2日は主婦業についているという日々。なかなか良いバランス。ほかの研修生は週6日5時半~19時だし、私ももうちょっとしっかり研修したい気持ちがあるけど、これ以上やったら家がグチャグチャで嫌になってしまうだろう、いまのところ。

このさきの将来を思えば不安だらけでも、自分が作った野菜を食べるなんて1年前には考えもしなかった状況に辿りついているんだから、歩いていれば(いずれはどこかに)着くことに目を向けてしばらく、半年くらいは粛々とやらせてもらおう。

* * *
まあそんなわけで3月から借りている畑に5月25日、大豆とサツマイモの苗を定植。種から発芽させるのに、ハウスがあるわけでもなく長らく主戦場は家のベランダ(夜間は家の中!)。畑は空き地のほうが多かったけど、ようやく畑っぽくなってきた。
2アールちょっとの面積にいま植わっているのは、蕪・ジャガイモ・大根・葱・ナス・ピーマン・トマト・シソ・エゴマ・ニラと大豆・サツマイモの12種。まだあと8種、空芯菜・ツルムラサキ・南瓜・ズッキーニ・オクラ・落花生・ゴマ・バジルが2013春シーズンに控えてる。

でも写真にとれば青葉茂れるというよりは褐色の大地。この年始からずっと雨が少なく、ダム水道がなければ旱魃に違いない。昼、夕と水やりして辛うじて生き延びている様子だ。

そしてまたこの畑がすぐ乾く。土ができるまでの3年が大変、とよく見聞きし、フーンと思ってたけどいま痛感してる。
良い土はフカフカで水はけがいいくせに水もちもいいスポンジみたいな土。わたしの畑は降ればドロドロ照ればカチカチ。雨のあと、研修先の畑がまだ湿っているのに、わたしの畑はもう乾いてる。
作物の出来不出来への影響はまだよくわからないながら、土ができていないと作業のイチイチが面倒なのはわかった。耕すのに硬い、畝に盛る土が足りない、畝がボコボコして発芽が揃わない、支柱が刺さらない、水やりに時間とられる。専業主婦で呑気だからいいけど、背水の陣で就農するひとは大変だ。

それはともかく、今日は子どもと2人で13時から18時まで作業できた。研修を通じて農持久力がついてることと、トンジー(*2)の成長(つい最近まで、30分で畑に飽きて帰るのナンのとダダをこねてた)を実感できて嬉しい。小川町に来るまでは公園しか知らず草花や虫より電車と自動車が好きなトンジーだったのに、日に日に自然に親しみ、花を摘んだり虫を追ったり土を投げたりを楽しむようになってる。

水曜日、どうかどうか雨が降りますように(5月26日記)。

付記:その後、無事に梅雨入りしてしっとりといい雨が降りました。次回更新は7月上旬予定です。

*1:金子美登(かねこ・よしのり) およそ40年前から埼玉県比企郡小川町霜里で有機農業に取り組んできた第一人者。霜里農場はこれまで数多くの研修生を送り出し、全国に有機農業を広げてきた。著書も講演も数多いすごいひと。

*2:2歳半の息子のこのブログでの愛称です。いまの趣味は積木でのトンネルづくり(をしてもらうこと)。